ポータブル電源は安全なの? Jackeryの取り組みにみるポータブル電源の安全性とは
ここ数年、家庭での防災対策アイテムとして注目度が急上昇しているのがポータブル電源だ。しかし、その半面でポータブル電源のバッテリーに使用されているリチウムイオン電池の事故報告も増えている。ブランド設立12周年、日本法人設立5周年を迎えるJackery Japanにポータブル電源の安全性に対する取り組みを聞いた。
このような状況下で一般消費者はもちろん、企業や自治体からも注目されているのがポータブル電源だ。非常時の電源確保という観点からメーカー各社がポータブル電源を被災地に無償提供し、ライフラインの復旧に大きく貢献した記事を目にした向きも少なくないだろう。
ポータブル電源への注目度が高まる一方で、その安全性に懸念があるとしたのが経済産業省だ。ポータブル電源の使用による火災事故が増加していることに加え、実はポータブル電源は電気用品安全法の規制対象外となっている。
そこで同省ではポータブル電源の安全性要求事項(中間とりまとめ)を2024年3月に公開した。安全性要求事項とは、事故のリスク低減となる様々な安全対策をポータブル電源メーカーや輸入事業者、販売事業者に求めるもの。この安全対策に適用した製品は、Sマークとして認証されることが6月に決定された。
上記の内容では、あたかもポータブル電源の火災事故が多発しているように見える。しかし、増加しているのはモバイル用途のポータブルバッテリーや小型家電製品で、内蔵のリチウムイオン電池が発火・発煙したというケースだ。
とはいえ、ポータブル電源のバッテリーにはリチウムイオン電池を使用しており、ポータブルバッテリーほどではないが、実際に火災事故も報告されている。ポータブル電源にも安全性のリスク自体は存在するのだ。
そこでポータブル電源を代表するメーカーであり、日本法人設立5周年を迎えるJackery Japan(以下、Jackery)のポータブル電源における安全性担保の取り組みを聞いた。同社は2024年11月8日に、自社のポータブル電源とソーラーパネルの製品性能や安全規定、環境適応性などに関する基準を発表。国際基準の環境保護と安全規範を設定している。
Jackeryによると、製品の安全性を保証するために行っている取り組みは(1)内蔵バッテリーに対する安全機能を搭載、(2)本体に対する各種のテストを実施して検証、(3)購入後のアフターサポート、の3つに大別される。以下でそれぞれを紹介しよう。
例えばフル充電になっても充電状態のまま放置していたり、逆に電池残量を使い切ったまま放置していたり、あるいは何かの原因で大きな電流が入ってきた、耐用温度以上または以下で使用したときなど、BMSが働き、自動で電源をオフにして事故を防止するという。
独自開発で特許出願済みの自然放電技術ソリューションにより、満充電で1年間放置していても自然放電はわずか5%に抑えるとともにバッテリー寿命を30%延長するChargeshieldテクノロジーも搭載している。
バッテリー内部にある複数のセルが、均等に同じ電圧を保つように管理してリチウムイオン電池の性能劣化を防ぐバランス機能もこのBMSに含まれており、BMSに加え、充電時の電圧を制御するNCM制御機能も搭載している。
また、Jackeryのアプリでは緊急充電モードや高速充電モードのほかにバッテリー節約モードがある。このモードは充電量を100%ではなく、80%で止める。同社によると、100%のフル充電状態を維持し続けるとバッテリーが劣化する可能性があるという。そのため、充電量を100%ではなく、あえて80%にとどめてバッテリーの寿命を延ばす。特に日常的に使用しない長期保管の場合は、充電量を80%にしておくのがおすすめとのことだ。
Jackeryのポータブル電源はこのような制御・安全機能を搭載していることで、内蔵のリチウムイオン電池自体の事故リスクを低減していると同社では解説する。
行われている製品テストは(1)外部からの影響に対するダメージ試験、(2)長期間使用や繰り返し使用での耐久性試験、(3)使用パーツや充放電時の安全性試験、の3つに分けられる。それぞれの代表的なテストを簡単に紹介しよう。
(1)では、製品に上から重りを落として当てる耐衝撃テストや低温、高温下での影響を確認する熱性能試験、製品を約1mの高さから3回落下させて堅牢性を確かめる落下試験、製品に上から圧力をかけて変形しないかを確認する圧力テストなどを行い、製品全体の頑丈性や堅牢性を検証している。
(2)では本体のボタンを最大5,000回押してボタン動作の異常が確かめるボタン寿命試験や電源コンセント、入出力ポートにプラグやケーブルの抜き差しを最大1万回繰り返す抜き差し試験、機械で何度も擦って本体の表示文字が消えないかを確認する耐摩耗テストなどを行い、長期間や高頻度の使用時でのダメージを検証しているという。
(3)では、安定した充放電が行えるかを確かめるバッテリー充放電テストや搭載されている精密部品を細かくチェックする精密部品テストなども実施している。
Jackeryではこれら製品本体の安全性を検証するテストを通して、実使用を想定した際の安全性確保に取り組んでいると話す。
Jackeryでは(3)の一つとして、自社のポータブル電源の無償回収サービスを実施している。廃棄する製品を段ボール箱に梱包して運送会社に持ち込むか、集荷してもらいJackery指定の宛先に送ればよい。送料はユーザー負担だが、面倒な手続きなどは一切ない。
その他のアフターサポートも充実させていると同社では話す。製品の保証期間は購入後1~2年が一般的だが、ユーザー登録を行うことで保証期間が1~2年間延長され、最長で5年間の長期保証を受けることができる。
また、このユーザー登録を行うと3カ月ごとに製品の各機能やバッテリー自体の残量確認に関するメールがユーザーに届く。定期的なチェックを行うことで製品の性能劣化を防ぎ、ユーザーの長期間使用をサポートするというスキームだ。
ホームページでは使用の際の注意点や製品に関する仕様、取扱説明書などを掲載し、トラブル時の対応の具体例も提示。掲載例を参照しても解決できない場合は、問い合わせフォームやメール、電話による対応も可能で、購入前の相談や購入後の使い方の説明をLINEで受けることもできる。
Jackeryの安全性においての取り組みをザッと紹介した。ポータブル電源は決して安価な商品ではない。だからこそ長期にわたって使用でき、安全な製品を選びたい。メーカーのホームページをしっかりとチェックして、間違いのないポータブル電源を選ぼう。
被災時のライフライン確保にポータブル電源が貢献
2024年1月の能登半島地震では13万6590棟の住宅が被災し、1700人を超える死傷者が出た。能登半島地震を例に挙げることなく災害は毎年日本のどこかで発生し、家庭での防災対策は喫緊の課題である。このような状況下で一般消費者はもちろん、企業や自治体からも注目されているのがポータブル電源だ。非常時の電源確保という観点からメーカー各社がポータブル電源を被災地に無償提供し、ライフラインの復旧に大きく貢献した記事を目にした向きも少なくないだろう。
ポータブル電源への注目度が高まる一方で、その安全性に懸念があるとしたのが経済産業省だ。ポータブル電源の使用による火災事故が増加していることに加え、実はポータブル電源は電気用品安全法の規制対象外となっている。
そこで同省ではポータブル電源の安全性要求事項(中間とりまとめ)を2024年3月に公開した。安全性要求事項とは、事故のリスク低減となる様々な安全対策をポータブル電源メーカーや輸入事業者、販売事業者に求めるもの。この安全対策に適用した製品は、Sマークとして認証されることが6月に決定された。
上記の内容では、あたかもポータブル電源の火災事故が多発しているように見える。しかし、増加しているのはモバイル用途のポータブルバッテリーや小型家電製品で、内蔵のリチウムイオン電池が発火・発煙したというケースだ。
とはいえ、ポータブル電源のバッテリーにはリチウムイオン電池を使用しており、ポータブルバッテリーほどではないが、実際に火災事故も報告されている。ポータブル電源にも安全性のリスク自体は存在するのだ。
そこでポータブル電源を代表するメーカーであり、日本法人設立5周年を迎えるJackery Japan(以下、Jackery)のポータブル電源における安全性担保の取り組みを聞いた。同社は2024年11月8日に、自社のポータブル電源とソーラーパネルの製品性能や安全規定、環境適応性などに関する基準を発表。国際基準の環境保護と安全規範を設定している。
Jackeryによると、製品の安全性を保証するために行っている取り組みは(1)内蔵バッテリーに対する安全機能を搭載、(2)本体に対する各種のテストを実施して検証、(3)購入後のアフターサポート、の3つに大別される。以下でそれぞれを紹介しよう。
内蔵バッテリーの劣化を抑え、安全性も高めるBMS
(1)について、Jackeryのポータブル電源はBMS(バッテリーマネージメントシステム)を搭載している。これは適切な充放電のためにバッテリーであるリチウムイオン電池自体の温度や電流、電圧を管理する機能で、ポータブル電源内部で自動的に作動する。例えばフル充電になっても充電状態のまま放置していたり、逆に電池残量を使い切ったまま放置していたり、あるいは何かの原因で大きな電流が入ってきた、耐用温度以上または以下で使用したときなど、BMSが働き、自動で電源をオフにして事故を防止するという。
独自開発で特許出願済みの自然放電技術ソリューションにより、満充電で1年間放置していても自然放電はわずか5%に抑えるとともにバッテリー寿命を30%延長するChargeshieldテクノロジーも搭載している。
バッテリー内部にある複数のセルが、均等に同じ電圧を保つように管理してリチウムイオン電池の性能劣化を防ぐバランス機能もこのBMSに含まれており、BMSに加え、充電時の電圧を制御するNCM制御機能も搭載している。
また、Jackeryのアプリでは緊急充電モードや高速充電モードのほかにバッテリー節約モードがある。このモードは充電量を100%ではなく、80%で止める。同社によると、100%のフル充電状態を維持し続けるとバッテリーが劣化する可能性があるという。そのため、充電量を100%ではなく、あえて80%にとどめてバッテリーの寿命を延ばす。特に日常的に使用しない長期保管の場合は、充電量を80%にしておくのがおすすめとのことだ。
Jackeryのポータブル電源はこのような制御・安全機能を搭載していることで、内蔵のリチウムイオン電池自体の事故リスクを低減していると同社では解説する。
さまざまな条件で安全性をテスト
前述のBMSは、あくまで内蔵リチウムイオン電池の安全性に関するものだ。製品全体については(2)を実践。533種類にも及ぶ製品テストを通して安全性を確認しているという。行われている製品テストは(1)外部からの影響に対するダメージ試験、(2)長期間使用や繰り返し使用での耐久性試験、(3)使用パーツや充放電時の安全性試験、の3つに分けられる。それぞれの代表的なテストを簡単に紹介しよう。
(1)では、製品に上から重りを落として当てる耐衝撃テストや低温、高温下での影響を確認する熱性能試験、製品を約1mの高さから3回落下させて堅牢性を確かめる落下試験、製品に上から圧力をかけて変形しないかを確認する圧力テストなどを行い、製品全体の頑丈性や堅牢性を検証している。
(2)では本体のボタンを最大5,000回押してボタン動作の異常が確かめるボタン寿命試験や電源コンセント、入出力ポートにプラグやケーブルの抜き差しを最大1万回繰り返す抜き差し試験、機械で何度も擦って本体の表示文字が消えないかを確認する耐摩耗テストなどを行い、長期間や高頻度の使用時でのダメージを検証しているという。
(3)では、安定した充放電が行えるかを確かめるバッテリー充放電テストや搭載されている精密部品を細かくチェックする精密部品テストなども実施している。
Jackeryではこれら製品本体の安全性を検証するテストを通して、実使用を想定した際の安全性確保に取り組んでいると話す。
廃棄時は無償で製品を回収
ポータブル電源はその製品特性上、廃棄時は一般ゴミとして収集できず、使用場所の自治体の収集方法に従う必要があるため、手間も費用もかかるのが実情だ。Jackeryでは(3)の一つとして、自社のポータブル電源の無償回収サービスを実施している。廃棄する製品を段ボール箱に梱包して運送会社に持ち込むか、集荷してもらいJackery指定の宛先に送ればよい。送料はユーザー負担だが、面倒な手続きなどは一切ない。
その他のアフターサポートも充実させていると同社では話す。製品の保証期間は購入後1~2年が一般的だが、ユーザー登録を行うことで保証期間が1~2年間延長され、最長で5年間の長期保証を受けることができる。
また、このユーザー登録を行うと3カ月ごとに製品の各機能やバッテリー自体の残量確認に関するメールがユーザーに届く。定期的なチェックを行うことで製品の性能劣化を防ぎ、ユーザーの長期間使用をサポートするというスキームだ。
ホームページでは使用の際の注意点や製品に関する仕様、取扱説明書などを掲載し、トラブル時の対応の具体例も提示。掲載例を参照しても解決できない場合は、問い合わせフォームやメール、電話による対応も可能で、購入前の相談や購入後の使い方の説明をLINEで受けることもできる。
Jackeryの安全性においての取り組みをザッと紹介した。ポータブル電源は決して安価な商品ではない。だからこそ長期にわたって使用でき、安全な製品を選びたい。メーカーのホームページをしっかりとチェックして、間違いのないポータブル電源を選ぼう。