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半年先まで予約満席。姫路『日本料理 淡流』の朝食が凄い理由

グルメ

2025/01/17 17:00

 朝から8000円超えのアッパー価格にもかかわらず、月1回の朝食デーは半年先まで満席。姫路の『日本料理 淡流』の朝ご飯は何が凄いのか!? その価値はあるのか。追究すべく、取材してみた。

イケメンで物腰が柔らかい中江さん。魂レベルが相当高いと思う。

 インバウンドで“朝食”がちょっと流行っているようだが、そんなブームより前に朝食を提供している『日本料理 淡流』。2019年開店だが、その1年半後(コロナ禍真っ最中)には朝営業を始めていた。大将の中江悠文さん、そういえばオープン当初から言っていたっけ。「旅館の朝食が好きで。ご飯何杯でも食べられる朝ご飯をやりたいんです」と。

 朝ご飯は第3日曜のみ、7時一斉スタート。税・サービス料込みで8400円。夜は約30000円~なので、朝は相当破格と言えよう。がしかし。
 
土鍋ご飯はお代わりOK。1人で1鍋食べる人もいるという。

 「朝食」という一食に、そんなに大枚はたく価値があるのか。との疑念が頭をもたげるが、淡流の暖簾をくぐった途端、凛とした空気に包まれ背筋までシャンとなる。数寄屋造りの茶室を模した空間で、俳優の市川隼人さんそっくりの中江さんが迎えてくれた。

 実は中江さん、姫路出身でオーストラリアに留学、その後もイタリアやドバイなど海外の和食店で修業、ついに『銀座 小十』の料理長に。2019年、地元に貢献するために戻ってきたという。

 茶道も嗜みソムリエ資格を持ち、食材を育てるため山を所有し、漁業も狩猟も自ら行うというマルチすぎる方。もはや自分と同じ人間とは思えない。

 さて、この日の朝食の献立はこんな感じ。月替わりである。

・岡田農産にこまるのご飯
・足赤海老としろ菜 ジュレ掛け
・鰆の味噌幽庵焼き
・百合根と椎茸の茶碗蒸し
・キジハタのカツ 鬼おろし
・南京と小芋 蟹餡掛け
・白味噌 蕪
・胡麻昆布 海苔佃煮 かくや漬 梅干し
・リンゴと柚子シャーベット
・薄茶
・きなこ餅

 確かに夜と同等かと思うほど質の高い内容だ。メインと言える土鍋ご飯の特別栽培米「にこまる」の炊きたて。自家製の昆布や海苔佃煮もお代わりでき、頼むから売って下さいと願うほど美味。
 
料理はどれも酒に合う。「朝から日本酒、ワインは普通ですね」とな。

 しかも器が、魯山人だったり歴代樂焼だったり、手にするのが恐れ多いほどの高価な骨董。中には自分で焼いた皿まで(!)。ひとつひとつの器や料理についても、歴史や成り立ちを楽しく講釈してくれる。
 
キジハタは幻の超高級魚「アコウ」。前浜揚がりの魚にこだわる。

 そうか、人はみな「ここで得られる体験」に価値を見出しているのか。と納得がいった。料理を味わうだけでなく、美術館のように作品に触れ、博物館のように史実を知り、大学のように知識を得ることができる。
 
「昼、夜とも食材や仕立てを少し変えています」というから
朝訪れる価値は大いにある。

 食事が終わった後、物事への造詣が少しだけ深まった気がした。いや中江さんの博識さに比べれば1000分の1程度だが。
 
食後の和菓子も目の前でこしらえる。抹茶も表千家流で点てる。

 中江さん…某局の「仕事の流儀」的な番組に出るべき人物である。こっそり推薦しようかと本気で思っている。


『日本料理 淡流』
住所/兵庫県姫路市朝日町58 メゾンソレイユ 1階

※こちらの記事は、関西の食雑誌「あまから手帖」がお届けしています。
あまから手帖=https://www.amakaratecho.jp/amakaratecho/