JCSSA新春セミナーで大手メーカー7社が戦略披露 日本HPが国内デジタル市場参入へ

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2005/01/25 10:18



 日本コンピュータシステム販売店協会(JCSSA、会長=梅崎哲雄・丸紅インフォテック社長)が1月24日に都内で開いた「新春セミナー」で、ソニーや東芝など大手ハードウェアベンダー7社の幹部が、「2005年我が社の製品・販売施策」をテーマに、パソコンを中心とした今年の戦略を語った。

 パソコンとデジタル家電の境界がなくなりつつあるコンシューマ市場では、今年も高画質・高機能なAV(音響・映像)パソコンのラインアップが強化されそうだ。また、日本HPが国内で「デジタルエンターテインメント市場」に本格参入したり、東芝がノートPCで初めて「HD DVD」搭載機を今年中に出すことを明らかにするなど、新市場の開拓に向けた戦略も加速しそうだ。「iPod」で復活したアップルコンピュータは、強みの映像・画像関連のソリューションなどで、パートナーを通じてビジネス市場の販売を拡大する考えを示した。

 先陣を切ったソニーの木村敬治・執行役専務は、「パソコンとデジタル家電の境界がなくなり、新しいライフスタイルを創造する新たなチャレンジをしている」と、新市場開拓に向けた戦略を示した。ソニーは、(1)高次元AVソリューション、(2)ものづくり復権、(3)新しいインターフェイス――で新たなチャレンジを行い、ハード製品の魅力を高めるという。

 昨年は、ものづくり復権に関して、カーボン素材を採用した強度の高い薄型軽量ボディのノートPC「VAIO 505 EXTREME」(03年発売)の10層超高密度実装技術を「VAIO Type T」で量産化したほか、Felicaのリーダーライターを搭載した。「ワイヤレス大国の日本で、新たなニーズを喚起する」(木村執行役専務)ため、今後も新たなインターフェイスを創出する方針だ。

 ノートPCなどの差異化・差別化を進める東芝は、業界に先駆け「HD DVD」を搭載したAVノートPC「Qosmio」を今年中に発売する。東芝の能仲久嗣・執行役常務PC&ネットワーク社副社長は、「驚きと感動、安心と安全、快適を実現した差異化ノートPCを今後も提供する。デジタルコンテンツが飛躍的に進展し、ノートPCを使うライフスタイルが単機能から複合化へと変化している。高音質・高画質はもとより、常時携帯するためには盗難・盗聴、落下などの危険性に関する機能も強化する必要がある」と語った。具体例として、1月19日発売の新しい「dynabook ss」に採用した落下衝撃を緩和する「衝撃緩和トリップ構造」が差異化の1つのポイントであると紹介した。

 昨年末に中国の大手パソコンメーカー「Lenovo(レノボ)」にパソコン事業を売却して話題となった日本IBMの向井宏之・理事PC&プリンティングシステム事業部長は、「新会社は、PCに特化したグローバル企業である。中国最大のPCメーカーと一緒になったスケールメリットを生かし、PCの低価格化に挑戦する。PCのバリュー(価値)は、品質を価格で割ったもので決まる。今年は『台風の目』になる」と意気込む。心配された国内の営業・サポート体制については、「(日本IBMと)すべて変化はない」(向井部長)と、現体制の継続性を強調した。

 NECの片山徹・執行役員常務は、「パソコン事業では、CS(顧客満足度)、スピード、シェアのすべてでナンバーワンを獲得する。使用済みのPC再生サービスなども開始し、今後もメーカーならではの付加価値を追求する」と話す。また、コンシューマ市場では、「今年のキーワードは高画質、使いやすさ、パソコンならではのAV機能だ」(片山常務)とし、多機能・長時間録画など、PCならではのファンクションを強化する。ビジネス市場では、ITとネットワークに強い両パートナーをもつ利点を生かし、IPネットワーク統合ソリューション「UNIVERGE」をさらに売り込む考えを示した。

 デジタル市場が堅調に推移するなか、昨年、パソコンとサーバーで販売台数が前年比33%も成長した日本HPの馬場真・取締役副社長は、「宿敵デルを抜き、IAサーバーの販売台数が国内2位になった。デルに負けない低価格を1年間継続したほか、パートナーダイレクトの販売も貢献して需要を喚起できた。今年は、情報漏えい防止などセキュリティを強化できるブレードPCを拡充する」と語った。また、1月に米国の国際イベントでカーリー・フィオリーナ会長兼CEOが公表した「デジタルエンターテインメント」製品については、今春にも製品群の概要を説明すると示唆した。

 富士通もソニーや東芝などと同様にコンシューマ市場でパソコンとデジタル家電の融合を提案していく方針だ。富士通の伊藤公久・経営執行役パーソナルビジネス本部長は、「パソコン内のコンテンツを居間のテレビで視聴したり、外出先でパソコンからテレビが見られたり、使い勝手の細部にこだわていく」と、PC製品強化のポイントを説明した。一方、ビジネス市場では、セキュリティへの関心が高まっているため、指紋認証やICタグなどを利用したソリューションが拡大すると予測している。

 最後に登壇したアップルコンピュータの山元賢治・代表取締役は、「企業向けに関しては、基本的に直販は撤廃した」と、パートナーとの協業強化に向けた新組織体制に移行したと話す。今年は、WordとPowerPointの両ソフトを合わせもつ「iWork」を出荷してビジネスユーザーを獲得するほか、Windowsとの親和性を今まで以上に強化するなどで、ビジネス市場を開拓するという。