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「六郷BASE」、町工場が集積する東京・大田区の六郷エリアで新しいビジネスの挑戦を支援

暮らし

2024/08/23 12:30

 東京都企業立地相談センターは8月20日に、大田区南六郷創業支援施設「六郷BASE」(東京都大田区)を運営している南六郷創業支援施設運営共同事業体に対して行った取材内容を、東京都企業立地相談センターホームページにて公開した。

「六郷BASE」のコミュニティマネージャーである
太田尚緒美氏(左)と角谷恵氏

ハードとソフトの両輪で起業家の創業初期をきめ細かくサポート

 町工場が集積する南六郷エリアに位置する「六郷BASE」は、新しいビジネスに挑戦する起業家や起業希望者に、ワークスペースやノウハウ、マッチングの機会を提供するインキュベーション施設。

 今回、行われた南六郷創業支援施設運営共同事業体への取材では、「六郷BASE」開設の経緯やその特徴、大田区で起業するメリットについて、コミュニティマネージャーの太田尚緒美氏と角谷恵氏に聞いている。

 太田氏によれば、ものづくり企業が多い大田区では、他の自治体に先駆けて20年以上前から創業支援施設を設けており、前身の施設が老朽化で建て替えとなったことから、その機能と歴史を引き継ぐべく2021年10月に「六郷BASE」がオープンした。その名称には、新しいビジネスに挑戦する起業家たちの拠点(ベース)という意味が込められているという。

 同施設は、会員以外も使用できるオープンスペースとセミナールーム、試作室を備えた1階、入居会員のためのワークスペースとなる2階・3階の3フロアで構成されている。
 
「六郷BASE」1階に設けられている試作室の様子。
専門の指導員が常駐し、個人なら1時間あたり1000円で利用できる

 角谷氏によれば、試作室には3Dプリンタやレーザーカッターなどが設置されており、同じ建物内でアイデアを形にしたり、プロトタイプを製作したりできるとのことなので、ものづくり関連の起業家には特に便利な施設といえる。利用料金もリーズナブルで、入居会員以外のドロップイン利用も可能であり、角谷氏は「ドロップインの方にも試作室に来てもらうことで、ものづくりに興味のある人のすそ野を広げたいと考えています」と語っている。
 
コワーキングスペース(上)の利用料金は月額8000円、
ミーティングルームは6室を用意しディプレイを用いたオンライン会議にも対応する

 2階・3階に設けられている入居会員のためのワークスペースは、フリーアドレスのコワーキングスペース、半個室型のシェアードオフィス、個室のオフィスの3タイプで構成され、いずれも24時間365日利用できる。オフィスとシェアードオフィスの会員は毎月、コワーキングスペースの会員は3カ月に1回、インキュベーションマネージャーとの面談を行っている。太田氏によれば起業前後の疑問や悩みに寄り添い、定期的に進捗確認を行うことで、限られた期間での事業成長をサポートしているとのことで、「人と人をつなぐ交流支援を行うコミュニティマネージャーを配置していることも、当施設の大きな特徴」(太田氏)だという。

 「六郷BASE」には、総勢5名のコミュニティマネージャーが在籍し、常時2名以上が配置されているとのことで、交流促進のための具体的な取り組みとしては、「入居者同士や来館者と入居者が交流するきっかけづくりや、企業や経営に役立つセミナーの開催、入居者が外部にPRする機会を作っていくのも私たちの役割です。日頃からコミュニケーションを大切にし、新旧の入居者が交流する気軽なお茶会も定期的に開催」(角谷氏)しているそう。

 入居者のためのコミュニティはもちろん、1階のオープンスペースを起点とした創業準備者のためのコミュニティや、試作室の活用促進を兼ねたものづくりコミュニティも提供しており、「『hajimari BASE(はじまりベース)』は、起業に興味がある方や準備をしている方を対象にモチベーションのアップや維持に役立ててもらおうとスタートしました。参加者の得意分野で勉強会を開き、お互いにナレッジをシェアして切磋琢磨するという展開も。参加者は30~40代が中心。女性も多く、なかにはお子さん連れの方もいます」(太田氏)という。

 さらに角谷氏によれば、2022年からはものづくり関連で起業したい人を集めて行う連続講座「ものづくりCAMP」を開催しているそうで、全5回の講座を通してアイデアをブラッシュアップしていき、最後に他の受講者の前でプレゼンテーションを実施するほか、試作室を使ってプロトタイプも製作するとのこと。参加者と入居者の連携が生まれ、実際に大田区内で起業をした人もいるという。
 
セミナールームでは入居者が登壇するイベントや
入居者同士の交流会なども行われている

 大田区・東京都立地のメリットとして、角谷氏は「ものづくりの技術という大田区が持つリソース」を挙げる。「六郷BASE」入居者の業種は多様ながら製造業と何らかの接点や親和性を持っている事業が少なくないため、内外のイベントを通して区内の企業とつながる機会も多く、大田区のリソースをフル活用できるという。

 太田氏によれば、東京は「展示会やイベントの数が圧倒的に多い」こともメリットであり、「六郷BASE」では入居者に展示会への合同出展参加を推進しており、事務手続きや費用を「六郷BASE」側が負担する。搬入搬出やブース設営などもサポートしているそうで、大田区内だけでなく「東京ビッグサイト」のような大きな会場での展示会にも仲間と一緒に出展が可能だという。
 
「六郷BASE」外観