【人との関係性を変えるコミュニケーションとは?・4】前回の「『タイプ分け』でコミュニケーションタイプを知る(前編)」では、コーチ・エィが独自に開発した「タイプ分け」(著作権はコーチ・エィに帰属)という考え方と、四つのコミュニケーションタイプについて簡単にご紹介しました。今回の後編では、タイプ分けをふだんのコミュニケーションに生かせるよう、それぞれのタイプの特徴と関わるときのヒントをご紹介します。
<前回記事>
「タイプ分け」でコミュニケーションタイプを知る(前編)、あの人とのコミュニケーションが上手くいかないのはなぜ?
・結論から単刀直入に話す
・何かについて知りたいときは、質問ではなく、「~について教えてほしい」と教えを請う表現をつかう
・提案するときには選択肢を複数示し、相手が判断(選択)できるようにする
・何かを任せるときは口出しをせず、全面的に任せる
自分の影響力を周りの人からの反応で判断しているため、承認を代表とする、こまめな働きかけがないと、一気にやる気を失います。常に行動的でありたいので、自由度が低かったり、詳細さを求められたりすると本領を発揮しません。
一方で、コントローラーと違って、結果だけではなくプロセスも見ていてほしいと思うので、こまめな承認が必要です。
・話を聞くときは相づちを打つなどして明確に反応する
・質問は間口の広い質問をして自由に話をさせる
・たくさんほめる(特に彼らの影響力をほめると効果的)
・彼らのオリジナルなアイデアに耳を傾ける
また、サポーターとのコミュニケーションでは、言葉だけでなく、ノンバーバル(表情など)な部分にも注意する必要があります。
・穏やかであたたかみのある対応を心がける
・些細なことに対してもねぎらいの言葉をかける
・話を聞くときは忙しくても手を休めしっかりと聞く
・リクエストをするときはYESと言いがちなことを念頭に、無理がないかなど何回か確認をする
業務を進める際は、考える時間も十分に提供し、アナライザーのペースで進められる環境を整えることが重要です。それによって、粘り強く最後までやり遂げることができます。
・質問をするときは具体的に答えやすい間口の狭い質問をする
・承認をするときには相手の専門性を認知するような具体的な承認の言葉を使う
・質問の返答はじっくりと待つ(彼らは正しい答えを出すために熟考してから答えます)
・アナライザーに何かを任せるときは、それをする意味、ゴールまでのステップ、リスクなどを伝える
タイプ分けは、あくまでも「テーラーメイド」なコミュニケーションを行うため、相手に興味関心を寄せ、観察し、理解するための一つのツールです。タイプ分けを利用するときには次の三つのポイントを理解しておく必要があります。
(1)決めつけに使わない
(2)それぞれのタイプに優劣はない
(3)人格や人との関わりを限定するものではない
タイプ分けの目的は、あくまでもどのタイプの傾向が強いかを理解することであり、その人がどのタイプか決めることではありません。そもそも、人をたった四つのタイプに分けることなどできません。
ほぼ100%コントローラーの人もいれば、二つのタイプをあわせもつ人、また、立場や役割、場、さらには相手によって表出する出るタイプが違うというケースも珍しくありません。ですから、単純に「あの人は●●タイプだから」と決めつけてしまうことは危険です。また、タイプによる優劣もありません。
こうした点を忘れてしまうと、本来コミュニケーションの可能性を高めるはずのタイプ分けが、決めつけや関わり方の限定につながってしまうので、注意が必要です。
タイプ分けは、コミュニケーションの新たな可能性をひらく「鍵」のようなものということもできるかもしれません。タイプ分けを通して、自分をよく知り、相手を理解できていれば、違いを受け止め、戦略的に周囲と関わるための余裕をもつことができるようになります。
今回ご紹介したのは、タイプ分け活用のほんの一部です。興味をもたれた方は、ぜひ、書籍などを通してさらにタイプ分け活用の可能性を探求してください。(コーチ・エィ・片桐多佳子)
■Profile
片桐多佳子
コーチ・エィ 執行役員
東北大学経済学部卒。コーチ・エィでは経営層を対象としたエグゼクティブ・コーチングを行い、200人以上のビジネスリーダーへのコーチング実績を持つ。「組織インパクトを出す」コーチングにこだわり、組織風土変革、業績向上、部門間連携強化などのニーズに対する、エグゼクティブ・コーチングやコーチングプロジェクトの設計、マネジメントを多数手がける。組織変革のプロセスを企画から成果創出までトータルに支援している。2016年より執行役員。国際コーチング連盟プロフェッショナル認定コーチ、生涯学習開発財団認定マスターコーチ。
<前回記事>
「タイプ分け」でコミュニケーションタイプを知る(前編)、あの人とのコミュニケーションが上手くいかないのはなぜ?
コントローラー
特徴
「コントローラー」が最も重要視するのは、自分が物事を「判断」できる環境にあるかどうかです。「判断」する自由やそのための材料を奪われてしまうと、コントローラーはとても大きな負荷を覚えます。またスピードを重視する戦略家であるため、冗長な話をされることを嫌います。「人間関係より仕事」、「プロセスより結果」を優先する傾向があります。コミュニケーションのポイント
頻繁に報告や連絡をし、「判断できる材料」を共有するのが良いでしょう。部下の場合は、「判断」の機会を奪うような過干渉は避け、「明確な目標を与え、後はひたすら黙って任せる」という関わりをするのが良いでしょう。・結論から単刀直入に話す
・何かについて知りたいときは、質問ではなく、「~について教えてほしい」と教えを請う表現をつかう
・提案するときには選択肢を複数示し、相手が判断(選択)できるようにする
・何かを任せるときは口出しをせず、全面的に任せる
プロモーター
特徴
「プロモーター」は人から注目されることが好きなタイプで、人に「影響」を与えることを大切にしています。話好きで、話の中では、「バシッといこう!」「グッとくるような」といった擬態語、擬音語の表現や、身振り手振りが多いのも特徴です。自分の影響力を周りの人からの反応で判断しているため、承認を代表とする、こまめな働きかけがないと、一気にやる気を失います。常に行動的でありたいので、自由度が低かったり、詳細さを求められたりすると本領を発揮しません。
コミュニケーションのポイント
プロモーターは、コントローラー同様に仕事を任せられたいという傾向が強いタイプです。一方で、コントローラーと違って、結果だけではなくプロセスも見ていてほしいと思うので、こまめな承認が必要です。
・話を聞くときは相づちを打つなどして明確に反応する
・質問は間口の広い質問をして自由に話をさせる
・たくさんほめる(特に彼らの影響力をほめると効果的)
・彼らのオリジナルなアイデアに耳を傾ける
サポーター
特徴
人を援助することを好み、協力関係を大事にします。また、人の立場に立ってものを見るのが得意で、気配り上手です。円滑な人間関係の中で、「合意」を取りながら物事を進めていくことを望んでいます。「ギスギスした人間関係」は最も避けたいものの一つで、人の期待に応えようと行動し、対立を避ける傾向があります。そのため、サポーターは、リクエストやお願いに対して「YES」と言いがちです。コミュニケーションのポイント
コントローラーやプロモーターと異なり、丸投げされることを嫌う傾向があります。周囲との関係の中で「合意」を取りながら物事を進めていけるよう、心がけましょう。また、サポーターとのコミュニケーションでは、言葉だけでなく、ノンバーバル(表情など)な部分にも注意する必要があります。
・穏やかであたたかみのある対応を心がける
・些細なことに対してもねぎらいの言葉をかける
・話を聞くときは忙しくても手を休めしっかりと聞く
・リクエストをするときはYESと言いがちなことを念頭に、無理がないかなど何回か確認をする
アナライザー
特徴
自分の行っていることが「正しい」と実感できるとき、彼らの行動は促進されます。また、彼らは情報収集や分析を強みとしているため、物事に取り組むときは、そうした事前準備をする時間を設けることを重要視します。そのステップを抜かして急かしても、彼らは動きません。正しさを重視するため、失敗や間違いを嫌います。そのため漠然とした指示を嫌います。コミュニケーションのポイント
目標について話し合うときなどは、裏付けのある客観的な情報がある方が良いでしょう。ある程度方向性を示した中で、自分の専門的役割を発揮することを期待されると、アナライザーは力を発揮する傾向があります。逆に、漠然とした指示には抵抗を感じます。業務を進める際は、考える時間も十分に提供し、アナライザーのペースで進められる環境を整えることが重要です。それによって、粘り強く最後までやり遂げることができます。
・質問をするときは具体的に答えやすい間口の狭い質問をする
・承認をするときには相手の専門性を認知するような具体的な承認の言葉を使う
・質問の返答はじっくりと待つ(彼らは正しい答えを出すために熟考してから答えます)
・アナライザーに何かを任せるときは、それをする意味、ゴールまでのステップ、リスクなどを伝える
「タイプ分け」活用の留意点
最後に、タイプ分けを活用する場合の留意点に触れておきます。タイプ分けは、あくまでも「テーラーメイド」なコミュニケーションを行うため、相手に興味関心を寄せ、観察し、理解するための一つのツールです。タイプ分けを利用するときには次の三つのポイントを理解しておく必要があります。
(1)決めつけに使わない
(2)それぞれのタイプに優劣はない
(3)人格や人との関わりを限定するものではない
タイプ分けの目的は、あくまでもどのタイプの傾向が強いかを理解することであり、その人がどのタイプか決めることではありません。そもそも、人をたった四つのタイプに分けることなどできません。
ほぼ100%コントローラーの人もいれば、二つのタイプをあわせもつ人、また、立場や役割、場、さらには相手によって表出する出るタイプが違うというケースも珍しくありません。ですから、単純に「あの人は●●タイプだから」と決めつけてしまうことは危険です。また、タイプによる優劣もありません。
こうした点を忘れてしまうと、本来コミュニケーションの可能性を高めるはずのタイプ分けが、決めつけや関わり方の限定につながってしまうので、注意が必要です。
タイプ分けは、コミュニケーションの新たな可能性をひらく「鍵」のようなものということもできるかもしれません。タイプ分けを通して、自分をよく知り、相手を理解できていれば、違いを受け止め、戦略的に周囲と関わるための余裕をもつことができるようになります。
今回ご紹介したのは、タイプ分け活用のほんの一部です。興味をもたれた方は、ぜひ、書籍などを通してさらにタイプ分け活用の可能性を探求してください。(コーチ・エィ・片桐多佳子)
■Profile
片桐多佳子
コーチ・エィ 執行役員
東北大学経済学部卒。コーチ・エィでは経営層を対象としたエグゼクティブ・コーチングを行い、200人以上のビジネスリーダーへのコーチング実績を持つ。「組織インパクトを出す」コーチングにこだわり、組織風土変革、業績向上、部門間連携強化などのニーズに対する、エグゼクティブ・コーチングやコーチングプロジェクトの設計、マネジメントを多数手がける。組織変革のプロセスを企画から成果創出までトータルに支援している。2016年より執行役員。国際コーチング連盟プロフェッショナル認定コーチ、生涯学習開発財団認定マスターコーチ。