iPod nanoが垂直発進、初登場1位で早くも市場塗り替える勢い
9月8日に発売されたiPod nanoが猛烈な立ち上がりを見せている。発売直後の最初の土日を含む「BCNランキング」9月第2週の最新集計で、初登場で余裕の1位。しかもiPod nanoだけで携帯オーディオ全体の販売台数シェアの3割を超えるほどの人気で、早くも市場地図を一気に塗り替える勢いだ。
9月8日に発売されたiPod nanoが猛烈な立ち上がりを見せている。発売直後の最初の土日を含む「BCNランキング」9月第2週の最新集計で、初登場で余裕の1位。しかもiPod nanoだけで携帯オーディオ全体の販売台数シェアの3割を超えるほどの人気で、早くも市場地図を一気に塗り替える勢いだ。
●店頭で売り切れ相次ぐ4GBモデル
9月8日、発表とともに発売された iPod nano は、その小ささ、薄さ、質感や完成度がおおいに評価され、発売直後から高い人気を呼んでいる。直近9月第2週の「BCNランキング」の携帯オーディオ機種別販売台数シェアを見ると、iPod nano 2GBモデルが首位で16.2%、同じく4GBモデルが2位で15.2%だ。かつての王者 iPod mini 4GBモデルは3位、これにiPod shuffle 512MBが続く。実はnanoの週間販売台数は、これまで最も売れていた mini の4Gと6Gを合わせた数に比べ倍以上。しかも発売日の8日から11日までのわずか4日間に限った数字。立ち上がりでは爆発的に売れていると言ってもよさそうだ。
nanoのモデルは全部で4つ。容量では2GBと4GBの2種類、色がホワイトとブラックの2種類で計4種類のバリエーションだ。ここで、iPod nanoだけのミニランキングを見てみよう。ランキング1位は2GBのホワイト、次が4GBのホワイトだった。合計61.2%で、人気が高いのは無難なホワイトだ。また容量別で見ると、2GBが51.6%と若干多いもののざっくり言って半々。ただし、いずれも発売直後で、まだ流通が落ち着いていない状態での数値。実際に週末、いくつかの販売店を回ってみたところ、2GBモデルは若干在庫している店もあったが、訪れたすべての店で4GBモデルは入荷待ちの状態。「朝一番からある分がすぐになくなる」という店もあった。
Web上のApple Storeでは、4GBモデルは発売当初1-3営業日で出荷と表示していたが、11日午後に3-5営業日と納期が延び、14日現在では5-7営業日とさらに延びている。しばらくは4GBの品薄傾向は続きそうだ。
●短かった2強時代は終わり、再びアップルの一人舞台になるのか?
メーカー別の販売台数シェアを見てみると、このところiTMS効果によって40%台の販売シェアを回復していたアップルだが、nanoの発売で一気に14ポイント以上も上乗せし急伸。60%に迫る勢いだ。一方一時20%を越えていた時期もあったソニーは、ほぼ10%と約半分にまでシェアを落とした。
販売台数ベースでみると、アップルは前週比で48%増加させている一方、ソニーは前週比で19.8%の減。上位5社の中で最も下げ幅が大きかったのが、当然ながら既に撤退を決めているRioで約23.8%減、次がiRiverで20.7%減と大きな影響を受けている。逆に比較的影響が小さかったのがクリエイティブメディアで、4.1%の減にとどまった。
●早くもmini販売終了の影響が出始めたHDDカテゴリー、空席を狙うのは?
それでは、記憶媒体と容量別に詳細を見ていこう。これまで当サイトでは記憶媒体をHDDとシリコンに分け、それぞれ大容量(HDDは10G超、シリコンは512MB超)、小容量(HDDは10GB以下、シリコンは512MB以下)に分けて分析してきた。これはこの分野のパイオニアとも言うべきアップルの商品構成に沿っている。iPod(HDD大容量)、iPod mini(HDD小容量)、iPod shuffle 1GB(シリコン大容量)、iPod shuffle 512MB(シリコン小容量)というラインアップにあわせたものだ。それぞれの製品にライバル各社がどんな製品をぶつけているのか、あるいは空白地帯があるとすればどこかが分かるよう分類したものだった。
iPod nano が発売された今、最も大きな市場のプレーヤーであるアップルがiPod mini のカテゴリーである小容量のHDDを捨て、シリコン大容量に移行した。このため、当然小容量のHDDではアップル不在となる。しかし、その後の動きもフォローするためにも、当面このカテゴリー分けはそのままにしておきたい。
HDD全体ではアップルの強さは相変わらずだ。しかしminiが属していたカテゴリーで早くもシェアが落ち始めており、これがアップル全体のシェアをやや押し下げる効果を生んでいる。個別に見ると、HDD10GB以下の小容量タイプでアップルが4.6%のシェアダウン。mini無き後、この傾向はずっと続くものと思われる。
アップル撤退後にシェアを伸ばしているのは、クリエイティブメディア。2.5%の伸びではまだ物足りないが、これからに期待が持てる。一方で、HDD10GB超の大容量タイプでは、ソニーや東芝が若干シェアを伸ばし、アップルは若干シェアを落としている。しかしいずれも1%に満たない動きであり、このカテゴリでーはアップルの強さにほとんど変化はない。
●nanoが属するカテゴリーではメーカーシェア一気に3倍増
本命のシリコン部門ではどうだろう。8月の第3週までは、ソニーが首位の座にあったこのカテゴリーだが、アップルが首位を奪還したのが8月第4週。以来両社の差は大きくなる一方だった。nano 発売でその差は決定的となり、アップルはこのカテゴリーを一挙2倍に拡大させ、過半数を制覇する52.3%のシェアを握った。
まず、シリコン小容量の512MB以下のカテゴリーでは、512MBの落ち込みが大きい。iTMS日本上陸以後、最も販売台数シェアを伸ばしていたカテゴリーではあったが、iTMS目当ての需要が一段落したことが1つ、さらに、nanoの登場により、少容量タイプの力不足感、割高感が高まったことも、落ち込みの原因だと思われる。
さて、いよいよiPod nanoが属するシリコン大容量のカテゴリーである。まさに垂直の立ち上がりだ。それまで25%前後であった販売シェアが、一気に79%にまでジャンプアップ。シェアはちょうど3倍に膨れ上がったことになる。アップルではこれまで1製品しかラインアップしていなかったカテゴリに主力をドカンと投入してきたことで、派手な立ち上がりになるのは当然といえば当然。しかし、このような極端な動きを見せるグラフはなかなか目にするチャンスはないだろう。
●miniを捨てnanoに切り替えた理由は?
これまで最も売れ筋だったminiを捨て、すべてnanoに移行するというのは、なかなか普通では考えられないことだ。とりあえず売れているminiを温存しておき、売れ筋との食い合いが生じないカテゴリーに新製品を投入するのが普通だろう。現在手にしている売上や利益をむざむざとリスクにさらすことは誰も好まない。
しかし、今回アップルが取った戦略はまったく逆だった。miniが売れている要因は、miniという製品の魅力もさることながら、その容量・価格のバランスがニーズにマッチしてたとも考えられる。そうした売れ筋の「カテゴリー」に最も強力な新商品をぶつけてくるというのは、実は当然の戦略なのかもしれない。しかも値ごろ感を維持しつつシリコンで製品を提供できる最大の容量は今のところこの4GBぐらいが上限。そのためこれまでのminiは「結果的に」存在意義を失い併売するメリットがなくなってしまったということだろう。
この週末販売店を回った感触では、iPod nano の形とその小ささのインパクトがよほど大きかったと見えて、これまで携帯オーディオ売り場であまり見かけることのなかったオジサン層や、nanoを見て初めて携帯オーディオを買うという人も多く見かけた。こうしたユーザー層の裾野を広げることに大きく成功すれば、携帯オーディオ全体のパイを押し広げる効果をも生み出すかもしれない。ここしばらくnanoを中心とする携帯オーディオ全体の販売動向に注目したい。(WebBCNランキング編集長・道越一郎)
*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など18社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで113品目を対象としています。
9月8日に発売されたiPod nanoが猛烈な立ち上がりを見せている。発売直後の最初の土日を含む「BCNランキング」9月第2週の最新集計で、初登場で余裕の1位。しかもiPod nanoだけで携帯オーディオ全体の販売台数シェアの3割を超えるほどの人気で、早くも市場地図を一気に塗り替える勢いだ。
●店頭で売り切れ相次ぐ4GBモデル
9月8日、発表とともに発売された iPod nano は、その小ささ、薄さ、質感や完成度がおおいに評価され、発売直後から高い人気を呼んでいる。直近9月第2週の「BCNランキング」の携帯オーディオ機種別販売台数シェアを見ると、iPod nano 2GBモデルが首位で16.2%、同じく4GBモデルが2位で15.2%だ。かつての王者 iPod mini 4GBモデルは3位、これにiPod shuffle 512MBが続く。実はnanoの週間販売台数は、これまで最も売れていた mini の4Gと6Gを合わせた数に比べ倍以上。しかも発売日の8日から11日までのわずか4日間に限った数字。立ち上がりでは爆発的に売れていると言ってもよさそうだ。
nanoのモデルは全部で4つ。容量では2GBと4GBの2種類、色がホワイトとブラックの2種類で計4種類のバリエーションだ。ここで、iPod nanoだけのミニランキングを見てみよう。ランキング1位は2GBのホワイト、次が4GBのホワイトだった。合計61.2%で、人気が高いのは無難なホワイトだ。また容量別で見ると、2GBが51.6%と若干多いもののざっくり言って半々。ただし、いずれも発売直後で、まだ流通が落ち着いていない状態での数値。実際に週末、いくつかの販売店を回ってみたところ、2GBモデルは若干在庫している店もあったが、訪れたすべての店で4GBモデルは入荷待ちの状態。「朝一番からある分がすぐになくなる」という店もあった。
Web上のApple Storeでは、4GBモデルは発売当初1-3営業日で出荷と表示していたが、11日午後に3-5営業日と納期が延び、14日現在では5-7営業日とさらに延びている。しばらくは4GBの品薄傾向は続きそうだ。
●短かった2強時代は終わり、再びアップルの一人舞台になるのか?
メーカー別の販売台数シェアを見てみると、このところiTMS効果によって40%台の販売シェアを回復していたアップルだが、nanoの発売で一気に14ポイント以上も上乗せし急伸。60%に迫る勢いだ。一方一時20%を越えていた時期もあったソニーは、ほぼ10%と約半分にまでシェアを落とした。
販売台数ベースでみると、アップルは前週比で48%増加させている一方、ソニーは前週比で19.8%の減。上位5社の中で最も下げ幅が大きかったのが、当然ながら既に撤退を決めているRioで約23.8%減、次がiRiverで20.7%減と大きな影響を受けている。逆に比較的影響が小さかったのがクリエイティブメディアで、4.1%の減にとどまった。
●早くもmini販売終了の影響が出始めたHDDカテゴリー、空席を狙うのは?
それでは、記憶媒体と容量別に詳細を見ていこう。これまで当サイトでは記憶媒体をHDDとシリコンに分け、それぞれ大容量(HDDは10G超、シリコンは512MB超)、小容量(HDDは10GB以下、シリコンは512MB以下)に分けて分析してきた。これはこの分野のパイオニアとも言うべきアップルの商品構成に沿っている。iPod(HDD大容量)、iPod mini(HDD小容量)、iPod shuffle 1GB(シリコン大容量)、iPod shuffle 512MB(シリコン小容量)というラインアップにあわせたものだ。それぞれの製品にライバル各社がどんな製品をぶつけているのか、あるいは空白地帯があるとすればどこかが分かるよう分類したものだった。
iPod nano が発売された今、最も大きな市場のプレーヤーであるアップルがiPod mini のカテゴリーである小容量のHDDを捨て、シリコン大容量に移行した。このため、当然小容量のHDDではアップル不在となる。しかし、その後の動きもフォローするためにも、当面このカテゴリー分けはそのままにしておきたい。
HDD全体ではアップルの強さは相変わらずだ。しかしminiが属していたカテゴリーで早くもシェアが落ち始めており、これがアップル全体のシェアをやや押し下げる効果を生んでいる。個別に見ると、HDD10GB以下の小容量タイプでアップルが4.6%のシェアダウン。mini無き後、この傾向はずっと続くものと思われる。
アップル撤退後にシェアを伸ばしているのは、クリエイティブメディア。2.5%の伸びではまだ物足りないが、これからに期待が持てる。一方で、HDD10GB超の大容量タイプでは、ソニーや東芝が若干シェアを伸ばし、アップルは若干シェアを落としている。しかしいずれも1%に満たない動きであり、このカテゴリでーはアップルの強さにほとんど変化はない。
●nanoが属するカテゴリーではメーカーシェア一気に3倍増
本命のシリコン部門ではどうだろう。8月の第3週までは、ソニーが首位の座にあったこのカテゴリーだが、アップルが首位を奪還したのが8月第4週。以来両社の差は大きくなる一方だった。nano 発売でその差は決定的となり、アップルはこのカテゴリーを一挙2倍に拡大させ、過半数を制覇する52.3%のシェアを握った。
まず、シリコン小容量の512MB以下のカテゴリーでは、512MBの落ち込みが大きい。iTMS日本上陸以後、最も販売台数シェアを伸ばしていたカテゴリーではあったが、iTMS目当ての需要が一段落したことが1つ、さらに、nanoの登場により、少容量タイプの力不足感、割高感が高まったことも、落ち込みの原因だと思われる。
さて、いよいよiPod nanoが属するシリコン大容量のカテゴリーである。まさに垂直の立ち上がりだ。それまで25%前後であった販売シェアが、一気に79%にまでジャンプアップ。シェアはちょうど3倍に膨れ上がったことになる。アップルではこれまで1製品しかラインアップしていなかったカテゴリに主力をドカンと投入してきたことで、派手な立ち上がりになるのは当然といえば当然。しかし、このような極端な動きを見せるグラフはなかなか目にするチャンスはないだろう。
●miniを捨てnanoに切り替えた理由は?
これまで最も売れ筋だったminiを捨て、すべてnanoに移行するというのは、なかなか普通では考えられないことだ。とりあえず売れているminiを温存しておき、売れ筋との食い合いが生じないカテゴリーに新製品を投入するのが普通だろう。現在手にしている売上や利益をむざむざとリスクにさらすことは誰も好まない。
しかし、今回アップルが取った戦略はまったく逆だった。miniが売れている要因は、miniという製品の魅力もさることながら、その容量・価格のバランスがニーズにマッチしてたとも考えられる。そうした売れ筋の「カテゴリー」に最も強力な新商品をぶつけてくるというのは、実は当然の戦略なのかもしれない。しかも値ごろ感を維持しつつシリコンで製品を提供できる最大の容量は今のところこの4GBぐらいが上限。そのためこれまでのminiは「結果的に」存在意義を失い併売するメリットがなくなってしまったということだろう。
この週末販売店を回った感触では、iPod nano の形とその小ささのインパクトがよほど大きかったと見えて、これまで携帯オーディオ売り場であまり見かけることのなかったオジサン層や、nanoを見て初めて携帯オーディオを買うという人も多く見かけた。こうしたユーザー層の裾野を広げることに大きく成功すれば、携帯オーディオ全体のパイを押し広げる効果をも生み出すかもしれない。ここしばらくnanoを中心とする携帯オーディオ全体の販売動向に注目したい。(WebBCNランキング編集長・道越一郎)
*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など18社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで113品目を対象としています。