パナソニックホールディングス(パナソニックHD)は2月5日、楠見雄規 代表取締役 社長執行役員 グループCEOによる「グループ経営改革」をオンライン会見で発表した。テレビ事業を、成長を見通せない課題事業の一つに挙げて、抜本的な収益構造の変革に向けて、あらゆる可能性を視野に検討する。同時に「売却・撤退も含めて決定している事実はない」とも発表しており、改革の具体的な内容はこれから議論するようだ。あわせてパナソニックHDの傘下のパナソニック株式会社を発展的に解消し、分社を事業会社化して自主責任経営を加速させる。B2C事業とB2B事業が混在している現状を再編し、B2C事業は白物家電と黒物家電を含む事業会社「スマートライフ(仮称)」に集約する。
パナソニック株式会社を発展的に解消
(パナソニックの資料より、以下同じ)
発表のタイミングについて楠見社長は「構造改革をより早く進める必要がある。社内の限られたメンバーではなかなか進まない。公表することで、社内のより多くのメンバーを巻き込んで一気に進めていきたい」と語り、改革のスピードを上げる狙いがあったことを明かした。
これまで、パナソニックHD傘下に家電販売部門であるパナソニック株式会社があり、その中に社内分社があり、B2CとB2B事業が混在していた。
今回の経営改革では、パナソニックHDの直下にB2Cの事業会社である「スマートライフ」(仮称)、ソリューション領域を手掛けるB2Bの「空質空調・食品流通」(同)、同じくB2BでデータセンターやEV向け蓄電池などを展開する「エレクトリックワークス」(同)に再編する。白物家電と黒物家電を含めむB2C事業を、スマートライフに集約するのがポイントだ。
その過程でパナソニック株式会社を発展的に解消する。なお「パナソニックの社名を残すか、残さないかはまだ何も決まっていない」(楠見社長)という。
低収益事業の見極め
また、成長を見通せない課題事業として「産業デバイス」「メカトロニクス」「キッチンアプライアンス」「テレビ」の4事業を挙げた。さらに、再建が必要な事業に「空質空調」「家電」「ハウジングソリューションズ」の3事業を挙げた。
中でもテレビ事業については、「売却という手段をとるかどうかは現時点で決定していない。売却以外の選択肢もある」と、具体的な中身はまだ白紙であることを強調した。
同時に「今、当社のテレビ事業を売却として受け入れてくれる企業はないと考えている」と語るなど、仮に売却するにしてもベストなパートナー探しに難航しそうだ。
一方、「事業や製品、地域によっては撤退などを検討していく」という点について、「専門店(地域電器店)でテレビを今でもしっかりと販売している地域は日本以外にも台湾や香港もある」と語っている。
同社はテレビの販売で北米市場から撤退したり、再参入したりしてきたが、地域によっては継続して販売していくことを示唆する含みのあるコメントだった。
いずれにせよテレビ事業の改革では、「他の会社に頼ることで固定費を下げることはこれまでもしてきたが、もっと徹底して進めることが改革につながる」とし、さらなる固定費の削減に踏み込んでいく。
固定費の削減では、テレビ事業だけに限らず、グループ各社での人員の最適化を徹底する雇用構造改革を進める上で「25年度中に早期退職も含めて一気にやりきる」とした。具体的な事業や規模は、まだ決まっていない。
B2Cの課題事業には、「テレビ」とあわせて「キッチンアプライアンス」も挙がっている。とはいえ、コンシューマ向けの家電事業は旧松下電器産業の創業時からの祖業だ。
この点については「誤解しないでほしいのは、家電事業はわれわれにとってとても大事な事業であること。そのためにも高収益な事業にしないといけない。そのために大鉈を振るう部分は大鉈を振るう」と語り、高収益な事業構造にすることへの強い意志を示した。
グループの目指す姿
パナソニックグループにとって25年度は経営改革に集中する年度となる。その上でグループの目指す姿を次の3つにまとめた。
注力していくのは24年度の売上高見通しが3.5兆円となるB2Bの「ソリューション領域」。B2Cで同1.9兆円の「スマートライフ領域」と、B2Bで同1.7兆円の「デバイス領域」は収益の基盤としていく。
今後の構造改革の具体的な規模などは示されず、決意表明の側面が強い会見となったが、グループ全体で利益が出ているうちに、スピードを上げて経営改革を遂行していきたいという経営陣の強い思いは伝わった。(BCN・細田 立圭志)
![](https://bcnretail.kuroco.app/files/user/202502071736_1.jpg?v=1738917380)
(パナソニックの資料より、以下同じ)
異例のタイミングでの発表
通常、パナソニックグループ全体にかかわる経営改革は、5月の通期決算発表の後に発表される。今回は異例となる2025年3月期第3四半期決算にあわせた発表となったところに、同社の危機感が表れている。発表のタイミングについて楠見社長は「構造改革をより早く進める必要がある。社内の限られたメンバーではなかなか進まない。公表することで、社内のより多くのメンバーを巻き込んで一気に進めていきたい」と語り、改革のスピードを上げる狙いがあったことを明かした。
これまで、パナソニックHD傘下に家電販売部門であるパナソニック株式会社があり、その中に社内分社があり、B2CとB2B事業が混在していた。
今回の経営改革では、パナソニックHDの直下にB2Cの事業会社である「スマートライフ」(仮称)、ソリューション領域を手掛けるB2Bの「空質空調・食品流通」(同)、同じくB2BでデータセンターやEV向け蓄電池などを展開する「エレクトリックワークス」(同)に再編する。白物家電と黒物家電を含めむB2C事業を、スマートライフに集約するのがポイントだ。
その過程でパナソニック株式会社を発展的に解消する。なお「パナソニックの社名を残すか、残さないかはまだ何も決まっていない」(楠見社長)という。
キッチンとテレビなど低収益事業に「大鉈を振るう」
![](https://bcnretail.kuroco.app/files/user/202502071736_2.jpg?v=1738917380)
また、成長を見通せない課題事業として「産業デバイス」「メカトロニクス」「キッチンアプライアンス」「テレビ」の4事業を挙げた。さらに、再建が必要な事業に「空質空調」「家電」「ハウジングソリューションズ」の3事業を挙げた。
中でもテレビ事業については、「売却という手段をとるかどうかは現時点で決定していない。売却以外の選択肢もある」と、具体的な中身はまだ白紙であることを強調した。
同時に「今、当社のテレビ事業を売却として受け入れてくれる企業はないと考えている」と語るなど、仮に売却するにしてもベストなパートナー探しに難航しそうだ。
一方、「事業や製品、地域によっては撤退などを検討していく」という点について、「専門店(地域電器店)でテレビを今でもしっかりと販売している地域は日本以外にも台湾や香港もある」と語っている。
同社はテレビの販売で北米市場から撤退したり、再参入したりしてきたが、地域によっては継続して販売していくことを示唆する含みのあるコメントだった。
いずれにせよテレビ事業の改革では、「他の会社に頼ることで固定費を下げることはこれまでもしてきたが、もっと徹底して進めることが改革につながる」とし、さらなる固定費の削減に踏み込んでいく。
固定費の削減では、テレビ事業だけに限らず、グループ各社での人員の最適化を徹底する雇用構造改革を進める上で「25年度中に早期退職も含めて一気にやりきる」とした。具体的な事業や規模は、まだ決まっていない。
B2Cの課題事業には、「テレビ」とあわせて「キッチンアプライアンス」も挙がっている。とはいえ、コンシューマ向けの家電事業は旧松下電器産業の創業時からの祖業だ。
この点については「誤解しないでほしいのは、家電事業はわれわれにとってとても大事な事業であること。そのためにも高収益な事業にしないといけない。そのために大鉈を振るう部分は大鉈を振るう」と語り、高収益な事業構造にすることへの強い意志を示した。
![](https://bcnretail.kuroco.app/files/user/202502071736_3.jpg?v=1738917380)
パナソニックグループにとって25年度は経営改革に集中する年度となる。その上でグループの目指す姿を次の3つにまとめた。
注力していくのは24年度の売上高見通しが3.5兆円となるB2Bの「ソリューション領域」。B2Cで同1.9兆円の「スマートライフ領域」と、B2Bで同1.7兆円の「デバイス領域」は収益の基盤としていく。
今後の構造改革の具体的な規模などは示されず、決意表明の側面が強い会見となったが、グループ全体で利益が出ているうちに、スピードを上げて経営改革を遂行していきたいという経営陣の強い思いは伝わった。(BCN・細田 立圭志)