アップル、シリコン携帯オーディオで1位奪還、iTMS日本上陸はどう効いた?
アップルの強さが帰ってきた。最新の「BCNランキング」携帯オーディオ・メーカー別販売台数シェアで、6月に比べ10ポイント上昇させ、アップルはメーカーシェアを久々に40%の大台に乗せた。さらに、このところソニーに奪われていたシリコン携帯オーディオの販売台数シェア1位の座も奪い返した。
アップルの強さが帰ってきた。最新の「BCNランキング」携帯オーディオ・メーカー別販売台数シェアで、6月に比べ10ポイント上昇させ、アップルはメーカーシェアを久々に40%の大台に乗せた。さらに、このところソニーに奪われていたシリコン携帯オーディオの販売台数シェア1位の座も奪い返した。一番の要因は8月4日の iTunes Music Store(iTMS)日本上陸だと思われるが、それが具体的にどのように効いたのか? アップルのシェア奪還の構図を検証した。
●iTMS上陸で販売シェア急上昇の iPod shuffle 512MB
まず、「BCNランキング」による携帯オーディオ全体での機種別販売台数シェアランキングを見てみよう。カラーバリエーションなどを合算した集計値では、トップシェアはやはりiPod miniの4Gタイプ。直近の8月最終週の数値では14.1%と依然として圧倒的な強さだ。以下4位まではすべてアップルが占め、5位にソニーのネットウォークマンが顔を出す。そして、10位でやっと3社目のRio Japanが登場するという状況。しかし、Rioは既に撤退を表明しておりいずれは姿を消す運命。この位置をどの機種が占めることになるのか、気になるところだ。
それぞれの機種で販売シェアの推移を見ると、トップを独走しているiPod miniの4Gタイプは、7月初旬には販売シェアを11%台まで落としたものの、常に2桁のシェアを安定的に維持している。さらに8月に入りiTMS日本上陸の効果でかなりシェアを伸ばした。しかしその効果がもっと顕著なのが、iPod shuffle の512MBタイプだ。それまで8%前後で推移していた販売シェアが、iTMS日本上陸を境に一気に4ポイント以上も急上昇。とりあえず手軽にiTMSを試してみたいと考えた層が、最も価格の安いiPod shuffle 512MBの購入に走ったとみてよさそうだ。
メーカーシェアを見ると、6月初旬には20%越えを果たしアップルに迫る勢いだったソニーの落ち込みが激しい。6月初旬に比べると6ポイント以上もシェアを落としている。逆に盛り返してきたのがアップルだ。常に30%のシェアはキープしつつ、ここに来て再び40%の大台に乗せてきた。ソニーの落ち込みに乗じてシェアを伸ばして来たところに、iTMSの開始が加わり、さらに弾みがついた。
その他のメーカーはそれぞれあまり元気がない。Rioの撤退を尻目に、唯一iRiverが少しずつシェアを伸ばしてきた程度。シェアの落ち込みを見ると、ソニーも「その他大勢」のグループに飲み込まれそうだ。一時はアップル対ソニーの2強構造になっていた携帯オーディオ市場だが、再び一人勝ちのアップル対「その他大勢」の構図に逆戻りしつつある。
●アップル一人旅のHDD、シリコン分野でも アップルがトップシェア奪還
圧倒的強さのiPod miniを擁するHDDタイプでは、アップルの強さはゆるぎない。7月上旬頃、クリエイティブメディアとソニーの攻勢を受け、若干シェアを落としたものの、直近では70%を越え80%に迫る勢いで伸び続けている。
容量別で見ると、iPod mini が該当する10GB以下のカテゴリーでは、クリエイティブメディアの健闘もあって緩やかにシェアを落としたもののすぐに回復。iPodが該当する10GB超のカテゴリーではソニーの落ち込みが激しく、ソニーの失速をそのままiPodが吸収した形になっている。
シリコン分野では、しばらく首位を独走していたソニーが、再びアップルにその座を奪われた。ソニーは7月上旬をピークにじりじりとシェアを落とし始め、iTMS日本上陸によって、シェア逆転が決定的となった。128MB、256MB、512MBといった1万円前後までの製品が多い「シリコン512MB以下」のクラスでその傾向が顕著だ。それまでは、Rio、ソニー、アップルの三つ巴状況となっていたが、いきなり抜け出したのがアップルだった。iTMSのトライアルニーズが、ここまで激しいシェア奪取を可能にしたと考えて間違いないだろう。
一方、1GBクラス以上の製品が該当する「シリコン512MB超」のカテゴリーでは、まだソニーがかろうじて首位を走っている。iPod shuffle 1GB には、iTMSの「神風」は吹かなかったようだ。しかし、ここでもソニーの減速傾向は明らか。このまま推移すると首位からの転落も遠くなさそうだ。一方、注目したいのは、iRiverの健闘。ここに来て徐々にシェアを上げはじめており、Rio亡き後、第三の選択肢としてポジションを確立することができるかどうか、正念場と言えそうだ。
●まもなく明らかになる次の一手
日本時間で9月7日深夜に、アップルは携帯オーディオ関連で何らかの新製品を発表するものと見られている。その内容はまだ分からないが、巷では様々な噂が飛び交っている。メディアなどに送付された発表会への招待状の文面は非常に力のこもったものになっているとのことで、画期的な製品のリリースも期待されている。
一方、ソニーでも翌8日に、新しいネットウォークマンを発表するとしており、こちらもどのカテゴリーの製品を投入してくるかが注目されている。ソニーの今後は、徐々にアップル一人勝ちに戻りつつある市場をこの新製品で一気に引き戻すことができるかどうかにかかっている。
秋葉原のあるショップの店長は「携帯オーディオはこれからが大変。競争はさらに激しくなり、淘汰はもっと進むだろう。アップルやソニーも、しばらくはいいかもしれないが、決して油断はできない。今年、生き残れるかどうかがポイントになる」と語ってくれた。
両社の次の一手が、携帯オーディオ市場の新しい流れを生み出すことができるかどうか、今週の動きには特に注目したい。(WebBCNランキング編集長・道越一郎)
*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など18社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで113品目を対象としています。
アップルの強さが帰ってきた。最新の「BCNランキング」携帯オーディオ・メーカー別販売台数シェアで、6月に比べ10ポイント上昇させ、アップルはメーカーシェアを久々に40%の大台に乗せた。さらに、このところソニーに奪われていたシリコン携帯オーディオの販売台数シェア1位の座も奪い返した。一番の要因は8月4日の iTunes Music Store(iTMS)日本上陸だと思われるが、それが具体的にどのように効いたのか? アップルのシェア奪還の構図を検証した。
●iTMS上陸で販売シェア急上昇の iPod shuffle 512MB
まず、「BCNランキング」による携帯オーディオ全体での機種別販売台数シェアランキングを見てみよう。カラーバリエーションなどを合算した集計値では、トップシェアはやはりiPod miniの4Gタイプ。直近の8月最終週の数値では14.1%と依然として圧倒的な強さだ。以下4位まではすべてアップルが占め、5位にソニーのネットウォークマンが顔を出す。そして、10位でやっと3社目のRio Japanが登場するという状況。しかし、Rioは既に撤退を表明しておりいずれは姿を消す運命。この位置をどの機種が占めることになるのか、気になるところだ。
それぞれの機種で販売シェアの推移を見ると、トップを独走しているiPod miniの4Gタイプは、7月初旬には販売シェアを11%台まで落としたものの、常に2桁のシェアを安定的に維持している。さらに8月に入りiTMS日本上陸の効果でかなりシェアを伸ばした。しかしその効果がもっと顕著なのが、iPod shuffle の512MBタイプだ。それまで8%前後で推移していた販売シェアが、iTMS日本上陸を境に一気に4ポイント以上も急上昇。とりあえず手軽にiTMSを試してみたいと考えた層が、最も価格の安いiPod shuffle 512MBの購入に走ったとみてよさそうだ。
メーカーシェアを見ると、6月初旬には20%越えを果たしアップルに迫る勢いだったソニーの落ち込みが激しい。6月初旬に比べると6ポイント以上もシェアを落としている。逆に盛り返してきたのがアップルだ。常に30%のシェアはキープしつつ、ここに来て再び40%の大台に乗せてきた。ソニーの落ち込みに乗じてシェアを伸ばして来たところに、iTMSの開始が加わり、さらに弾みがついた。
その他のメーカーはそれぞれあまり元気がない。Rioの撤退を尻目に、唯一iRiverが少しずつシェアを伸ばしてきた程度。シェアの落ち込みを見ると、ソニーも「その他大勢」のグループに飲み込まれそうだ。一時はアップル対ソニーの2強構造になっていた携帯オーディオ市場だが、再び一人勝ちのアップル対「その他大勢」の構図に逆戻りしつつある。
●アップル一人旅のHDD、シリコン分野でも アップルがトップシェア奪還
圧倒的強さのiPod miniを擁するHDDタイプでは、アップルの強さはゆるぎない。7月上旬頃、クリエイティブメディアとソニーの攻勢を受け、若干シェアを落としたものの、直近では70%を越え80%に迫る勢いで伸び続けている。
容量別で見ると、iPod mini が該当する10GB以下のカテゴリーでは、クリエイティブメディアの健闘もあって緩やかにシェアを落としたもののすぐに回復。iPodが該当する10GB超のカテゴリーではソニーの落ち込みが激しく、ソニーの失速をそのままiPodが吸収した形になっている。
シリコン分野では、しばらく首位を独走していたソニーが、再びアップルにその座を奪われた。ソニーは7月上旬をピークにじりじりとシェアを落とし始め、iTMS日本上陸によって、シェア逆転が決定的となった。128MB、256MB、512MBといった1万円前後までの製品が多い「シリコン512MB以下」のクラスでその傾向が顕著だ。それまでは、Rio、ソニー、アップルの三つ巴状況となっていたが、いきなり抜け出したのがアップルだった。iTMSのトライアルニーズが、ここまで激しいシェア奪取を可能にしたと考えて間違いないだろう。
一方、1GBクラス以上の製品が該当する「シリコン512MB超」のカテゴリーでは、まだソニーがかろうじて首位を走っている。iPod shuffle 1GB には、iTMSの「神風」は吹かなかったようだ。しかし、ここでもソニーの減速傾向は明らか。このまま推移すると首位からの転落も遠くなさそうだ。一方、注目したいのは、iRiverの健闘。ここに来て徐々にシェアを上げはじめており、Rio亡き後、第三の選択肢としてポジションを確立することができるかどうか、正念場と言えそうだ。
●まもなく明らかになる次の一手
日本時間で9月7日深夜に、アップルは携帯オーディオ関連で何らかの新製品を発表するものと見られている。その内容はまだ分からないが、巷では様々な噂が飛び交っている。メディアなどに送付された発表会への招待状の文面は非常に力のこもったものになっているとのことで、画期的な製品のリリースも期待されている。
一方、ソニーでも翌8日に、新しいネットウォークマンを発表するとしており、こちらもどのカテゴリーの製品を投入してくるかが注目されている。ソニーの今後は、徐々にアップル一人勝ちに戻りつつある市場をこの新製品で一気に引き戻すことができるかどうかにかかっている。
秋葉原のあるショップの店長は「携帯オーディオはこれからが大変。競争はさらに激しくなり、淘汰はもっと進むだろう。アップルやソニーも、しばらくはいいかもしれないが、決して油断はできない。今年、生き残れるかどうかがポイントになる」と語ってくれた。
両社の次の一手が、携帯オーディオ市場の新しい流れを生み出すことができるかどうか、今週の動きには特に注目したい。(WebBCNランキング編集長・道越一郎)
*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など18社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで113品目を対象としています。