ソニー、MP3で逆襲! 決戦前夜の携帯オーディオ市場
4月6日、ソニーがMP3フォーマットに対応したHDDプレーヤーを投入したことで、携帯オーディオ市場のシェア争奪戦は新たな段階に入った。東芝、松下電器産業といった大手家電メーカーが新製品を投入し市場は活気づいているが、ソニーのインパクトはそれ以上に大きい。携帯オーディオ市場は現在、iPodのアップルコンピュータをはじめ外資系メーカー主導で推移している。「BCNランキング」のデータをみると趨勢は明白(図)。国産メーカーはこの状態から、新製品でどこまで市場を奪還できるのか、その現状と各社の戦略をまとめた。
4月6日、ソニーがMP3フォーマットに対応したHDDプレーヤーを投入したことで、携帯オーディオ市場のシェア争奪戦は新たな段階に入った。東芝、松下電器産業といった大手家電メーカーが新製品を投入し市場は活気づいているが、ソニーのインパクトはそれ以上に大きい。携帯オーディオ市場は現在、iPodのアップルコンピュータをはじめ外資系メーカー主導で推移している。「BCNランキング」のデータをみると趨勢は明白(図)。国産メーカーはこの状態から、新製品でどこまで市場を奪還できるのか、その現状と各社の戦略をまとめた。
●“ソニーなき市場”終焉へ
もともとソニーは携帯オーディオの生みの親。しかも、世界で最初に小型シリコンオーディオプレーヤーを発売したのも、実は彼らだった。1999年発売の初代ネットワークウォークマン「NW-MS7」がそれである。しかし後が続かなかった。ソニーからは新製品が発売されないブランクが続く。その間、海外メーカーの製品がジワジワと市場を奪っていき、最後にiPodの登場が市場のパワーバランスを決定付けた。
ソニーは早すぎたのかもしれない。また、独自の音声ファイル規格ATRAC3にこだわったあまり、デファクト・スタンダードであるMP3への対応が遅れたことも大きかった。しばらくの間、市場には大きな空席が1つ、残されたままだったのだ。
●ウォークマン復活にソニーは本気だ
しかし今回、ソニーがMP3に対応したことで空席は埋まり、やっと役者がそろった。再スタート第一弾は4月6日に発表された新しいネットウォークマン「NW-HD5」。目玉はMP3対応だけではない。20GBのHDDを積んで連続40時間再生とiPodの2倍以上の駆動時間を確保したうえ、簡単に交換できる充電池を採用。さらにHDDの耐衝撃性を高めるGセンサーと衝撃ダンパーを搭載するなど、徹底的に基本機能の充実を図った。
また、正方形の液晶ディスプレイにはバックライトにLEDを採用。表示を90度回転させることで縦横どちらの向きでも使用できるのも特徴だ。カラーバリエーションは、シルバー、ブラック、レッドの3色。やはり白は加えてこなかった。
ソニーの「本気度」がひしひしと伝わる、まさに真っ向勝負を挑むにふさわしい仕様だ。そして、この流れはシリコンプレーヤーにも継承されていくことになるだろう。
●藤井フミヤモデルで遊び心を追求した東芝
東芝は、愛知博にもアーティストとして参加している藤井フミヤ氏を起用し、オリジナルデザインを採用したHDDオーディオプレーヤー「gigabeat F10 fumiya model」を台数限定で発売した。3月8日に開催された記者会見には、藤井フミヤ氏も登場し「(これまでの製品には)デザインに遊び心がなかった」と指摘。
これを受けて、東芝 デジタルメディアネットワーク社の荻尾剛志新規事業推進室長は「gigabeatの音質や機能には自信をもっているが、携帯型プレーヤーとして映像やファッション性の面で遅れているという認識はある」とコメント。こうしたコンセプト面での遅れをカバーするために、藤井フミヤ氏をデザイナーとして起用したという狙いを説明した。
これ以外にもgigabeatシリーズのラインアップを強化し、デジタルカメラで撮影した画像を本体に保存して、2.2型のカラー液晶画面に表示することができる「gigabeat F40」などを揃えている。
●会見には「あゆ」も登場、賑々しく市場に参入した松下電器
松下電器産業は、デジタルオーディオプレーヤーの新製品「D-snap Audio」シリーズ4機種を発表し、4月から順次販売を開始する。
記者会見には、同社のデジタルカメラ製品のコマーシャルに登場している浜崎あゆみさんが登場。デジカメ同様、携帯オーディオの宣伝キャラクターをつとめることとなった。
松下製品の特徴は、なんといっても自ら開発にかかわっているSDカードをメディアとして採用している点だ。発表会では、松下電器産業・パナソニックマーケティング本部本部長である牛丸俊三氏が、「21世紀のオーーディオのメディアの大本命はSDカード」と宣言。持ち出しと保存が容易であり、サイズもコンパクトで、衝撃による音飛びがない点がその理由だ。将来的にはSDカード経由で室内、室外の両方でテレビや音楽を見て、聞いて楽しむといった用途を想定している。
●FM電波でカーステレオから聴けるシャープの新製品
4月15日に発売になるシャープの携帯オーディオ「MP-A100/A200」は、FMトランスミッタを搭載し、車のFMラジオから音楽を聴くことができる。普段は、持ち歩いてヘッドフォンで楽しみながら、車の中ではFM電波を飛ばしてカーステレオの音源として利用することもできるわけだ。
携帯オーディオを車で聴くためのアクセサリーは各社から発売され人気を博している。シャープの新製品は、最初からその機能があるため、改めてアクセサリを購入する必要はない。携帯オーディオの利用状況を考えて登場した製品といえるだろう。
●日本メーカー復活をけん引するのは“ソニー効果”か
「デジタルオーディオ機器の商品開発は、決して難しいわけではない」――日本の大手家電メーカーに取材すると、そんなコメントが返ってくる。技術的に見ると、日本が遅れをとっているわけではない。実際、アップルのiPodに利用されているハードディスクは東芝製。独特の鏡面仕上げに至っては、新潟にある町工場の手作業で作られていることも有名な話だ。
にもかかわらずなぜ、外資系企業に市場を席巻されてしまったのか。それは消費者が把握できていなかったのだ。マーケティングに大きな問題があった、といえそうだ。iPod、iPod Shuffleで続けざまにやられてしまった日本の家電メーカー。ソニー効果が予測される2005年春開戦の新商戦では、大きな動きが出てきそうだ。(フリージャーナリスト・三浦優子)
4月6日、ソニーがMP3フォーマットに対応したHDDプレーヤーを投入したことで、携帯オーディオ市場のシェア争奪戦は新たな段階に入った。東芝、松下電器産業といった大手家電メーカーが新製品を投入し市場は活気づいているが、ソニーのインパクトはそれ以上に大きい。携帯オーディオ市場は現在、iPodのアップルコンピュータをはじめ外資系メーカー主導で推移している。「BCNランキング」のデータをみると趨勢は明白(図)。国産メーカーはこの状態から、新製品でどこまで市場を奪還できるのか、その現状と各社の戦略をまとめた。
●“ソニーなき市場”終焉へ
もともとソニーは携帯オーディオの生みの親。しかも、世界で最初に小型シリコンオーディオプレーヤーを発売したのも、実は彼らだった。1999年発売の初代ネットワークウォークマン「NW-MS7」がそれである。しかし後が続かなかった。ソニーからは新製品が発売されないブランクが続く。その間、海外メーカーの製品がジワジワと市場を奪っていき、最後にiPodの登場が市場のパワーバランスを決定付けた。
ソニーは早すぎたのかもしれない。また、独自の音声ファイル規格ATRAC3にこだわったあまり、デファクト・スタンダードであるMP3への対応が遅れたことも大きかった。しばらくの間、市場には大きな空席が1つ、残されたままだったのだ。
●ウォークマン復活にソニーは本気だ
しかし今回、ソニーがMP3に対応したことで空席は埋まり、やっと役者がそろった。再スタート第一弾は4月6日に発表された新しいネットウォークマン「NW-HD5」。目玉はMP3対応だけではない。20GBのHDDを積んで連続40時間再生とiPodの2倍以上の駆動時間を確保したうえ、簡単に交換できる充電池を採用。さらにHDDの耐衝撃性を高めるGセンサーと衝撃ダンパーを搭載するなど、徹底的に基本機能の充実を図った。
また、正方形の液晶ディスプレイにはバックライトにLEDを採用。表示を90度回転させることで縦横どちらの向きでも使用できるのも特徴だ。カラーバリエーションは、シルバー、ブラック、レッドの3色。やはり白は加えてこなかった。
ソニーの「本気度」がひしひしと伝わる、まさに真っ向勝負を挑むにふさわしい仕様だ。そして、この流れはシリコンプレーヤーにも継承されていくことになるだろう。
●藤井フミヤモデルで遊び心を追求した東芝
東芝は、愛知博にもアーティストとして参加している藤井フミヤ氏を起用し、オリジナルデザインを採用したHDDオーディオプレーヤー「gigabeat F10 fumiya model」を台数限定で発売した。3月8日に開催された記者会見には、藤井フミヤ氏も登場し「(これまでの製品には)デザインに遊び心がなかった」と指摘。
これを受けて、東芝 デジタルメディアネットワーク社の荻尾剛志新規事業推進室長は「gigabeatの音質や機能には自信をもっているが、携帯型プレーヤーとして映像やファッション性の面で遅れているという認識はある」とコメント。こうしたコンセプト面での遅れをカバーするために、藤井フミヤ氏をデザイナーとして起用したという狙いを説明した。
これ以外にもgigabeatシリーズのラインアップを強化し、デジタルカメラで撮影した画像を本体に保存して、2.2型のカラー液晶画面に表示することができる「gigabeat F40」などを揃えている。
●会見には「あゆ」も登場、賑々しく市場に参入した松下電器
松下電器産業は、デジタルオーディオプレーヤーの新製品「D-snap Audio」シリーズ4機種を発表し、4月から順次販売を開始する。
記者会見には、同社のデジタルカメラ製品のコマーシャルに登場している浜崎あゆみさんが登場。デジカメ同様、携帯オーディオの宣伝キャラクターをつとめることとなった。
松下製品の特徴は、なんといっても自ら開発にかかわっているSDカードをメディアとして採用している点だ。発表会では、松下電器産業・パナソニックマーケティング本部本部長である牛丸俊三氏が、「21世紀のオーーディオのメディアの大本命はSDカード」と宣言。持ち出しと保存が容易であり、サイズもコンパクトで、衝撃による音飛びがない点がその理由だ。将来的にはSDカード経由で室内、室外の両方でテレビや音楽を見て、聞いて楽しむといった用途を想定している。
●FM電波でカーステレオから聴けるシャープの新製品
4月15日に発売になるシャープの携帯オーディオ「MP-A100/A200」は、FMトランスミッタを搭載し、車のFMラジオから音楽を聴くことができる。普段は、持ち歩いてヘッドフォンで楽しみながら、車の中ではFM電波を飛ばしてカーステレオの音源として利用することもできるわけだ。
携帯オーディオを車で聴くためのアクセサリーは各社から発売され人気を博している。シャープの新製品は、最初からその機能があるため、改めてアクセサリを購入する必要はない。携帯オーディオの利用状況を考えて登場した製品といえるだろう。
●日本メーカー復活をけん引するのは“ソニー効果”か
「デジタルオーディオ機器の商品開発は、決して難しいわけではない」――日本の大手家電メーカーに取材すると、そんなコメントが返ってくる。技術的に見ると、日本が遅れをとっているわけではない。実際、アップルのiPodに利用されているハードディスクは東芝製。独特の鏡面仕上げに至っては、新潟にある町工場の手作業で作られていることも有名な話だ。
にもかかわらずなぜ、外資系企業に市場を席巻されてしまったのか。それは消費者が把握できていなかったのだ。マーケティングに大きな問題があった、といえそうだ。iPod、iPod Shuffleで続けざまにやられてしまった日本の家電メーカー。ソニー効果が予測される2005年春開戦の新商戦では、大きな動きが出てきそうだ。(フリージャーナリスト・三浦優子)