ここ1~2年でAIは急速に進化し、データ処理はもちろん、言語や文章、画像、動画などその活用分野は広がりを見せている。AIによるデータ処理は従来クラウドが主流だったが、低消費電力でAI処理をオンデバイスで行うNPUが登場。このNPUを搭載した「AI PC」の登場で、パソコンは新たなフェーズに入ろうとしている。
その後も各社から生成AIが発表され、AIは一般へも徐々に浸透してきた。当初、AIの活用は主にクラウド上で行われてきた。PC上でもAIを活用し、プライバシーの強化や迅速な処理を可能としたのが 「AI PC」で、NPU を含む演算装置は低消費電力でありながら優れたパフォーマンスを実現する。
半導体メーカーを代表するインテルはNPUを搭載したインテル®CoreTM Ultraプロセッサー・ファミリーを業界に先駆けてリリース。2024年に入ると、PCメーカー各社からインテル® CoreTM Ultraプロセッサー搭載のAI PCが続々と発売され、今後も AI PCのラインアップは拡大が見込まれる。
BCNでは全国の家電量販店やPCショップ、ECサイトの実売データを収集し、BCNランキングとして集計している。このBCNランキングで24年のAI PCの販売状況を、販売台数・金額の構成比で見てみよう。
PCは旧型の商品を値下げして販売しているケースも多いため、2024年に発売された各月の平均売価が15万円以上の商品を対象に集計を行った。
24年1月以降に発売された各月の平均売価が15万円以上のPCの全販売台数と全販売金額に占めるAI PCの比率を見ると、1月の販売台数構成比は1.7%で、販売金額構成比は1.9%。この時期のAI PCは極めて少ない。しかし、2月になると販売機種が増加し、台数構成比が7.6%で金額構成比は8.3%と大きく伸長した。
8月にはさらに販売機種が増加し、台数構成比は15%を超えて金額構成比は19%になり、10月には台数構成比が23.7%、金額構成比は27.4%となった。1月からのわずか9カ月でAI PCの販売構成比は飛躍的に伸長しているのが分かる。この数値が表すように、AI PCに対する引きは非常に高いといえるだろう。
例えばメールの返信のドラフトを指示したり、画像の作成もテキストで指示したりと、ビジネスシーンでも趣味の領域でもPCの使い勝手がこれまでとは違う。その新たな体験の背景には、どんな進化が隠されているのだろうか。AI PC を特徴づける5つのポイントを以下に挙げる。
①高性能:AI PCは高性能でスペックも充実し、さまざまな作業全般をスピーディーに効率的に行える
②新機能:AIを活用したアプリケーションにより、新しい機能の活用や使い方ができる
③電力効率:CPU、GPU、そしてNPUが連携してそれぞれの特長を活かした演算処理を行い、低消費電力ながらこれまで以上のパフォーマンスを実現する
④低レイテンシー:クラウドと比較してデータ送受信の時間がかからず、その分の時間が短縮できる
⑤高いセキュリティー:PC上で処理を行うためデータの送受信を伴うクラウドと比較して、より高いプライバシーを保つことができる
上記のようにAI PCは、AIを活用して作業をより速く、より効率的に、そしてより安全に処理する。さらにAIを使用しない作業においても最新の技術が搭載されており、これまでのPCよりも快適に作業することができるのだ。
インテルは23年末にAI PC向けにインテル®CoreTM Ultraプロセッサー(シリーズ 1) を市場投入し、24年9月にはシリーズ2を投入した。ハードウェアで業界を推進するだけでなく、業界リーダーとしてこれまでに培かわれたソフトウェアや周辺機器との幅広い互換性も提供しながら100社を超えるソフトウェア企業とパートナーシップを結んでいる。これにより、ソフトウェアやアプリケーションにおける AI の活用や最適化を進め、ユーザーの利便性の向上や普及にも注力している。
広いスペースをAI PCに充てているヨドバシカメラAkibaの橋本淳マネージャーは、「今の時期は2025年のWindows10サポート終了を見据えて下見に来るお客様が多いのですが、2割ほどはAI PCに興味を持って来店されています」と話す。
そのため接客では一般的なモデルを説明する中で、「追加機能としてAIでできることを紹介し、AI PCを提案しています」。この流れでAI PCについて説明すると、良い反応が返ってくるという。
「お客様に伝えるAI PCのメリットとしては、まずは高性能で、処理が速いという点です。そして従来のPCとは違って熱を持ちにくいのも特徴の一つですね。従来のPCとAI PCを並べて本体に触れてもらうと、お客様にも違いを感じてもらえます」
高性能だからデータ処理のスピードが速く、作業時間が短縮できる。これは時間をより効率的に使えることを意味し、ユーザーの大きなメリットとなる。
橋本マネージャーはAI PCについて「PCの使い方が変わるのではないか」と思えるほど、今後に期待しているという。これからのソフト開発に伴い、「PCに馴染みがない人やPCは難しいというイメージを持っている人の感覚が変わってくるのではないでしょうか」と考えている。
同店のPCコーナーを訪れる来店客の約8割はAI PCを目的としているわけではないとのことだが、そのようなケースでもAI PCを提案している。「特に生成AIを使うと、今まではできなかったことができるようになります。加えてPC自体が高性能」という点がユーザーベネフィットにつながるという。
だが、口頭で説明しても分かりにくい面はある。そこで実演デモを行い、できることを体験してもらう。AI PCを知らなかった、興味がなかったという人も「実際にAIでできることを見ていただくと驚かれ、その後にAI PCを購入していくお客様もいます」
AI PCの魅力はAIを活用したデータ処理の速さや性能の高さに加えて、省電力というメリットもある。つまり、単にAIに適したPCというだけではない総合的なスペックの高さが魅力なのだ。
同店では、店頭で体験イベントを行い、AI PCで何ができるかを伝える取り組みを行っている。蛇口さんは「AI PCは個人的にも期待しています。さらにいろいろな機能が増えることで、より多くのお客様に提案できます。AI PCはまだスタートしたばかりで、これからできることがどんどん増えていくと思いますので、これから先に対する期待感も大きいですね」と語る。
2025年10月にWindows10のサポートが終了する。家電量販店のPCコーナーには、買い替えのため下見に来る人も少なからずいるようだ。もし買い替えを考えているとしたら高価な買い物だからこそ、数年後にも使えるPCを選び、その選択肢としてはAI PCを候補に入れたい。AIの進化とPCの進化が融合した最先端のデバイスで何ができるのか、店頭で確認してみよう。
AI PCの販売構成比は10月に約24%まで伸長
2022年11月、生成AIのChatGPTがリリースされた。このトピックは世界中から注目を集め、AIが遠い存在ではなく、誰もが活用できる身近な存在として大きな話題となったのは記憶に新しい。その後も各社から生成AIが発表され、AIは一般へも徐々に浸透してきた。当初、AIの活用は主にクラウド上で行われてきた。PC上でもAIを活用し、プライバシーの強化や迅速な処理を可能としたのが 「AI PC」で、NPU を含む演算装置は低消費電力でありながら優れたパフォーマンスを実現する。
半導体メーカーを代表するインテルはNPUを搭載したインテル®CoreTM Ultraプロセッサー・ファミリーを業界に先駆けてリリース。2024年に入ると、PCメーカー各社からインテル® CoreTM Ultraプロセッサー搭載のAI PCが続々と発売され、今後も AI PCのラインアップは拡大が見込まれる。
BCNでは全国の家電量販店やPCショップ、ECサイトの実売データを収集し、BCNランキングとして集計している。このBCNランキングで24年のAI PCの販売状況を、販売台数・金額の構成比で見てみよう。
PCは旧型の商品を値下げして販売しているケースも多いため、2024年に発売された各月の平均売価が15万円以上の商品を対象に集計を行った。
24年1月以降に発売された各月の平均売価が15万円以上のPCの全販売台数と全販売金額に占めるAI PCの比率を見ると、1月の販売台数構成比は1.7%で、販売金額構成比は1.9%。この時期のAI PCは極めて少ない。しかし、2月になると販売機種が増加し、台数構成比が7.6%で金額構成比は8.3%と大きく伸長した。
8月にはさらに販売機種が増加し、台数構成比は15%を超えて金額構成比は19%になり、10月には台数構成比が23.7%、金額構成比は27.4%となった。1月からのわずか9カ月でAI PCの販売構成比は飛躍的に伸長しているのが分かる。この数値が表すように、AI PCに対する引きは非常に高いといえるだろう。
AI PCは作業をAIがアシスト
AI PCとは端的に言えば AI をさまざまな作業に活用できる PC だ。文章の作成や要約、画像や動画の作成・編集、音声のテキスト化などにAIを用いて、作業が効率よくスピーディーに行なえる。例えばメールの返信のドラフトを指示したり、画像の作成もテキストで指示したりと、ビジネスシーンでも趣味の領域でもPCの使い勝手がこれまでとは違う。その新たな体験の背景には、どんな進化が隠されているのだろうか。AI PC を特徴づける5つのポイントを以下に挙げる。
①高性能:AI PCは高性能でスペックも充実し、さまざまな作業全般をスピーディーに効率的に行える
②新機能:AIを活用したアプリケーションにより、新しい機能の活用や使い方ができる
③電力効率:CPU、GPU、そしてNPUが連携してそれぞれの特長を活かした演算処理を行い、低消費電力ながらこれまで以上のパフォーマンスを実現する
④低レイテンシー:クラウドと比較してデータ送受信の時間がかからず、その分の時間が短縮できる
⑤高いセキュリティー:PC上で処理を行うためデータの送受信を伴うクラウドと比較して、より高いプライバシーを保つことができる
上記のようにAI PCは、AIを活用して作業をより速く、より効率的に、そしてより安全に処理する。さらにAIを使用しない作業においても最新の技術が搭載されており、これまでのPCよりも快適に作業することができるのだ。
インテルは23年末にAI PC向けにインテル®CoreTM Ultraプロセッサー(シリーズ 1) を市場投入し、24年9月にはシリーズ2を投入した。ハードウェアで業界を推進するだけでなく、業界リーダーとしてこれまでに培かわれたソフトウェアや周辺機器との幅広い互換性も提供しながら100社を超えるソフトウェア企業とパートナーシップを結んでいる。これにより、ソフトウェアやアプリケーションにおける AI の活用や最適化を進め、ユーザーの利便性の向上や普及にも注力している。
AI PCはPCの使い方を変える
AI PCは家電量販店が積極的に取り組む商品の一つだ。ECサイトとは異なり商品に触れたり、知識豊富な販売員に話を聞くこともできる。そこで毎日数多くの来店客に対応している家電量販店の販売員に最近のAI PCに関する状況を聞いた。広いスペースをAI PCに充てているヨドバシカメラAkibaの橋本淳マネージャーは、「今の時期は2025年のWindows10サポート終了を見据えて下見に来るお客様が多いのですが、2割ほどはAI PCに興味を持って来店されています」と話す。
そのため接客では一般的なモデルを説明する中で、「追加機能としてAIでできることを紹介し、AI PCを提案しています」。この流れでAI PCについて説明すると、良い反応が返ってくるという。
「お客様に伝えるAI PCのメリットとしては、まずは高性能で、処理が速いという点です。そして従来のPCとは違って熱を持ちにくいのも特徴の一つですね。従来のPCとAI PCを並べて本体に触れてもらうと、お客様にも違いを感じてもらえます」
高性能だからデータ処理のスピードが速く、作業時間が短縮できる。これは時間をより効率的に使えることを意味し、ユーザーの大きなメリットとなる。
橋本マネージャーはAI PCについて「PCの使い方が変わるのではないか」と思えるほど、今後に期待しているという。これからのソフト開発に伴い、「PCに馴染みがない人やPCは難しいというイメージを持っている人の感覚が変わってくるのではないでしょうか」と考えている。
実演デモでAI PCを体験
ビックカメラ有楽町店でもAI PCの販売に注力している。同店PCコーナーの蛇口堪汰さんは、「AI PCに関心があるお客様はクリエイターや情報感度が高く、いわゆるイノベーターと分類されるタイプの方が多いように思います」同店のPCコーナーを訪れる来店客の約8割はAI PCを目的としているわけではないとのことだが、そのようなケースでもAI PCを提案している。「特に生成AIを使うと、今まではできなかったことができるようになります。加えてPC自体が高性能」という点がユーザーベネフィットにつながるという。
だが、口頭で説明しても分かりにくい面はある。そこで実演デモを行い、できることを体験してもらう。AI PCを知らなかった、興味がなかったという人も「実際にAIでできることを見ていただくと驚かれ、その後にAI PCを購入していくお客様もいます」
AI PCの魅力はAIを活用したデータ処理の速さや性能の高さに加えて、省電力というメリットもある。つまり、単にAIに適したPCというだけではない総合的なスペックの高さが魅力なのだ。
同店では、店頭で体験イベントを行い、AI PCで何ができるかを伝える取り組みを行っている。蛇口さんは「AI PCは個人的にも期待しています。さらにいろいろな機能が増えることで、より多くのお客様に提案できます。AI PCはまだスタートしたばかりで、これからできることがどんどん増えていくと思いますので、これから先に対する期待感も大きいですね」と語る。
2025年10月にWindows10のサポートが終了する。家電量販店のPCコーナーには、買い替えのため下見に来る人も少なからずいるようだ。もし買い替えを考えているとしたら高価な買い物だからこそ、数年後にも使えるPCを選び、その選択肢としてはAI PCを候補に入れたい。AIの進化とPCの進化が融合した最先端のデバイスで何ができるのか、店頭で確認してみよう。