豊盃と本日の鮮魚のなめろう
3杯目は青森の酒、「豊盃 純米吟醸 ウィンター生酒」(880円)。豊盃米で仕込まれた酒は三浦酒造が醸す「豊盃」でしか飲めないので見つけたら飲む。都内の酒屋で「豊盃」を買うことは難しいが赤燈では飲める。酒場のいいところは飲みたい酒と、それに合った旨いつまみを楽しめること。
豊盃のお供は、本日の鮮魚と薬味を特製味噌で叩いた「なめろう」(980円)。魚の仕入れ次第で味が変わるので、今日しか食べることができないスペシャルレアな味。焼き海苔に包んで口の中に放り込む。噛み締めると口の中に海が広がる。
長珍と若さぎの天ぷら
4杯目は愛知県で醸された「長珍 備前雄町 7-65 純米 無濾過生」(880円)。想像していた雄町の酒とは一味違う旨さ。面白いなあ、またひとつ経験値が増えた。4杯目を迎えても筆者の舌に痺れはない、本日は調子が良い。
「若さぎ天ぷら」(660円)は、キモの味を楽しむために食べる。魚のキモと日本酒の食べ合わせが好きなのだ。サンマだとキモは取り合いになるが、若さぎは白身とキモを一口で同時に楽しむことができるので、争いは起きない。旨くて平和的な魚。サクサクに揚がった衣が若さぎを引き立てる。
而今と銀ひらす西京焼
〆は三重の酒、「而今 特別純米」(880円)。「而今=今、この瞬間」という意味の禅語。この宇宙を思わせる名前の酒の味は、ご承知の通り激しく旨い。そう、而今は激しいのだ。
「而今」と合わせるのは「銀ひらす西京焼」(980円)。表面はカリッと、分厚い身はフワッと焼かれていて女将のテクに感服する逸品。西京の甘みと白身の脂を「而今」で切り裂く。今この瞬間は、ただ旨いものに溢れている。そして次の瞬間、飲みすぎたことに気づくのである。
今晩も酔ってしまった。赤燈さんの広くてお洒落なお手洗いの鏡に映るニヤけ面で我に返る。もっと食べたかったのに満腹になってしまった情けなさは、再訪への橋にして気持ちよく帰ろう。赤燈さん、いつも満足させていただきありがとうございます。次は「チキン南蛮」を食べます!
今回の酒場:日本酒居酒屋 鍋横 赤燈-retto-
鍋横 赤燈は、地下鉄丸の内線、新中野駅から徒歩4分。鍋横商店街に面し獺祭の垂れ幕が目印の日本酒酒場。割烹着姿がナイスな女将が作る季節感あふれる旨い料理と、心優しい大女将がグラス擦れ擦れまで注いでくれる全国のレア地酒が楽しめる。お財布が寂しい時でも本日のサービス酒が330円から飲めるのが嬉しい。予約してのご来店がお勧め。(ナードワード社・國安淳史)「日本酒居酒屋 鍋横 赤燈-retto-」
住所:東京都中野区本町4-43-16 ミカサビル101
電話:03-3384-9900
営業時間:18:00~翌0:00
営業日:月~土、祝日、祝前日
■Profile
國安淳史
ナードワード社 代表取締役。外資系IT企業などを経て2018年にWeb・Shopify・各種デザイン制作、商品企画などを提供するナードワード社を設立。KISOと共創した「日本酒器 hiyakan PRO」はECサイトや百貨店等で販売中。趣味は音楽、読書、飲酒。