【マーケティング考_3】2024年8月22日にGoogleから「Pixel 9」シリーズが発売になった。Pixel 7シリーズの時、最安のモデルは10万円を下回る価格設定だったが、23年発売のPixel 8シリーズからは全てが10万円を超える。また24年9月20日にアップルの「iPhone 16」シリーズも発売。iPhoneは、22年発売の14シリーズから10万円を超えている。一方、数万円で購入できるスマートフォンも存在する。
機能が向上し、価格が上がるというのは仕方のないことだが、すべての機能を使いこなしているのだろうか。使いこなせない機能が搭載され、価格が上がるのは、消費者の買い替え意欲が削がれる一因となるだろう。
今回は、スマートフォンを買い替える理由や平均使用年数がどのように変化しているのかを探っていく。
内閣府の消費動向調査の結果を使って、携帯電話の買い替え理由をみていく。なお、消費動向調査においては、継続的な調査であるため、携帯電話と表記されているが、ほぼスマートフォンと考えて良いだろう。
まず、14年で最も高かった買い替え理由は、「上位品目」への買い替えの41.1%、次いで「故障」が32.4%だった。携帯電話は引っ越しをするたびに買い替えるものではないため、「住居変更」の比率はほぼない。「その他」は26.2%という構成になっている。
ここで着目したいのが、上位品目だ。その名称の通り、以前使用していた端末よりも上位モデル(ハイスペックの製品)に買い替えた、というのがこれにあたる。年を追うごとにこの比率は減少していく。一因としては、利用者が新しく発売になるスマートフォンをオーバースペックだと感じていることの裏返しではないだろうか。
一方、故障とその他の合計比率は、年々増加している。バッテリの減りが早くなったり、アプリなどの動作が鈍化したことで、買い替えをしていることが考えられる。
次に、普及率と平均使用年数の関係をみる。14年の普及率は45.2%と半数に届いていなかったが、年を追うごとに比率は上昇。19年には7割を超え、24年にはついに9割に到達した。
しかし、普及率はコンスタントに増加していたわけではない。22年まで年に3~7ポイント増で推移していた。しかし、23年は前年から1.3ポイント増、24年は0.8ポイント増と、急速に鈍化しているのが明らかだ。
では平均使用年数に目を向けると、14~17年にかけて延びていたが、その後は4.3~4.6年の間で推移している。20年に使用年数が4.8年に延びたのは、コロナ禍での緊急事態宣言による人流抑制や営業している店舗やショップが少なかったことも影響している。
現状、キャリアが2~3年ごとに本体を回収するプランを展開しているため、平均すると使用年数は4年ほどになる。しかし、こうしたプランがなくなった場合、本体価格の上昇を考慮すると、今後は平均使用年数が格段に延びていくことは想像に難くない。
スマートフォンの利用者すべてが、全機能を使いこなしていることはないだろう。とはいえ、フラッグシップモデルをなくせということではない。そこそこのスペックで、そこそこの価格の製品が出てくれば、買い替え需要を喚起することはできるのではないか。
最近、中華系メーカーからほどほどのスペックにも関わらず、格安の端末が出てきており、需要を掘り起こすことに寄与している。しかし、価格破壊を促進してしまうことも否めないため、価格競争に陥ったメーカーは体力勝負となる。スマートフォン市場は新規参入の障壁が高いこともあり、寡占化は進んで行くだろう。(BCN総研・森英二)
機能が向上し、価格が上がるというのは仕方のないことだが、すべての機能を使いこなしているのだろうか。使いこなせない機能が搭載され、価格が上がるのは、消費者の買い替え意欲が削がれる一因となるだろう。
今回は、スマートフォンを買い替える理由や平均使用年数がどのように変化しているのかを探っていく。
買い替え理由は「上位品目」から「故障」へとシフト
内閣府の消費動向調査の結果を使って、携帯電話の買い替え理由をみていく。なお、消費動向調査においては、継続的な調査であるため、携帯電話と表記されているが、ほぼスマートフォンと考えて良いだろう。
まず、14年で最も高かった買い替え理由は、「上位品目」への買い替えの41.1%、次いで「故障」が32.4%だった。携帯電話は引っ越しをするたびに買い替えるものではないため、「住居変更」の比率はほぼない。「その他」は26.2%という構成になっている。
ここで着目したいのが、上位品目だ。その名称の通り、以前使用していた端末よりも上位モデル(ハイスペックの製品)に買い替えた、というのがこれにあたる。年を追うごとにこの比率は減少していく。一因としては、利用者が新しく発売になるスマートフォンをオーバースペックだと感じていることの裏返しではないだろうか。
一方、故障とその他の合計比率は、年々増加している。バッテリの減りが早くなったり、アプリなどの動作が鈍化したことで、買い替えをしていることが考えられる。
平均使用年数と普及率は関連しているのか
次に、普及率と平均使用年数の関係をみる。14年の普及率は45.2%と半数に届いていなかったが、年を追うごとに比率は上昇。19年には7割を超え、24年にはついに9割に到達した。
しかし、普及率はコンスタントに増加していたわけではない。22年まで年に3~7ポイント増で推移していた。しかし、23年は前年から1.3ポイント増、24年は0.8ポイント増と、急速に鈍化しているのが明らかだ。
では平均使用年数に目を向けると、14~17年にかけて延びていたが、その後は4.3~4.6年の間で推移している。20年に使用年数が4.8年に延びたのは、コロナ禍での緊急事態宣言による人流抑制や営業している店舗やショップが少なかったことも影響している。
現状、キャリアが2~3年ごとに本体を回収するプランを展開しているため、平均すると使用年数は4年ほどになる。しかし、こうしたプランがなくなった場合、本体価格の上昇を考慮すると、今後は平均使用年数が格段に延びていくことは想像に難くない。
スマートフォンの利用者すべてが、全機能を使いこなしていることはないだろう。とはいえ、フラッグシップモデルをなくせということではない。そこそこのスペックで、そこそこの価格の製品が出てくれば、買い替え需要を喚起することはできるのではないか。
最近、中華系メーカーからほどほどのスペックにも関わらず、格安の端末が出てきており、需要を掘り起こすことに寄与している。しかし、価格破壊を促進してしまうことも否めないため、価格競争に陥ったメーカーは体力勝負となる。スマートフォン市場は新規参入の障壁が高いこともあり、寡占化は進んで行くだろう。(BCN総研・森英二)