【人との関係性を変えるコミュニケーションとは?・5】「コーチング」という言葉を、皆さんは聞いたことがありますか。日本では、四半世紀前の1997 年にプロフェッショナル・コーチの確立とコーチングスキルの普及が始まり、コーチ・エィ(当時はコーチ・トゥエンティワン)が日本初のコーチ養成機関として、コーチングを体系的かつ体験的に学ぶトレーニングプログラムの提供を開始しました。昨今では、多種多様な分野でコーチングが注目され、その活用の場や形態は年々広がり続けています。皆さんの中には、コーチングに関する書籍を読んだり、トレーニングを受けたりした方もいらっしゃるかもしれません。なぜコーチングは今、注目を浴びているのでしょうか。そして、コーチングとは改めて何でしょうか。
このように、複雑な環境下で、多様な価値観を持つ組織をリードしていくには、長く用いられてきた「指示・命令」や「ティーチング(自分が持っている知識、技術、経験などを相手に伝えること)」などの、一方通行なコミュニケーションだけでは不十分です。
リーダーには、1人1人のパフォーマンスを上げていくため、部下が持っている個々の価値観や能力に焦点を当てながら、それぞれが主体的な行動や思考を促すコーチングやコーチングマネジメントのアプローチが求められています。実際、成果を上げているリーダーは、ティーチングやコーチングなど、さまざまなコミュニケーションを効果的に使い分け、時に組み合わせて使うという試みをしています。
一方、コーチングは、何かを教えたり、アドバイスしたりするわけではありません。なお、コーチ・エィでは「コーチングとは、対話を通して、クライアント(コーチングを受ける人)の目標達成に向けた能力、リソース、可能性を最大化するプロセスである」と定義しています。もう少し分かりやすく説明すると、コーチングをする人は相手に「達成したいことを明確にする」「視点を増やす」「考え方や行動の選択肢を増やす」「目標達成に必要な行動を促進する」ための効果的な対話をつくりだす人といえます。
コーチングをする人の大きな役割は、コーチングを受ける人に多くの質問を投げかけ、コミュニケーションを通して自発的な行動をもたらすことです。あくまでも、課題を解決し、行動を選ぶのはコーチングを受ける本人です。
もちろん、このようなコミュニケーションを生み出すためには、相手がより自由に発想し、アイディアを具体的にするための「双方向なコミュニケーション」をつくり出す必要があります。
相手が自由に発想し、アイディアを具体的にできるような「双方向なコミュニケーション」ができているでしょうか。そのために、何ができるでしょうか。そのために、自分が変わるべきことはあるでしょうか。(コーチ・エィ・片桐多佳子)
■Profile
片桐多佳子
コーチ・エィ 執行役員
東北大学経済学部卒。コーチ・エィでは経営層を対象としたエグゼクティブ・コーチングを行い、200人以上のビジネスリーダーへのコーチング実績を持つ。「組織インパクトを出す」コーチングにこだわり、組織風土変革、業績向上、部門間連携強化などのニーズに対する、エグゼクティブ・コーチングやコーチングプロジェクトの設計、マネジメントを多数手がける。組織変革のプロセスを企画から成果創出までトータルに支援している。2016年より執行役員。国際コーチング連盟プロフェッショナル認定コーチ、生涯学習開発財団認定マスターコーチ。
ティーチングだけでは、もう限界?
価値観は、どんどん多様化しています。仕事に対する考え方も十人十色ですし、「誰にでも当てはまる」能力開発の形態も通用しなくなっています。さらには、ビジネス環境も複雑化し、経験豊富な人でも簡単に「正解」を出しづらいシチュエーションに多々遭遇します。このように、複雑な環境下で、多様な価値観を持つ組織をリードしていくには、長く用いられてきた「指示・命令」や「ティーチング(自分が持っている知識、技術、経験などを相手に伝えること)」などの、一方通行なコミュニケーションだけでは不十分です。
リーダーには、1人1人のパフォーマンスを上げていくため、部下が持っている個々の価値観や能力に焦点を当てながら、それぞれが主体的な行動や思考を促すコーチングやコーチングマネジメントのアプローチが求められています。実際、成果を上げているリーダーは、ティーチングやコーチングなど、さまざまなコミュニケーションを効果的に使い分け、時に組み合わせて使うという試みをしています。
成果を出すリーダーは「コーチング」と「ティーチング」を使い分ける
例えばティーチングは、部下が初めての仕事にチャレンジする際に基本的な手順や進め方を身につけておくべきときや、ルールやマナーなど頭に入れておくべきときなどに有効です。ティーチングによって、その仕事に関する知識やスキルがないメンバーを一定水準のレベルまで育成できます。一方、コーチングは、何かを教えたり、アドバイスしたりするわけではありません。なお、コーチ・エィでは「コーチングとは、対話を通して、クライアント(コーチングを受ける人)の目標達成に向けた能力、リソース、可能性を最大化するプロセスである」と定義しています。もう少し分かりやすく説明すると、コーチングをする人は相手に「達成したいことを明確にする」「視点を増やす」「考え方や行動の選択肢を増やす」「目標達成に必要な行動を促進する」ための効果的な対話をつくりだす人といえます。
コーチングをする人の大きな役割は、コーチングを受ける人に多くの質問を投げかけ、コミュニケーションを通して自発的な行動をもたらすことです。あくまでも、課題を解決し、行動を選ぶのはコーチングを受ける本人です。
もちろん、このようなコミュニケーションを生み出すためには、相手がより自由に発想し、アイディアを具体的にするための「双方向なコミュニケーション」をつくり出す必要があります。
「コーチングで相手を変える」ではダメ
皆さんの中には、「コーチングを通じて、自分のチームメンバーとコミュニケーションしてみよう」と思った人もいるでしょう。そのとき、心に留めておくことがあります。それは、「コーチングで相手を変える」という意識ではなく、あくまでも「一緒に自由な発想で考えてみる」という心構えでコミュニケーションするということです。相手が自由に発想し、アイディアを具体的にできるような「双方向なコミュニケーション」ができているでしょうか。そのために、何ができるでしょうか。そのために、自分が変わるべきことはあるでしょうか。(コーチ・エィ・片桐多佳子)
■Profile
片桐多佳子
コーチ・エィ 執行役員
東北大学経済学部卒。コーチ・エィでは経営層を対象としたエグゼクティブ・コーチングを行い、200人以上のビジネスリーダーへのコーチング実績を持つ。「組織インパクトを出す」コーチングにこだわり、組織風土変革、業績向上、部門間連携強化などのニーズに対する、エグゼクティブ・コーチングやコーチングプロジェクトの設計、マネジメントを多数手がける。組織変革のプロセスを企画から成果創出までトータルに支援している。2016年より執行役員。国際コーチング連盟プロフェッショナル認定コーチ、生涯学習開発財団認定マスターコーチ。