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西荻窪・「べたなぎ」で釣りカワハギ肝醤油と日本酒に溺れた夜

暮らし

2024/12/24 18:00

【酒場レコード・4】JR西荻窪駅の西口正面にある「仲通街」には「ピンク色の象」がぶら下がっている。私はこのアブノーマルなピンクの象が大好きで必ず下を通るようにしている。今晩の酒場、「地魚・食彩 べたなぎ」は、このピンク象を目印に左折し徒歩5分。大将が釣ってきたばかりの魚を調理するので、ずば抜けた新鮮な魚を味わうことができる。私が20代の会社員だった頃の上司夫妻のお誘いで定期的にお邪魔してはおいし過ぎて羽目を外してしまう酒場だ。

西荻窪駅を背に神明通りの右側にある
 
西荻・仲通街のピンク色の象は太子講を思わせる

自分で釣った魚を自分で捌いて自分の店で出す

 「べたなぎ」は2010年開店、西荻窪の住宅街の真ん中で愛され続け2025年に15周年を迎える。大将自ら釣った新鮮な魚を中心に大将の地元である新潟の食材を使った料理、それに合う地酒を呈する。
 
黙々と仕込む大将

18時開店、常連さんを中心に続々と席が埋まる

 開店時間の18時ちょうどに来店。座席数はカウンター7席、テーブル11席。調理は大将が担当し、お給仕がこちらも釣りを愛するスタッフさんが担当。店内には釣果の写真が並び期待が膨らみ心躍る。黒板に本日の魚メニューが書かれている。よっしゃ、「カワハギ(肝付)」がある!私の最も好きな刺身だ。
 
オラオラ期待しろよ!といわんばかりの大将の釣果
 
右に輝くカワハギの文字、コハダもいい!

駆けつけは「エビス生」と「刺身盛り」

 
エビス樽生ビール(600円)

 エビスビールってちょっと高いんだけど、確実のその分おいしいところが本当にすごいと思う。そんな「エビス樽生ビール」(600円)で乾杯。今回も来店直後は興奮していて、地に足がついていない中、冷えたエビスをごくごく飲むと「冷静」なる。ビールは薬、か。

 刺身は「おまかせちょこっともり 1人前」(1200円)。本日は釣りたてアジ、ケンサキイカ、本マグロ、マダイ、カツオ。どれも旨いが圧倒的に輝くのは釣りたてアジ。鮮度が命とはよくいったものだ。
 
刺身 おまかせちょこっともり 1人前(1200円)

亀の海とカワハギ肝醤油

 我々は早くもカワハギ 肝付(1300円)を注文してしまった。刺し盛りの旨さに引っ張られた。たまらない。もう我慢できない。今まさに大将がカワハギを捌いている。

 本日一杯目の日本酒は「亀の海 超辛口純米」(800円)。長野県佐久市の土屋酒造店が醸す。カワハギに合わせるなら亀の海以外にありえない。なぜならば、私の同級生が醸している酒だからである。こういう「贔屓(ひいき)」ができることが幸せだ。良き友を持った。
 
亀の海 超辛口純米(800円)

 捌いたばかりの超新鮮なカワハギとさくら色の美しい肝は工芸品のよう。肝に醤油を垂らし馴染ませ、身を潜らせ、口へ運ぶ。今日の肝はピカイチだ。臭みが全くない、そして甘みが強い。水っぽさがないので刺身とも醤油ともよく絡む。尊きカワハギをよーく噛み締めて、亀の海を少なめにキメる。満たされすぎて瞬間的に煩悩や欲が消え去る。
 
カワハギ 肝付(1300円)
 
キモ醤油に絡めたカワハギ、王の食べ物

釣りタチウオを食い尽くす

 我々はもう勢い付いてしまった。次も釣りたての魚を攻める。釣りタチウオの塩焼きを注文。焼きに合わせるのは新潟の銘酒「大洋盛 紫雲 本醸造」(750円)。新潟県村上で大洋酒造が醸すこの酒は切れ味鋭く、タチウオの旨みを美しく切り裂く。
 
大洋盛 紫雲 本醸造(750円)

 「釣りタチウオ塩焼き」(1100円)の大きさが写真で表現しきれないのが残念である。想像の1.8倍のサイズ感。大きいのは単純にうれしい。極めて新鮮なため、ふわふわに焼かれているのに歯応えがある。噛み締めると脂が溢れた。それを大洋盛で切り刻む。その切れ味に気が遠くなる。
 
釣りタチウオ塩焼き(1100円)

釣りタチウオが素晴らしすぎておかわりする

 タチウオに奪われた心はタチウオで取り返さないといけない。そのため、釣りタチウオの天ぷらを注文。塩焼きの旨さを鑑みると天ぷらも相当旨いぞ。気を引き締める酒が必要である。選んだのは福岡県久留米で山の壽酒造が醸す「山の壽 辛口純米吟醸」(900円)。切れ味の中に山田錦の旨みを強く感じる。この旨みと天ぷらのマリアージュを演出するのは私だ。
 
山の壽 辛口純米吟醸(900円)

 「タチウオ梅しそ天ぷら 野菜付」(1000円)。見よ、この雄々しい立ち姿を。ありがたく頬張る。まずはサクサク感が心地よく、タチウオの脂が天ぷらの衣に絡んでなんとも香ばしく旨い。幸せのオイルが口中に溢れるなかで山の壽をふくむ。喉を通っても旨さが残る。凄まじい余韻。
 
タチウオ梅しそ天ぷら 野菜付(1000円)

べたなぎの定番メニュー三連弾

 おいしいものを食べ続けると食欲の屋根が飛ぶことがある。今晩はそんな夜、食べまくる夜に決定。続いて定番メニューを心ゆくまで楽しむ。

 定番一品目は「釣りアジフライ」(700円)。大将はこのアジフライ用の味がなくなると釣りに出かけるそうだ自家製のタルタルソースをつけていただく。当然ながら普段食べているアジフライとは別物の香り、食感、味が広がる。
 
釣りアジフライ(700円)

 定番二品目は大将の地元である新潟県村上地方に伝わる煮物「だいかい」(600円)。見た目とは裏腹にすごく優しく強い旨みを持つ。特に素材の旨みが染み出した「汁」が最高。汁に浸した具材はビールに合う。この汁は飲み干すべき逸品。たとえ高血圧だとしても、だ。
 
新潟・村上の郷土料理 だいかい(600円)

 定番三品目は、これまた大将の地元である新潟県が誇る銘柄豚である「朝日豚」を使った「朝日豚のおつまみタレカツ」(600円)。しっとり、きめ細やか、そして脂が旨くて、大将の特製ダレがさらに引き立てる。優しい顔をしつつ攻撃力は高い、危険なつまみだ。
 
新潟名産 朝日豚のおつまみタレカツ(600円)

締めの寿司は焼酎でキメる

 蛍の光、窓の雪。楽しい宴も終わりの時間が近づいてきた。仕上げの儀式には「芋焼酎 侍士の門」のロック。「侍士の門」は葉巻みたいな酒だ。深い芋の香りを燻らせるように味わう。
 
侍士の門 芋焼酎

 焼酎を飲みながら寿司をいただく。魚の香り、酢飯の酸味を芋焼酎で織り交ぜる。写真右上に鎮座するのはコハダ。このサイズ感からは想像できない位の旨みを持つ。酩酊しつつ食べる寿司は旨い。そしてなぜか強く記憶に残るから次の訪問時にも食べたくなる。困ったものだ。
 
おまかせ握り 7かん(1200円)

 今晩も酔ってしまった。釣りたての魚をご近所で食べることができるのはシンプルに恵まれていると思う。そういった機会を与えてくれるべたなぎさん、そして幾つになっても落ち着かない私を歓迎してくださる元上司夫妻には感謝しかない。いつも舌を肥えさせていただきありがとうございます。末長く通わせていただきます。

※本記事に表示の金額は全て税別、2024年10月時点のもの
 

今回の酒場:地魚・食彩 べたなぎ

 地魚・食彩 べたなぎは、JR中央・総武線、西荻窪駅から徒歩6分。大将とスタッフさん自ら吊り上げた魚を呈している。釣果によっては激レアな魚に出会えることも。最新釣果や営業時間の確認はべたなぎインスタグラムを要チェック。来店の際は必ず事前予約して確実に旨い魚にありつこう。(ナードワード社・國安淳史)
 
べたなぎ 大将の河内さん

『地魚・食彩 べたなぎ』
住所:〒167-0053 東京都杉並区西荻南1-23-11 日興パレス西荻窪PART2
電話:03-5941-9871
※最新の営業時間・定休日は店舗インスタグラムでご確認ください

■Profile

國安淳史
ナードワード社 代表取締役。外資系IT企業などを経て2018年にWeb・Shopify・各種デザイン制作、商品企画などを提供するナードワード社を設立。KISOと共創した「日本酒器 hiyakan PRO」はECサイトや百貨店等で販売中。趣味は音楽、読書、飲酒。