崩れ始めたプラズマ神話?販売データが示す薄型テレビの地殻変動

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2004/12/21 03:08

 年末商戦、大画面薄型テレビの話題は、プラズマテレビ分野で瞬く間にトップシェアを握ったパナソニック「VIERA」シリーズの躍進と、液晶パネルの大型化で急速に低価格化が進む液晶テレビの普及だ。昨年までは、30型以上の大画面はプラズマ、30型以下は液晶という棲み分けができていた。しかし、最近この構図が微妙に揺らぎ始めている。

 年末商戦、大画面薄型テレビの話題は、プラズマテレビ分野で瞬く間にトップシェアを握ったパナソニック「VIERA」シリーズの躍進と、液晶パネルの大型化で急速に低価格化が進む液晶テレビの普及だ。

 昨年までは、30型以上の大画面はプラズマ、30型以下は液晶という棲み分けができていた。しかし、最近この構図が微妙に揺らぎ始めている。プラズマの牙城である大画面クラスに、液晶がじわじわと迫りくる足音が聞こえ始めてきたからだ。

 まずはプラズマテレビのVIERAシリーズの躍進についてみてみよう。

 ほぼ1年くらい前までは、NECの生産設備を買収したパイオニアと、Woooシリーズを擁する日立が、プラズマテレビの2強として君臨していた。しかしここに来て、パナソニックやソニーなどの躍進が著しい。

 全国の大手家電量販店1491店舗のPOSデータを集計した「BCNランキング」によると、売り上げランキングの1位と2位をパナソニックのVIERAが獲得(表1)


 さらにメーカー別シェアでも36.5%を獲得して、日立、ソニー、パイオニアを大きく引き離す勢いだ(図1)


 VIERAシリーズの勝因は、大きく分けて二つ。まず一つ目は、オリンピックシーズン直前にフルラインアップで新製品を投入できたこと。この点、日立は、自社の製品更新スケジュールにこだわったせいか、大画面フラットテレビの需要を喚起するこの一大イベントに新製品を用意できなかった。「せっかく買うなら新しいものが欲しい!」というユーザー心理を捉えた戦略だ。

 もう一つの勝因は、DIGAという強力なDVDレコーダーのラインナップを抱えていること。双方ともにまだ機能性の認知度が低い製品だけに、「TVとDVDレコーダーが同じメーカーなら大丈夫」という安心感は大きい。さらに、DIGAとVIERAを組み合わせれば、各種デジタル放送の予約録画を連携して簡単に行える、という実質的なメリットも存在したわけで(そのメリットを実際に体感できる大イベントも背中を押しただろう)、店頭の販売員としても勧めやすかったことが予想される。

 一方、液晶パネルを採用した大画面テレビの普及は、ひとえに店頭価格の低下が原因といえる。今年のアテネ・オリンピックに向かって、26?32インチクラスの価格が、加速度的に低下していったことが消費者に強い印象的を残した。現在、32インチクラスなら30?35万円が相場であり、まさしく1インチ1万円の時代が到来している。

 この値頃感の向上は、ランキングにダイレクトに反映されている。「BCNランキング」で液晶の機種別ベスト20(表2)をみると、売り上げトップ10のうち、実に4機種が「30万円台前半で、30インチオーバーの大型液晶テレビ」となっている。42?55インチクラスのプラズマテレビを設置するスペースはないものの、それでもできる限り大きな画面でコンテンツを楽しみたいと考えるミドルユーザーが飛びついた結果だろう。


 売れ筋は20インチ以下のコンパクトタイプ、という潮流自体は大きく変わってはいない。しかし、2004年10月に開かれた「CEATEC JAPAN」でシャープは、次世代液晶ともいえる65インチフルHDパネルを採用したハイエンドモデルを参考出品した。さらに言うなら、デジタル放送の真のクオリティを引き出せる「フルHDパネル」を採用した製品は、現状では液晶テレビ陣営にしか存在しない。


 プラズマが圧倒的に有利といわれた大画面の領域にまで、液晶の技術革新が迫りつつあるわけだ。現在、プラズマで第3位のシェアをもつソニーが、あえてプラズマ撤退、液晶への集中を打ちだした背景には、こうした事情がある。「大画面を楽しみたければプラズマテレビ」という原則がどこまで通用するのか。いずれにしても、メーカー間の競合に加えて、プラズマ対液晶のせめぎ合いが、薄型テレビの価格をさらに引き下げる原動力になることは間違いない。