【人との関係性を変えるコミュニケーションとは?・8】「あなたを信頼してこの仕事を任せます」「あの人は信頼できるよね」。こんな言葉を、誰しも口にしたことがあると思います。「信頼」という言葉は職場でも普段の生活でも頻繁に見聞きする言葉ですし、社会生活を送る上で信頼が重要であると、誰もが理解していることだと思います。リーダーにとって、「自分はチームメンバーや部下から信頼されているのだろうか」と自問するときの信頼は、もちろん自身の経験やスキルへの信頼(信用)も含まれている場合がありますが、どちらかというと、メンバーと自分との関係性のことに焦点を当てているのではないでしょうか。
自分のことを想像してみると、「あなたを信頼してこの仕事を任せます」という文脈で使う場合、「あなたは、この仕事を遂行する能力をもっていて、質の高いアウトプットができる」というニュアンスを含みます。過去の実績や日々の仕事の様子をみていて、「それらの結果を根拠にして、理性的に相手を信用している」という感覚です。
一方、「あの人は信頼できるよね」という文脈のときは、「あの人は、誠実に私と関わってくれる」というニュアンスを含んでいるときがあり、その場合、その人と私の間の関係性にフォーカスしています。つまり、「Aさんの仕事のアウトプットは信頼(信用)しているけど、Aさん自身は信頼していない」ということも起きるわけです。
人はそもそも、他人を気にかけたり、他人から気にかけられたりすることを望むものです。自分が、大切な存在であることを確認したいのです。どんな忙しさの中にあってもリーダーは、メンバーに興味を持って日々の様子を気にかけ、ポジティブなフィードバックを頻繁に行うことが必要です。
誠実さには、「率直に話すこと」「約束を守ること」「自らモデルになること」「自分の務めを果たすこと」と四つの領域があり、どれか一つでも欠けるとリーダーに対する信頼感が低下する可能性があります。リーダーが自らの責任と専門性を確実に果たし、そのための努力を惜しまないのはもちろんのこと、時には「自分には分からない」「自分にはできない」と率直に共有するのも必要です。
リーダーが、チームメンバーを公平に見ていなかったり、自分の好みによって特定の人を優位に立たせたりすると、信頼および良好な人間関係はすぐに損なわれます。チームメンバー1人1人を認め、それを言葉にして伝え、公平に評価することが必要です。また、時間やエネルギーがチームメンバー全員に平等に行き渡るように注力します。
信頼という側面において忘れられがちなのは、チームやチームメンバーに「クリエイティビティを発揮する自由」や「リスクをとる自由」を与えるということです。確実性ばかりを要求し、失敗を許さないチーム環境では、リーダーの信頼は損なわれ、物事を創造する能力が限られてしまう危険性があります。
■Profile
片桐多佳子
コーチ・エィ 執行役員
東北大学経済学部卒。コーチ・エィでは経営層を対象としたエグゼクティブ・コーチングを行い、200人以上のビジネスリーダーへのコーチング実績を持つ。「組織インパクトを出す」コーチングにこだわり、組織風土変革、業績向上、部門間連携強化などのニーズに対する、エグゼクティブ・コーチングやコーチングプロジェクトの設計、マネジメントを多数手がける。組織変革のプロセスを企画から成果創出までトータルに支援している。2016年より執行役員。国際コーチング連盟プロフェッショナル認定コーチ、生涯学習開発財団認定マスターコーチ。
そもそも「信頼」って何?
ところで、信頼という言葉を使うとき、どういうことをイメージしているのでしょうか。辞書で信頼を引いてみると、「信じて頼りにすること。頼りになると信じること。また、その気持ち」と出てきます。「信じて頼りにすること」の漢字2文字を合わせると信頼。何となく分かったような、分からないような感覚です。自分のことを想像してみると、「あなたを信頼してこの仕事を任せます」という文脈で使う場合、「あなたは、この仕事を遂行する能力をもっていて、質の高いアウトプットができる」というニュアンスを含みます。過去の実績や日々の仕事の様子をみていて、「それらの結果を根拠にして、理性的に相手を信用している」という感覚です。
一方、「あの人は信頼できるよね」という文脈のときは、「あの人は、誠実に私と関わってくれる」というニュアンスを含んでいるときがあり、その場合、その人と私の間の関係性にフォーカスしています。つまり、「Aさんの仕事のアウトプットは信頼(信用)しているけど、Aさん自身は信頼していない」ということも起きるわけです。
チームを率いていく上での「信頼関係」のつくりかた
生産性を誇るチームを率いて大きな成功をおさめているリーダーには例外なく、チームメンバーから信頼を得ているという共通点があるといわれています。チームやチームメンバーが、リーダーの伝えることを聞き、受け入れ、実行するためには、そこに信頼関係が構築されている必要があるからです。そして、メンバーからの信頼を得るリーダーが実践しているのは、大きく以下の四つです。心からの気遣いを示す
人はそもそも、他人を気にかけたり、他人から気にかけられたりすることを望むものです。自分が、大切な存在であることを確認したいのです。どんな忙しさの中にあってもリーダーは、メンバーに興味を持って日々の様子を気にかけ、ポジティブなフィードバックを頻繁に行うことが必要です。
常に誠実でいる
誠実さには、「率直に話すこと」「約束を守ること」「自らモデルになること」「自分の務めを果たすこと」と四つの領域があり、どれか一つでも欠けるとリーダーに対する信頼感が低下する可能性があります。リーダーが自らの責任と専門性を確実に果たし、そのための努力を惜しまないのはもちろんのこと、時には「自分には分からない」「自分にはできない」と率直に共有するのも必要です。
公平に接する
リーダーが、チームメンバーを公平に見ていなかったり、自分の好みによって特定の人を優位に立たせたりすると、信頼および良好な人間関係はすぐに損なわれます。チームメンバー1人1人を認め、それを言葉にして伝え、公平に評価することが必要です。また、時間やエネルギーがチームメンバー全員に平等に行き渡るように注力します。
クリエイティビティを発揮する自由と、リスクをとる自由を与える
信頼という側面において忘れられがちなのは、チームやチームメンバーに「クリエイティビティを発揮する自由」や「リスクをとる自由」を与えるということです。確実性ばかりを要求し、失敗を許さないチーム環境では、リーダーの信頼は損なわれ、物事を創造する能力が限られてしまう危険性があります。
チームメンバーとの信頼関係構築度チェック
チームメンバーとの信頼関係の状況を確認するためには、(1)部下1人1人とコミュニケーションを十分とっている、(2)部下との約束や約束の時間を守っている、(3)必要な情報を部下たちにスピーディーに共有している、(4)部下1人1人のゴールや進捗状況を把握している、(5)部下からの報告を待つだけでなく、自分からも適宜声がけをしている、(6)タイミングよく部下の目標達成や成長に気づき、そのことを伝えている、(7)前進や成長のための厳しいフィードバックも伝えることができ、相手もそれを受け止めることができる、(8)部下が気軽に相談にくる、(9)問題が起きたとき、部下からいち早く報告がある、(10)部下から業務改善や新しい取り組みの提案がある――が重要です。1人1人のチームメンバーとの信頼関係は、常に見直し、必要に応じて、信頼関係の強化に取り組まなければなりません。(コーチ・エィ・片桐多佳子)■Profile
片桐多佳子
コーチ・エィ 執行役員
東北大学経済学部卒。コーチ・エィでは経営層を対象としたエグゼクティブ・コーチングを行い、200人以上のビジネスリーダーへのコーチング実績を持つ。「組織インパクトを出す」コーチングにこだわり、組織風土変革、業績向上、部門間連携強化などのニーズに対する、エグゼクティブ・コーチングやコーチングプロジェクトの設計、マネジメントを多数手がける。組織変革のプロセスを企画から成果創出までトータルに支援している。2016年より執行役員。国際コーチング連盟プロフェッショナル認定コーチ、生涯学習開発財団認定マスターコーチ。