地面は落ち葉が敷き詰められていて、松ぼっくりもたくさん落ちていました。持って帰ったらキャンプの火おこしに役立ちそうですが、荷物が増えるので今日は我慢です。
森の中はとても涼しく、さわさわと木々が揺れる音や小川のせせらぎが最高に気持ちいい!森林浴をしている気分で、奥へ奥へと進んでいきます。
ひたすら続く階段地獄
爽やかな森に出迎えられて、るんるんと鼻歌混じりだったのも束の間、急斜面と終わりなき階段地獄が始まりました。いくら登っても頂上が見えない階段に、足の筋肉がすぐに悲鳴をあげます。膝もガクガク。日頃の運動不足をこれでもかと感じます。最初は「きついー」や「しんどいー」と言葉をあげていましたが、登り始めて3分で沈黙。早々に喋る元気も奪われてしまいました。生い茂る木々のおかげで太陽の熱が届かないのが救いですが、じわじわと下半身に乳酸が溜まっていくのを感じます。
登っては降りて、また登ることの繰り返し。「起伏の多い道」とは聞いていましたが、まさかこれほどとは。根性なしの私はギブアップ寸前です。
ああ、つらい…。歩けども、歩けども、楽にならず。ヒーヒーと変な声を上げながら、棒のようになった足を引きずって登ります。
これは山道あるあるだと思いますが、山道やトレッキングルートの階段は一段が高すぎる。一段が膝の高さほどある階段を、「規格外やろ!」と泣き言を言いながら、一段づつゆっくり進みます。
しんどい…。もう無理かもしれん…。
心も折れかけた時、ついに平坦な場所へ到着。ひとつ深呼吸をしてからあたりを見渡すと、木々の間から真っ青な海が見えました。
同時に風がふわ~と吹いて、ほんのり潮の香り。その瞬間の達成感、開放感、爽快感、は言葉にできません。ほっとした気分でしばしフリーズ。座ることもできずに立ち尽くして、青い空と海に見入ってしまいました。
うまいおにぎりを食べるために私は生きている
少しの休憩を挟んで、トレッキングは続きます。海沿いの道に出たあとも、激しいアップダウンが続きましたが、最初の衝撃と比べると段々と心身ともに負担も軽減。「慣れ」ってすごいなぁと思いながら、ガシガシ歩いていきます。太陽はすっかり上り、木漏れ日の勢いも増していきます。額には大粒の汗が流れていましたが、さらさら?と海風が吹いて、疲れとともに暑さや不快感をどこかに吹っ飛ばしてくれるようでした。
全体の2/3まで来たところで小休止。展望小屋に腰を下ろして、コンビニで買ったおにぎりでカロリー補給です。
疲れているからか、汗をたくさんかいたからか、おにぎりの塩っけが身体に染みます。そのおいしさたるや、思わず「うまいー!」と声が漏れるほど。
こうやって美味しいご飯を食べるために私たちは生きているんだよなぁ、なんて。ちょっと大袈裟なことを思いながら、ひと口ずつ噛み締めていただきました。
自然の中で遊んで、うまい飯を食べて、寝る。シンプルですが心から楽しいと思える暮らしがここにはあります。都会と田舎はどちらもいい面と悪い面がありますが、今のところは、田舎の日常が私にとっては「最高!」のようです。
これぞ、田舎町の週末の過ごし方
おにぎりで元気をチャージした後は、またもりもりと山道を歩いて、午後1時前に町に帰ってきました。疲労困憊でしたが、清々しい達成感で足取りは軽く、そのまま国道沿いの温泉へ。汗を流した後は、ご褒美のビールで乾杯です。一緒に歩いた友人とお互いを労いながら、最高の一杯をいただきました。
これこそ「The 田舎町の週末」。不便なこともたくさんありますが、この場所でしかできない遊びがたくさんあるからこそ、田舎暮らしはやめられないなぁと改めて思った週末散歩でした。(フリーライター・甲斐イアン)
■Profile
甲斐イアン
徳島在住のライター、イラストレーター。千葉県出身。オーストラリア、中南米、インド・ネパールなどの旅を経て、2018年に四国の小さな港町へ移住。地域活性化支援企業にて、行政と協力した地方創生プロジェクトの広報PR業務に従事。21年よりフリーランスとなり、全国各地の素敵なヒト・モノ・コトを取材しています。