外食業界はコロナでどう変わったのか、そしてどうなる?

暮らし

2024/08/27 18:00

【外食業界のリアル・12】 コロナによって外食業界は変わったといわれることが多いが、正確には現在進行形で変わり続けざるを得なくなったという表現の方が適切だと思う。今回はあくまでベンダー目線ではあるが、外食業界がコロナ禍で何が起き、どのように変わってきたのか、そして今はどうなっているのかを語りたいと思う。

コロナの始まり

 世界を賑わせていたコロナだが、最初はすぐに鎮静化されるという読みはあった。ところが、現実はそううまくはいかず世界的なパンデミックとなり、2020年4月7日には「緊急事態宣言」が発せられた。コロナ自体についての詳細は他に委ねるが、その後にさまざまな規制や自粛などが課せられることとなり、外食業界は「飲食店の来店予約が制限されることとなって、これまでと同様の営業ができなくなった」のである。

 多くは来店客によって成り立っており、飲食店の売り上げは一気に落ちた。そのため、店舗外での需要を喚起しようとテイクアウトやデリバリーが拡大した。その後、飲食店の経営が立ち行かなくなるケースも増え始め、コロナ給付金が始まった。それによって規模の小さい店舗は守られることとなったが、キャパの広い大型の店舗は固定費も高く、給付金だけではとても維持できるわけではなかった。

 またコロナ禍での店舗運営では厳しいルールが課せられ、人との非接触が推奨され、テーブルなどに仕切りが設けられるとともにモバイルオーダーの導入が増えた。一方、飲食店で働いていた従業員は店が休業を続けることで収入が減ってしまったほか、先行きの不安などによって、他の業界へと人材が流れてしまった。

 外食業界は、コロナによって奇しくも食べるというスタイルが多様化したといえる。従来は飲食店に訪れて食べるということが普通だったが、テイクアウトやデリバリーを利用して家で食べたり、スーパーや専門店で総菜を買ったりといった選択肢が増えた。もちろんコロナ前からテイクアウト・デリバリーは存在していたが、需要は限定的であったともいえる。飲食店の競合が飲食店だけではなくなったのである。

 そして、従来と同じやり方をしていては生き残れないという状況下で外食業界のDX化が推し進められることとなったわけである。

コロナ明け直後

 コロナの波は幾度となく迎えることとなったが、外食業界にとってターニングポイントとなったのはコロナが5類に移行された23年5月8日となる。今まで表立って宴会をすることが敬遠されていた状況がなくなり、国内旅行やインバウンド含めて飲食店は活気を取り戻し始めた。だが、コロナ禍で拡大した食のスタイルは完全に元へと戻るわけではなく、そのまま残る形となり、来店予約とテイクアウト/デリバリーは併用していくが求められた。

 一方、食材原価や人件費は高騰を続けて、コロナ給付金も打ち切られたことで、外食業界では繁盛店と経営が苦しい店とが2極化する事態となった。外食業界から離れた人手は戻ることなく、人手不足の中で店舗運営をどのようにしていくのかが問われることとなった。その過程で集客に強い看板を活用し、安定した仕入れが可能となるFCへと舵を取る店も増えたように思う。

 チェーン店は自分らで店舗を構えると多大な初期費用がかかり、スピード感をもって店舗を増やすことは難しい。コロナ明けに店舗を一気に拡大しているチェーン店はFCを活用しながら勢いを増しているのである。

コロナの残したものとこれからについて

 コロナ明けから1年以上が経ったわけであるが、外食業界では「人手不足」が解消される見通しが立ってはいない。少ない人でどのように店舗を運用しているのかを突き詰め、さまざまなソリューションを導入したほか、どうしても足りない人手についてはスキマバイトを活用することが主流となりつつある。もちろん専門的な知識や経験が問われるコンサルや集客などについては、アウトソーシング化が進んでおり、拡大し続けるインバウンド需要については組織的な対応が本格化している。

 食のスタイルが多様化したことに伴って飲食店自体も多様性が問われ始めているように感じる。いわゆる総合居酒屋と呼ばれる何でも食べられる店よりは、専門性を持って食や空間を提供することが好まれる傾向が強まっている。つまり、食べることとはいったい何なのか、その店で食べる魅力は何なのか、をこれほどまでに問われる時代はないように思う。もちろんお店の在り方というのは正解が一つではない。外食企業自体が一律ではなく、どれだけ個性を出していけるのかが問われているのではないだろうか。

終わりに

 今回は、あくまでベンダーとしての立場からコロナとともにどのように変遷してきたのかをまとめた。先日、「熱狂宣言2」(著:小松成美)という書籍が発売された。外食業界を代表する企業が、未曽有の危機の中でどのように闘ったのかを詳細に描かれたノンフィクションだ。企業側の視点でここまで書かれたものは少ないので、ぜひ読んでみてはいかがだろうか。(イデア・レコード・左川裕規)