全方位でオーディオ体験を塗り替える「JBL Tour Pro 3」の凄さを解説、高音質が前提の時代に求められる価値とは
成熟しつつある完全ワイヤレスイヤホン市場では、各社が展開する製品の品質が上がり、特に音質においては数年前とは比べ物にならないレベルに達している。一方、オーディオ機器である以上は「音質の良さ」が最重要であることは変わらないが、ユーザーが製品を購入する基準はさまざまな要素に広がってきている。例えば、家電量販店・ネットショップの実売データを集計するBCNの調査によると、「完全ワイヤレスイヤホンを購入する際に重視したポイント」として「装着感」と回答したのは24.4%だったが、「今後、完全ワイヤレスイヤホンを購入する際に重視するポイント」を問うと38.7%に増加。ユーザーが音質以外の部分も吟味して購入する製品を検討している状況がうかがえる。
こうしたニーズに応えるオーディオメーカーの回答として、ユーザーをうならせたのが2023年3月に発売されたハーマンインターナショナルの「JBL Tour Pro 2」だった。同社初のフラグシップモデルとして登場した同モデルは音響老舗メーカーならではの徹底した音作りだけでなく、ディスプレイ搭載の充電ケースがもたらす利便性の向上が大きな話題を呼んだ。
スマホ連携が前提となる完全ワイヤレスイヤホンでは、複雑な操作をスマホで行うものというのが常識となっていたが、JBL Tour Pro 2はケース単体でバッテリ残量のチェックやモード切り替えをできるようにするなど、目からウロコの進化で唯一無二の評価を得た。
そんなエポックメイキングな一台となったJBL Tour Pro 2に、10月3日、早くも後継機となる「JBL Tour Pro 3」が登場した。完全ワイヤレスイヤホンの全方位におけるアップデートを完了したように思えた前モデルだが、JBL Tour Pro 3はさらにその先があることを示し、想像以上の進化を遂げている。本記事では実機を触った感想をレポートし、同モデルの提示する新しい価値について解説したい。
実際に音を聴いてみると、そのクオリティの高さは楽曲ジャンルを問わず実感できた。前モデルでも完成度の高さが印象的だったが、JBL Tour Pro 3の高域へのアプローチを耳にすると、さらに伸びしろがあったのかと驚かされる。デュアルドライバーはハイエンドの有線イヤホンなどでよくみられる仕様だが、これをボディが小さい完全ワイヤレスイヤホンにおいて実現したことは長年の技術の蓄積があるJBLブランドならではといえるだろう。
音の再現性が向上した恩恵はノイズキャンセリング性能にも反映されている。より正確に逆位相の音を生成できるため、ノイキャンをONにしたときに違和感のないピュアな静寂を味わうことができた。高域・低域の双方でノイズを大幅に低減する非常に強力なノイキャン性能に仕上がっているのも相まって、コンテンツに没入できる究極の音を楽しむ環境を整えてくれる。
また、JBL Tour Pro 3では新たな試みとして、耳の形状や装着状態に合わせてノイキャンを調整するリアルタイム適応に対応。装着者にとってベストなパフォーマンスを発揮してくれるようになった。スペック主義ではなく、実際に聞こえる音にこだわった工夫も評価できる。
同じくユーザーに最適化という観点で、JBLイヤホンで初めてフォームイヤーチップを同梱したのもうれしいポイントだ。耳の中で膨らむことで密閉性を高めることができるフォームイヤーチップはノイキャンとの相性が良く、さらなる快適な遮音性と装着感をもたらしてくれる。ちなみに従来のシリコンチップも3サイズから5サイズの同梱に変更されている。
前モデルは定位感の再現が抜群な空間サウンドも秀逸だったが、JBL Tour Pro 3はそのレベルも引き上げている。チップセットの高性能化で正確性が高まったことに加え、新搭載したヘッドトラッキング機能で臨場感をさらにブースト。ライブ映像やスポーツ中継などを視聴する際に効果を発揮してくれそうだ。
使い勝手においては非常に多岐にわたる改善が施されている。たとえば、ディスプレイをタッチすると起動する待ち受け画面で左右それぞれのイヤホンと充電ケースのバッテリ残量を確認できるようになった。前モデルは一度ロックを解除する必要があったが、その工程が省略されたことでより実用性が高まった。
日本語表示に対応したことも、多くのユーザーに歓迎されそうだ。再生している楽曲のアルバム名や曲名、電話着信時の連絡先などを表示できるようになり、操作のためにスマホを取り出すというシーンはさらに減ることだろう。このほか、睡眠時に便利なサイレントナウ(BT接続を切ってノイキャンのみをオンにする機能)やイコライザー、イヤホンを探す、マルチポイントコントロールができる、コーデックが表示される、といった機能など、スマートディスプレイならではの機能は紹介しだすとキリがないほど、充実している。
JBL Tour Pro 3も当然そのあたりのケアに抜かりはない。音声をクリアに伝えられるように六つのマイクを搭載するだけでなく、AIノイズ低減アルゴリズムを採用することで、ワンランク上の快適性を目指した。具体的には一定時間ノイズが発生する乗り物や雑踏の音はもちろん、雷や人の声など突発的に発生するノイズもしっかり低減し、音声が相手によりクリアに伝えられるようになった。
また、新しい角度から完全ワイヤレスイヤホンの価値を高めてくれる要素として、触れておきたいのが拡張性だ。JBL Tour Pro 3はトランスミッター機能を新搭載し、一般的なBluetooth接続以外にオーディオトランスミッターとAURACAST(オーラキャスト)にも対応した。
あまり聞き慣れない用語かもしれないので、少し説明を加えておきたい。まずはオーディオトランスミッターについて。完全ワイヤレスイヤホンと接続したいデバイス(代表的な例がテレビ)によってはBluetooth接続で音声を送受信できない場合がある。こんなときに使われるのが、オーディオトランスミッターだ。専用デバイスは数千円するが、JBL Tour Pro 3は充電ケースにその機能を持たせた。
次にAURACAST。これは現在普及が期待されているBluetoothの新機能で、自分が所有している機器でなくともイヤホンを接続できるというものだ。たとえば、友人とスマホの動画をシェアするときにそれぞれのイヤホンに音を飛ばしたり、公共施設のディスプレイに表示されたコンテンツの音を拾ったりという使い方が期待されている。まだ対応端末は限られているが、オーディオ体験を大きく変えるソリューションでそれをいち早く取り入れた意義は大きい。
JBL Tour Pro 2が多少市場の様子を伺いながらの展開だったとすれば、JBL Tour Pro 3はその成功を受けて、アクセル全開で踏み込んできた…それくらいモデルチェンジと呼ぶには大きなアップデートが行われている。
冒頭にデータも交えて紹介したように、完全ワイヤレスイヤホンは音楽視聴だけでなく、生活の幅広いシーンで欠かせなくなり、ユーザーはさまざまな角度から製品を検証する必要が出てきた。高音質が前提の時代だからこそ、全方位でオーディオ体験を塗り替えることに挑戦しているJBL Tour Pro 3をいま聴いておくべき/触っておくべき一台として推しておきたい。(フリーライター・小倉 笑助)
高音質のニーズに応える「JBL Tour Pro」シリーズ
また、BCNの調査によると「購入した完全ワイヤレスイヤホンの価格」で3万円以上の割合は2023年に過去最高を記録。高価格帯の製品が販売を伸ばしている背景からも、高音質は前提であり、そこにさらなる付帯価値を求めるユーザーが増えていることが分かる。こうしたニーズに応えるオーディオメーカーの回答として、ユーザーをうならせたのが2023年3月に発売されたハーマンインターナショナルの「JBL Tour Pro 2」だった。同社初のフラグシップモデルとして登場した同モデルは音響老舗メーカーならではの徹底した音作りだけでなく、ディスプレイ搭載の充電ケースがもたらす利便性の向上が大きな話題を呼んだ。
スマホ連携が前提となる完全ワイヤレスイヤホンでは、複雑な操作をスマホで行うものというのが常識となっていたが、JBL Tour Pro 2はケース単体でバッテリ残量のチェックやモード切り替えをできるようにするなど、目からウロコの進化で唯一無二の評価を得た。
そんなエポックメイキングな一台となったJBL Tour Pro 2に、10月3日、早くも後継機となる「JBL Tour Pro 3」が登場した。完全ワイヤレスイヤホンの全方位におけるアップデートを完了したように思えた前モデルだが、JBL Tour Pro 3はさらにその先があることを示し、想像以上の進化を遂げている。本記事では実機を触った感想をレポートし、同モデルの提示する新しい価値について解説したい。
ハイブリッドデュアルドライバーでさらに磨かれた音質&ノイキャン
JBL Tour Pro 3の音質においてもっとも注目すべきポイントは、同モデルがJBLの完全ワイヤレスイヤホンとして初めてデュアルドライバーを採用したことだ。バランスドアーマチュアドライバーとダイナミックドライバーの2つを搭載することで、低域は力強く、高域は明瞭さの際立つメリハリのあるサウンドを実現。特性が偏っていたり、バランスはよくても物足りなさを感じたりする完全ワイヤレスイヤホンが多い中、オールマイティかつハイレベルな音に仕上げた。実際に音を聴いてみると、そのクオリティの高さは楽曲ジャンルを問わず実感できた。前モデルでも完成度の高さが印象的だったが、JBL Tour Pro 3の高域へのアプローチを耳にすると、さらに伸びしろがあったのかと驚かされる。デュアルドライバーはハイエンドの有線イヤホンなどでよくみられる仕様だが、これをボディが小さい完全ワイヤレスイヤホンにおいて実現したことは長年の技術の蓄積があるJBLブランドならではといえるだろう。
音の再現性が向上した恩恵はノイズキャンセリング性能にも反映されている。より正確に逆位相の音を生成できるため、ノイキャンをONにしたときに違和感のないピュアな静寂を味わうことができた。高域・低域の双方でノイズを大幅に低減する非常に強力なノイキャン性能に仕上がっているのも相まって、コンテンツに没入できる究極の音を楽しむ環境を整えてくれる。
また、JBL Tour Pro 3では新たな試みとして、耳の形状や装着状態に合わせてノイキャンを調整するリアルタイム適応に対応。装着者にとってベストなパフォーマンスを発揮してくれるようになった。スペック主義ではなく、実際に聞こえる音にこだわった工夫も評価できる。
同じくユーザーに最適化という観点で、JBLイヤホンで初めてフォームイヤーチップを同梱したのもうれしいポイントだ。耳の中で膨らむことで密閉性を高めることができるフォームイヤーチップはノイキャンとの相性が良く、さらなる快適な遮音性と装着感をもたらしてくれる。ちなみに従来のシリコンチップも3サイズから5サイズの同梱に変更されている。
前モデルは定位感の再現が抜群な空間サウンドも秀逸だったが、JBL Tour Pro 3はそのレベルも引き上げている。チップセットの高性能化で正確性が高まったことに加え、新搭載したヘッドトラッキング機能で臨場感をさらにブースト。ライブ映像やスポーツ中継などを視聴する際に効果を発揮してくれそうだ。
唯一無二の魅力であるスマートディスプレイはもっと頼れる存在に
JBL Tour Pro 2の唯一無二の魅力であった充電ケースに備わったスマートディスプレイは特に進化が顕著だ。こちらは前モデルが初搭載だったこともあり、多くの変更が加えられている。まずはスクリーンが前モデルから約29%大型化。表示できる情報が増え、視認性がアップ、そしてシンプルにデザインが洗練されてガジェットとしての魅力を高めている。使い勝手においては非常に多岐にわたる改善が施されている。たとえば、ディスプレイをタッチすると起動する待ち受け画面で左右それぞれのイヤホンと充電ケースのバッテリ残量を確認できるようになった。前モデルは一度ロックを解除する必要があったが、その工程が省略されたことでより実用性が高まった。
日本語表示に対応したことも、多くのユーザーに歓迎されそうだ。再生している楽曲のアルバム名や曲名、電話着信時の連絡先などを表示できるようになり、操作のためにスマホを取り出すというシーンはさらに減ることだろう。このほか、睡眠時に便利なサイレントナウ(BT接続を切ってノイキャンのみをオンにする機能)やイコライザー、イヤホンを探す、マルチポイントコントロールができる、コーデックが表示される、といった機能など、スマートディスプレイならではの機能は紹介しだすとキリがないほど、充実している。
音楽視聴以外のシーンでも体験価値がアップ
いまや完全ワイヤレスイヤホンの使い方は「家で/外で音楽を聴く」というだけにとどまらない。通話やオンライン会議においても、完全ワイヤレスイヤホンを利用するケースは増えており、それに応じた性能も重視されるようになっている。JBL Tour Pro 3も当然そのあたりのケアに抜かりはない。音声をクリアに伝えられるように六つのマイクを搭載するだけでなく、AIノイズ低減アルゴリズムを採用することで、ワンランク上の快適性を目指した。具体的には一定時間ノイズが発生する乗り物や雑踏の音はもちろん、雷や人の声など突発的に発生するノイズもしっかり低減し、音声が相手によりクリアに伝えられるようになった。
また、新しい角度から完全ワイヤレスイヤホンの価値を高めてくれる要素として、触れておきたいのが拡張性だ。JBL Tour Pro 3はトランスミッター機能を新搭載し、一般的なBluetooth接続以外にオーディオトランスミッターとAURACAST(オーラキャスト)にも対応した。
あまり聞き慣れない用語かもしれないので、少し説明を加えておきたい。まずはオーディオトランスミッターについて。完全ワイヤレスイヤホンと接続したいデバイス(代表的な例がテレビ)によってはBluetooth接続で音声を送受信できない場合がある。こんなときに使われるのが、オーディオトランスミッターだ。専用デバイスは数千円するが、JBL Tour Pro 3は充電ケースにその機能を持たせた。
次にAURACAST。これは現在普及が期待されているBluetoothの新機能で、自分が所有している機器でなくともイヤホンを接続できるというものだ。たとえば、友人とスマホの動画をシェアするときにそれぞれのイヤホンに音を飛ばしたり、公共施設のディスプレイに表示されたコンテンツの音を拾ったりという使い方が期待されている。まだ対応端末は限られているが、オーディオ体験を大きく変えるソリューションでそれをいち早く取り入れた意義は大きい。
高音質が前提の時代に求められる価値とは
JBL Tour Pro 2は完全ワイヤレスイヤホンがまだ新しいカテゴリで進化の余地はあるということを感じさせてくれたセンセーショナルなモデルだった。それではJBL Tour Pro 3はどのようなモデルか。筆者は前モデルが提示した進化がユーザーにもたらす価値を最大化したモデルという印象を持った。JBL Tour Pro 2が多少市場の様子を伺いながらの展開だったとすれば、JBL Tour Pro 3はその成功を受けて、アクセル全開で踏み込んできた…それくらいモデルチェンジと呼ぶには大きなアップデートが行われている。
冒頭にデータも交えて紹介したように、完全ワイヤレスイヤホンは音楽視聴だけでなく、生活の幅広いシーンで欠かせなくなり、ユーザーはさまざまな角度から製品を検証する必要が出てきた。高音質が前提の時代だからこそ、全方位でオーディオ体験を塗り替えることに挑戦しているJBL Tour Pro 3をいま聴いておくべき/触っておくべき一台として推しておきたい。(フリーライター・小倉 笑助)