メガ速度でウィルコム一人勝ち PROが人気のモバイル接続環境
先ごろ、アステルに続きNTTドコモも撤退を発表したPHS市場。状況はまさにウィルコムの一人勝ちだ。これがモバイル接続関連機器の売り上げにもダイレクトに影響している。ウィルコム一社が気を吐くPHS市場で、関連機器の売り上げから見たモバイル接続サービスの現状を追った。
先ごろ、アステルに続きNTTドコモも撤退を発表したPHS市場。状況はまさにウィルコムの一人勝ちだ。これがモバイル接続関連機器の売り上げにもダイレクトに影響している。ウィルコム一社が気を吐くPHS市場で、関連機器の売り上げから見たモバイル接続サービスの現状を追った(図1)。
●新サービスAIR-EDGE[PRO]対応カードが好調
去る2月1日、DDIポケットから社名変更を果たしたウィルコムは、これを機に次々と新サービスを投入している。まず、PHS最高速度256Kbpsに対応した接続サービス「AIR-EDGE[PRO]」、さらに体感速度が500%向上する「メガプラス」を開始した。これら新サービスに対応する専用カード端末の売り上げが好調だ。
NECインフロンティアの「AX510N」は新サービス「AIR-EDGE[PRO]」に対応する最初の端末。PHSとしては高速の256Kbpsパケット通信に加え「メガプラス」による1Mbpsクラスの体感速度を実現する。発売は2月18日だが、その直後の2月第3週にいきなりトップに踊り出た。その後定番の、SII「AH-S405C」にトップは明渡したものの、モバイル系モデムで15%弱のシェアを維持しながら好調に推移している。
「指名買いが多い。値段が高めなのでビジネスマンやご年配が中心層だが、最近では新しく引っ越してきた学生が、『電話回線を引かずにAIR-EDGEを利用したい』といった声もよく聞いている」(ビックカメラ有楽町店・モデム担当の木村幸世さん)という。ブロードバンドのスピードには及ばないものの、移動できる接続環境でありながら定額メニューがあることから、手軽な常時接続の手段として人気を呼んでいるようだ。
ウィルコム・広報の柿島京子さんは「AIR-EDGE[PRO]」について、「とくにハイエンドユーザーやモバイルユーザーを想定して開始したサービス。これまでいろいろな要望が寄せられていた分、速度向上については反応がいい。2月の社名変更やロゴの一新とともに、新サービスを開始できたことがうまく販売に結びついた」と分析する。
●通信料込みのパッケージも人気
ランキング6位の「b-mobile hours 150時間パッケージ」は、日本通信が3月に発売した通信料金込みの接続カードで、初のトップ10入り。日本通信はこれまで、6か月や1年間と長期間で日別のパッケージを販売していたが、いずれも販売価格が5万円を上回っていた。150時間の売り売り切りタイプにして価格を3万円前後まで引き下げたことで、従来の製品よりも気軽に購入できるようになった。「30代、40代のビジネスマンに人気がある」(木村さん)のも、そのためかもしれない(表1)。
スピードこそ「AIR-EDGE[PRO]」の半分程度だが、購入後、手続なしですぐにインターネットを利用できる手軽さが受けているようだ。この手軽さを同社は「通信電池」と表現している。あたかも乾電池のように、一定時間のインターネットを誰でも手軽に利用できる、というものだ。毎日のメールチェックに15分とすると、600日間利用できる計算で、通信料を無駄に使わないという発想も人気の理由かもしれない。
●スピードを取るか通信料を取るか
現在、ウィルコムのEDGEの競合サービスとして挙げられるのは、NTT DoCoMoのFoma、auのPacket WIN。この中でEDGEともっとも好対照となるサービスがPacket WINだろう。下り2.4Mbpsという他に類を見ないスピードは極めて魅力的だ。しかし、パソコンを接続して利用する際は従量制。高速回線のメリットを生かして大きなデータをやり取りすると、とたんに料金が跳ね上がる。移動の合間に短時間でWebやメールの処理を行うような用途か短時間に大量のデータを受信しなければならないようなビジネス用途に向いていると言える。
一方、EDGEは独自の高速化技術で体感速度もメガクラスまで達成しているとはいえ、スピードではWINにはまったくかなわない。しかし、定額プランがあることはスピードの速さに負けない魅力がある。高速版のAIR-EDGE[PRO]でも、月額12300円。パケット数や接続時間を気にせずいくらでも使える安心感は何物にも代えがたい。料金が安いこともあり、ビジネスユースからホビーユースまで幅広い用途をカバーする。この定額制がユーザーの心をつかみ、現在の市場を獲得したといってもいいだろう。
さらにこの戦略を音声通話にも広げ、ウィルコム電話機同士の音声通話を月額2900円の定額とするサービスを5月に開始する。「法人からの問い合わせも多い」(柿島さん)とのことで、法人ユースの広がりも期待できそうだ。
スピードなのか、料金なのか、安定性なのか……。移動通信環境、特にパソコンのモバイルネット環境では、携帯、PHSという通信形式による垣根はなくなったと言ってもいいだろう。それぞれの企業努力でどれだけ特徴のあるサービスを打ち出していけるかが生き残りの鍵といえそうだ。
先ごろ、アステルに続きNTTドコモも撤退を発表したPHS市場。状況はまさにウィルコムの一人勝ちだ。これがモバイル接続関連機器の売り上げにもダイレクトに影響している。ウィルコム一社が気を吐くPHS市場で、関連機器の売り上げから見たモバイル接続サービスの現状を追った(図1)。
●新サービスAIR-EDGE[PRO]対応カードが好調
去る2月1日、DDIポケットから社名変更を果たしたウィルコムは、これを機に次々と新サービスを投入している。まず、PHS最高速度256Kbpsに対応した接続サービス「AIR-EDGE[PRO]」、さらに体感速度が500%向上する「メガプラス」を開始した。これら新サービスに対応する専用カード端末の売り上げが好調だ。
NECインフロンティアの「AX510N」は新サービス「AIR-EDGE[PRO]」に対応する最初の端末。PHSとしては高速の256Kbpsパケット通信に加え「メガプラス」による1Mbpsクラスの体感速度を実現する。発売は2月18日だが、その直後の2月第3週にいきなりトップに踊り出た。その後定番の、SII「AH-S405C」にトップは明渡したものの、モバイル系モデムで15%弱のシェアを維持しながら好調に推移している。
「指名買いが多い。値段が高めなのでビジネスマンやご年配が中心層だが、最近では新しく引っ越してきた学生が、『電話回線を引かずにAIR-EDGEを利用したい』といった声もよく聞いている」(ビックカメラ有楽町店・モデム担当の木村幸世さん)という。ブロードバンドのスピードには及ばないものの、移動できる接続環境でありながら定額メニューがあることから、手軽な常時接続の手段として人気を呼んでいるようだ。
ウィルコム・広報の柿島京子さんは「AIR-EDGE[PRO]」について、「とくにハイエンドユーザーやモバイルユーザーを想定して開始したサービス。これまでいろいろな要望が寄せられていた分、速度向上については反応がいい。2月の社名変更やロゴの一新とともに、新サービスを開始できたことがうまく販売に結びついた」と分析する。
●通信料込みのパッケージも人気
ランキング6位の「b-mobile hours 150時間パッケージ」は、日本通信が3月に発売した通信料金込みの接続カードで、初のトップ10入り。日本通信はこれまで、6か月や1年間と長期間で日別のパッケージを販売していたが、いずれも販売価格が5万円を上回っていた。150時間の売り売り切りタイプにして価格を3万円前後まで引き下げたことで、従来の製品よりも気軽に購入できるようになった。「30代、40代のビジネスマンに人気がある」(木村さん)のも、そのためかもしれない(表1)。
スピードこそ「AIR-EDGE[PRO]」の半分程度だが、購入後、手続なしですぐにインターネットを利用できる手軽さが受けているようだ。この手軽さを同社は「通信電池」と表現している。あたかも乾電池のように、一定時間のインターネットを誰でも手軽に利用できる、というものだ。毎日のメールチェックに15分とすると、600日間利用できる計算で、通信料を無駄に使わないという発想も人気の理由かもしれない。
●スピードを取るか通信料を取るか
現在、ウィルコムのEDGEの競合サービスとして挙げられるのは、NTT DoCoMoのFoma、auのPacket WIN。この中でEDGEともっとも好対照となるサービスがPacket WINだろう。下り2.4Mbpsという他に類を見ないスピードは極めて魅力的だ。しかし、パソコンを接続して利用する際は従量制。高速回線のメリットを生かして大きなデータをやり取りすると、とたんに料金が跳ね上がる。移動の合間に短時間でWebやメールの処理を行うような用途か短時間に大量のデータを受信しなければならないようなビジネス用途に向いていると言える。
一方、EDGEは独自の高速化技術で体感速度もメガクラスまで達成しているとはいえ、スピードではWINにはまったくかなわない。しかし、定額プランがあることはスピードの速さに負けない魅力がある。高速版のAIR-EDGE[PRO]でも、月額12300円。パケット数や接続時間を気にせずいくらでも使える安心感は何物にも代えがたい。料金が安いこともあり、ビジネスユースからホビーユースまで幅広い用途をカバーする。この定額制がユーザーの心をつかみ、現在の市場を獲得したといってもいいだろう。
さらにこの戦略を音声通話にも広げ、ウィルコム電話機同士の音声通話を月額2900円の定額とするサービスを5月に開始する。「法人からの問い合わせも多い」(柿島さん)とのことで、法人ユースの広がりも期待できそうだ。
スピードなのか、料金なのか、安定性なのか……。移動通信環境、特にパソコンのモバイルネット環境では、携帯、PHSという通信形式による垣根はなくなったと言ってもいいだろう。それぞれの企業努力でどれだけ特徴のあるサービスを打ち出していけるかが生き残りの鍵といえそうだ。