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インバウンド集客の今とこれから、受け入れ体制の強化を!

暮らし

2024/06/12 18:00

 【外食業界のリアル・10】 インバウンド(日本にやってくる外国人観光客)が2024年にコロナ前を上回り、今後も拡大していくことが予想されている。ニュースでは高価なインバウン丼や何千円もするラーメンを安いと言って食べる光景も放映され、実際に街では団体客や個人旅行者の姿が目立つようになってきた。今回は外食業界でも盛り上がっているインバウンド集客の今とこれからについて語りたいと思う。

インバウンドのお店選び

 日本で暮らしている人からすると意外かもしれないが、インバウンドにもチェーン店は人気がある。日本人が国内旅行に行った際には、現地ならではの食や雰囲気を堪能しようとする傾向があり、地元密着型の個店などが人気だが、インバンドの場合は異なる。

 ファミレスで20人ほどの団体客が安すぎるワインに驚きながら盛り上がっている光景を見たことがあるが、とても楽しそうであった。日本のチェーン店で食べること自体が日本を楽しむ一つのイベントになっているといっても過言ではないだろう。

 またインバウンドの場合、さまざまな理由によって食事制限のある顧客も少なくない。その際は食材への配慮が必要となるが、大手飲食チェーンの方が柔軟に対応できたりすることもある。例えば、コース料理ではベジタリアンも満足できるような調整が可能だったりする。特にインバウンド集客に力を入れている企業ほど、そのあたりの準備が整っている。

 今は円安となっているため、日本での買い物が非常にお得だ。海外で日本食を食べると物価の差もあって高めの値段になっており、日本人からすると高いと思えるものでも意外にすんなりと受け入れられていたりする。余談になるが、インバウンドの方がスーパーで売られている輸入ビールの安さにびっくりして大量に買っていくという話も聞いたことがある。
 

飲食店側のアプローチ

 インバウンドはパッケージ旅行などの団体旅行者とFIT(個人旅行者)とに分かれ、飲食店側のアプローチが異なってくる。団体旅行者に対しては旅行代理店や海外のコーディネーターへの働きかけとなり、FITは一般ユーザーへ直接となる。

 団体旅行者の場合、大人数を受け入れることができるキャパが必要となる。名所をバスなどの交通手段で回っていく形になるので、観光地近くや移動途中に店舗があるといったことも重要になってくる。そのため旅行会社等に対して、店舗の魅力や立地、キャパ、コース料理、食材の柔軟性などをアピールして、ツアーに組み込んでもらうのである。

 FITに対してはいわゆるBtoCアプローチとなるので、インバウンド向けのメディアへの情報掲載、インフルエンサー、WebサイトやGBP(Googleビジネスプロフィール)の多言語対応などがある。GA4(Googleアナリティクス)のデータをみると、日本国外や国内からの他言語による接続も増加傾向にある。インバウンド向けメディアも続々と増え、日本を拠点に活動をしながら海外向けに情報発信をしている海外インフルエンサーの活躍も目立つようになってきた。

 また、インバウンドに力を入れている企業ではGoogleの自動翻訳だけでなく、プロによる翻訳までやっているケースもある。自動翻訳でもある程度の内容は伝わるが、固有名詞やキャッチフレーズなどは精度的な課題がある。特に居酒屋の名前はオリジナルで作られたものが多くて翻訳が難しいし、想いを込めたコピーも翻訳されるとニュアンスまではうまく表現されずストレートなものになってしまう。

 さらに、各店舗ではマグロ解体ショーや寿司体験イベントなどの企画も人気で集客にもつながるため、昨年から増加傾向にある。もちろん、これらはインバウンドだけでなく、全ての顧客に対して有効なものである。
 

店舗の受け入れで必要なこととこれから

 インバウンドによって集客が盛り上がっていく一方、外食業界ではいまだに人手不足が続いている。そのためインバウンドの受け入れには何かしらの対策が必要となる。コース料理であれば、決まった時間で料理を運んでいけばいいのだが、ドリンクは注文が都度発生してしまう。そのため、モバイルオーダーやTTO(テーブルトップオーダー)の多言語対応が急ピッチで進んでいる。

 スマホやタブレット端末上で、自分で言語を選択してもらうとメニューなどが該当する文字に置き換わる。英語や簡体字、繁体字はもちろんのこと、ハングルやタイ語なども広がってきている。

 いよいよ大阪万博が2025年4月から6か月間に渡って開催される、期間が長いこともあり、想定来場者数は約2820万人と定められている。このタイミングに向かって国や都道府県レベルでもさまざまな施策が動いていくが、観光地やエリア単位での集客施策も本格化していくだろう。外食が盛り上がっていく絶好の機会となるわけであるが、同時に外食企業が一丸となるきっかけにもなり得るかもしれない。(イデア・レコード・左川裕規)