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ミステリー要素が人気の『彼は「これ」は復讐ではない、と言った』

時事ネタ

2024/09/05 16:00

 「復讐コミック」を推しているのが見て取れるコミックシーモアだが、その勢いは止まらないようだ。2024年5月31日から6月27日まで「この復讐劇に耐えられるか『レンタル・マーダー~復讐のプロ、お貸しします~』ほか先行配信フェア」。6月28日から7月25日まで「下剋上による復讐劇!!『2周目高校生の復讐日記』ほか先行配信フェア」。さらに、7月26日から8月29日まで、『彼は「これ」は復讐ではない、と言った』など先行配信フェアが開催されることとなった。間断なく続くこの一連の復讐コミックフェア、主軸となるのはコミックシーモアの独自レーベルである「シーモアコミックス」だ。


<前回記事>
この夏『復讐コミック』が大ブームになる!?

高いランキングを維持した人気作品

 前回、この全てのフェアで取り上げられている『レンタル・マーダー~復讐のプロ、お貸しします~』について解説したが、今回も同じくシーモアコミックスから配信されている『復讐』を題材にした作品『彼は「これ」は復讐ではない、と言った』を解説する。

 『レンタル・マーダー~復讐のプロ、お貸しします~』よりも少し遅れて23年7月28日に配信を開始しており、シーモアコミックスの青年マンガ部門では23年に開始して依然配信が続いている2作品のうちの一つで、2番目の古参である。なおかつ、シーモアコミックスの青年マンガ部門において『レンタル・マーダー~復讐のプロ、お貸しします~』とほぼ同等と言っていい程の高ランキングを維持した人気作品だ。
 
『彼は「これ」は復讐ではない、と言った』は
高いランキングを維持

 もちろん、ただ配信が続いているだけではなくランキングでも上位を維持している。先述した二つのフェア期間中のランキングを確認してみる。
 
「この復讐劇に耐えられるか『レンタル・マーダー~復讐のプロ、お貸しします~』ほか先行配信フェア」
(2024年5月31日~6月27日)
 
「下剋上による復讐劇!!『2周目高校生の復讐日記』ほか先行配信フェア」
(6月28日~7月25日)

 それぞれ期間中に「青年マンガ全て」でランクインした日数の割合である。200位以下の圏外になった日もあるが、3万件を超える作品の中でこれだけ上位を維持しているのだ。

 さらに、「青年マンガのミステリー・サスペンス部門」だけに絞ってランキングを見てみよう。こちらは前回取り上げた『レンタル・マーダー~復讐のプロ、お貸しします~』と比較してみる。
 
青年マンガ ミステリー・サスペンス ランキング

 赤が『彼は「これ」は復讐ではない、と言った』、緑が『レンタル・マーダー~復讐のプロ、お貸しします~』のランク推移だ。
『レンタル・マーダー~復讐のプロ、お貸しします~』は、過去に総合ランキングでもランクインする率が高い作品である。当然、ミステリー・サスペンス部門でも高い順位を誇るが、それに引けを取らない順位で『彼は「これ」は復讐ではない、と言った』もランクインしている。二つのフェア期間中、ほぼ30位以上を果たし、『レンタル・マーダー~復讐のプロ、お貸しします~』を抑えて1位を獲得した日も複数ある。

 ほぼ同時期に始まり、同じレーベル、同じジャンルで同じように人気を維持し続ける。やはりシーモアコミックスで先を見据えた作品提供を行った結果が今、結実しているということだろう。

 そんなフェアの表題作にもなる人気の『彼は「これ」は復讐ではない、と言った』。魅力はどこにあるのか、あらすじから紹介していく。
 
(C)高井唯人

あらすじ

 棋士を目指す高校生がいた。名は小嶋龍吉。「重要ノート」と銘打ったノートに棋譜を書き、プロ目前まで勝ち進んでいた龍吉だったが、6人のいじめグループに目を付けられてしまう。結果、濡れ衣を着せられ将棋連盟を除名。学校で執拗にいじめられる日々が始まり、いつしか重要ノートはいじめの内容が書かれた日記へと変貌する。
 
(C)高井唯人
 
(C)高井唯人

 それから数年。その重要ノートを手に持ち、覆面を被った人物が行動を開始する。
 
(C)高井唯人

 最初のターゲットとなるのは、人当たりを良く見せ上司の信任も厚い会社員として生活していた男、渡辺和馬。

 ある日、裏で横領などを働いていたことが密告され、深酒をしたところ薬を盛られて意識を失い、手足を固定された薄暗い密室で目を覚ます。目の前には、重要ノートを持った覆面の人物。
 
(C)高井唯人

 覆面の人物はノートに書かれたいじめの内容を読み上げ、その内容とノートに覚えのあった和馬は「お前、小嶋龍吉か!?」と問いただすが、覆面の人物は無言。

 そう。この覆面の人物、一切が謎のまま物語が進むのだ。言葉遣いや背広を着ていること、タイトルに『彼』とあるから男性と想像はできる。

 しかし「龍吉か!?」の問いに答えず、誰なのかは分からない。いじめを行った連中を「許さない」と言い、「ノートの6人全員に執行する!」と宣言するも「復讐」とはいわない。そして、この作品のタイトルは『彼は「これ」は復讐ではない、と言った』。とにかく主人公側の情報については謎、謎、謎のまま物語が進んでいくのだ。

 それでいて、いじめグループに対して小嶋龍吉の存在を隠そうとしない。和馬は後日遺体で発見されるが、龍吉へのイジメと同じことをした痕跡が残っており他の5人は犯人が龍吉なのではと疑う。
 
(C)高井唯人

 さらに、遺体が発見されたということは事件である。警察も介入してくる。一人の刑事が犯人像に迫っていく。
 
(C)高井唯人

 いじめられた主人公の復讐劇というだけではない。誰が、何の目的でいじめグループに「執行」していくのかという、読者も一緒になって推理していくミステリーの要素が色濃いのだ。これが作品の人気につながっているのだろう。

 どのように執行されていくのか。復讐ではなく何なのか。覆面の人物の正体は。物語はどんな結末を迎えるのだろう。この先も目が離せない。(BCN+R コミックランキングリサーチ部)
 
(C)高井唯人

作品情報

https://www.cmoa.jp/title/257777/
『彼は「これ」は復讐ではない、と言った』

ジャンル:青年マンガ
出版社:シーモアコミックス
雑誌・レーベル:シーモアコミックス
配信開始日:2023年7月28日
15巻配信中

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BCN+R コミックランキングリサーチ部
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