パナソニック、IoTによるつながりの強化と「リファービッシュ品」事業強化で、ウェルビーイングとサステナビリティの両立を目指す
パナソニックは4月10日、国内BtoCマーケティングにおける「新たな商売の基準」と題する説明会を開催した。今回は、「サーキュラーエコノミー」実現に向けた取り組みという視点から、すでに第一報でお伝えした、パナソニック検査済み再生品(保証付き)「Panasonic Factory Refresh」の販売開始に加え、顧客が安心して使い続けられるための、IoT・サービスの取り組みと進捗状況と今後について紹介し、その全体像に迫っていきたい。
具体的には、モノではなく機能を使用するという新しい価値観を具現化するため、一つの製品を多くの人で共有する「シェアリングサービス」、機能をベースにしてサービスを充実させる「モノのサービス化」、製品そのものや部品を再生・再利用することで、その機能・価値・寿命を最大限に活用する「リペア/メンテナンス、リファービッシュ、リマニュファクチュアリング」事業などの取り組みだ。
併せて、生産活動でのゼロエミッション化や、新規材料、最新デジタル技術の活用で、循環型モノづくりを進化させていく。これらの取り組みを、設計、調達、生産の各プロセスで資源効率を高めることで、Panasonic GREEN IMPACTで掲げる「より良いくらし」と「持続可能な地球環境」の両立を目指している。
パナソニックでは「くらしを守る、地球・社会を想う。」という新しい商売の基準を掲げ、2023年2月よりIoTを活用して商品購入後も顧客とつながり続けて購入後の満足度を向上する「IoT延長保証サービス」を開始した。
同サービスは対象の購入製品を専用アプリにつなげることで、1年のメーカー保証に加えて、2年の延長保証を無料で適用するものだ。
現在、対象機種は7カテゴリー・約500品番まで拡大し、23年度末での「つながるお客様」は約900万にまで伸長。24年度末の目標である1000万に向けて、順調に推移している。
既に22年3月からはエアコンを対象に、IoTデータを通じて各家庭の故障検知・状況把握等を遠隔で診断する遠隔診断を開始しており、23年4月からは冷蔵庫でも試験的に遠隔診断サービスを提供している。
同年12月からは冷蔵庫、洗濯機の配送・設置時に、IoT接続を無料でサポートするサービスを地域限定で開始しており、今後、適応エリアを順次拡大していく。
顧客の使用データをもとに使いこなしを向上する通知は、エアコンに加え、ドラム式洗濯機乾燥機と冷蔵庫へ拡大。日頃の手入れを啓発したり、使用状況の定期診断や異常検知(冷蔵庫)、クリーニング時期のお知らせ(エアコン)など、顧客と「つながり続ける」取り組みの強化が進む。
メンテナンスサービスも拡充させ、現在エアコンで行っているクリーニングサービスを、24年5月よりドラム式洗濯機乾燥機でも関西地区からスタートする。
パナソニックのドラム式洗濯機乾燥機は熱交換器(ヒートポンプユニット)を本体上部に配置しているため大掛かりな分解作業が不要で、作業時間は40~50分程度で済むのも強みだ。
専用の治具を開発し、認定技術員が安全、丁寧なクリーニングを実施する。サービス料金は1万6500円で、2年間のアフターサービスを含む。これにより、顧客が安心して、より良いコンディションで製品を使い続けられるようにしていく。
つながることで蓄積したデータを活用できる点がIoT家電の大きなメリットだ。20年モデルのルームエアコン「エオリア」は利用者の体感の好みをAIが学習して運転を最適化する「AI快適おまかせ機能」を搭載する。
累計3万件もの蓄積したデータは24年モデルの新機能に反映され、顧客のフィードバックや操作履歴をもとに快適な温度をエアコンが自動で設定してくれる。
また、パナソニックは地域に根差した街の電器店「パナソニックショップ」を全国展開しており、蓄積データをもとに適切なタイミングで点検活動を実施したり、地域にあった製品の販売方法なども模索していく。
パナソニック 執行役員の宮地 晋治氏は、「これまで家電に対する満足度は年を経るごとに右肩下がりであったが、IoTでお客様とつながり続け、製品の使いこなし、メンテナンスやサポートを通じて長く大切に使ってもらうことで、商品への愛着も高まる。節約・節電によって環境への貢献になることが、購入後の満足度アップにもなる。こうしたパナソニックならではの購入後の体験価値を提供していきたい」と力説する。
また、顧客の家電に対するスタンスが、所有から利用の消費スタイルに変化している中で、サブスクリプションを通じて新しい顧客との接点拡大につなげると共に、製品を市場で循環させることで資源の有効活用を促進していく。
パナソニックが20年に公式ショッピングサイト「Panasonic Store Plus」を通じてスタートした家電サブスクリプションサービスは、23年度に前年比210%の契約を獲得するなど、順調に利用が拡大している。
そして、これらのサブスクに利用された家電は、今回同時に発表したリファービッシュ製品としての販売対象にもなっている。
パナソニックは、すでに23年12月よりドラム式洗濯乾燥機と4K有機ELテレビを対象にリファービッシュ品の販売をスタートしており、リファービッシュ品のサブスクリプションサービスを、同年6月からヘアードライヤー ナノケアと、24年2月から卓上型食器洗い乾燥機で提供している。
今回は、ラインアップにポータブルテレビ、ブルーレイディスクレコーダー、ミラーレス一眼カメラ、冷蔵庫を加え、同年9月(予定)には電子レンジと炊飯器を追加して計10カテゴリーで、販売およびサブスクリプションサービスにより事業を展開する予定だ。
価格は年数や傷、修理、使用状況で変わるが、4月10日現在、冷蔵庫や洗濯機で約2割引きを想定する。
パナソニックの調査によると、家電を長く安心して使いたい人は76.7%で、その理由として節約や節電、環境負荷への配慮がある。パナソニックのリファービッシュ品の購入者に対するアンケートでは、総合満足度は89%で、「価格面やSDGsの側面からみても良い買い物ができた」「中古品と感じさせない仕上がり」といった評価を得ているという。
実際、リファービッシュ家電は、サブスクリプション型サービスの契約終了後商品や初期不良品、店頭展示の戻り品などで、傷の数や性能など品質に関する厳しい基準をクリアした商品のみが対象だ。再生作業の多くは宇都宮工場が、ドライヤーと炊飯器、電子レンジは奈良の拠点、冷蔵庫は愛知のパートナー拠点が担う。
宮地執行役員は、「Panasonic Factory Refresh」は、現状はそれほど大きな数にはならないとしながらも、「初期不良などの商品を廃棄するのではなく、再生して商品化する仕組みを整えることでサーキュラーエコノミーを実現したい。規模が拡大していけば販売網の協力が必須のため、どのような仕組みが必要かも検討したい」と語る。
現状は、再生コストよりも物流コストの方が高い状況のため、規模が拡大するとなれば、各地域で回していく必要がある。
「サーキュラーエコノミーを政府も推進する中にあって、リファービッシュ品も地産地消が求められる。当社単独でできることは限られるため、今後は、地域で循環する世界をどう創り上げていくかが重要になる。自治体とも連携してスキーム作りをしていきたい」と展望を語った。
「これまでのように新商品を毎年販売することの負荷は少なくない。マイナーチェンジが減れば、技術者がより顧客満足度の高い製品開発が可能になる」と宮地執行役員。
例えば、新販売スキームの対象になっている卓上型食器洗い乾燥機は、毎年マイナーチェンジによる新商品発売をしなくても3~4年は同じモデルで問題なく販売できているという。結果、1人用食器洗い乾燥機「SOLOTA」のように、顧客に感動を与える新しい商品を開発するリソースを生み出すことにつながっているというわけだ。
宮地執行役員は「『Panasonic Factory Refresh』は、当社製品のファンを広げていくための施策にもなり得る」として、「パナソニックとして家電製品を通じて持続型社会に貢献していきたい。今回は、そのスキームを立ち上げるためのスタートであり、その意思表明をさせていただきたい」と力を込める。
サーキュラーエコノミーの実現に向けて本格始動したパナソニックの取り組みを、今後も注視していきたい。
「IoT延長保証サービス」の対象製品を拡大、「つながるお客様」は約900万
パナソニックグループが推進するサーキュラーエコノミーの取り組みには、サーキュラーエコノミー型事業の創出と従来の循環型モノづくりの進化という二つの側面がある。具体的には、モノではなく機能を使用するという新しい価値観を具現化するため、一つの製品を多くの人で共有する「シェアリングサービス」、機能をベースにしてサービスを充実させる「モノのサービス化」、製品そのものや部品を再生・再利用することで、その機能・価値・寿命を最大限に活用する「リペア/メンテナンス、リファービッシュ、リマニュファクチュアリング」事業などの取り組みだ。
併せて、生産活動でのゼロエミッション化や、新規材料、最新デジタル技術の活用で、循環型モノづくりを進化させていく。これらの取り組みを、設計、調達、生産の各プロセスで資源効率を高めることで、Panasonic GREEN IMPACTで掲げる「より良いくらし」と「持続可能な地球環境」の両立を目指している。
パナソニックでは「くらしを守る、地球・社会を想う。」という新しい商売の基準を掲げ、2023年2月よりIoTを活用して商品購入後も顧客とつながり続けて購入後の満足度を向上する「IoT延長保証サービス」を開始した。
同サービスは対象の購入製品を専用アプリにつなげることで、1年のメーカー保証に加えて、2年の延長保証を無料で適用するものだ。
現在、対象機種は7カテゴリー・約500品番まで拡大し、23年度末での「つながるお客様」は約900万にまで伸長。24年度末の目標である1000万に向けて、順調に推移している。
「つながり続ける」ことで蓄積したデータを活用し、製品・サービスにフィードバック
専用アプリで接続することで、困りごとや使いこなしに関する役立ち情報や便利機能の紹介、電気代の目安の可視化や省エネをサポートし、購入後も安心して家電を使用でき、便利なくらしを提供する。既に22年3月からはエアコンを対象に、IoTデータを通じて各家庭の故障検知・状況把握等を遠隔で診断する遠隔診断を開始しており、23年4月からは冷蔵庫でも試験的に遠隔診断サービスを提供している。
同年12月からは冷蔵庫、洗濯機の配送・設置時に、IoT接続を無料でサポートするサービスを地域限定で開始しており、今後、適応エリアを順次拡大していく。
顧客の使用データをもとに使いこなしを向上する通知は、エアコンに加え、ドラム式洗濯機乾燥機と冷蔵庫へ拡大。日頃の手入れを啓発したり、使用状況の定期診断や異常検知(冷蔵庫)、クリーニング時期のお知らせ(エアコン)など、顧客と「つながり続ける」取り組みの強化が進む。
メンテナンスサービスも拡充させ、現在エアコンで行っているクリーニングサービスを、24年5月よりドラム式洗濯機乾燥機でも関西地区からスタートする。
パナソニックのドラム式洗濯機乾燥機は熱交換器(ヒートポンプユニット)を本体上部に配置しているため大掛かりな分解作業が不要で、作業時間は40~50分程度で済むのも強みだ。
専用の治具を開発し、認定技術員が安全、丁寧なクリーニングを実施する。サービス料金は1万6500円で、2年間のアフターサービスを含む。これにより、顧客が安心して、より良いコンディションで製品を使い続けられるようにしていく。
つながることで蓄積したデータを活用できる点がIoT家電の大きなメリットだ。20年モデルのルームエアコン「エオリア」は利用者の体感の好みをAIが学習して運転を最適化する「AI快適おまかせ機能」を搭載する。
累計3万件もの蓄積したデータは24年モデルの新機能に反映され、顧客のフィードバックや操作履歴をもとに快適な温度をエアコンが自動で設定してくれる。
また、パナソニックは地域に根差した街の電器店「パナソニックショップ」を全国展開しており、蓄積データをもとに適切なタイミングで点検活動を実施したり、地域にあった製品の販売方法なども模索していく。
強力なアフターサービス体制と対応実績を強みとし、購入後も体験価値を提供
パナソニックのもう一つの強みは、アフターサービス体制にある。全国に約100のサービス拠点を有しており、年間の問い合わせ件数は約3300万件、1日当たりにすると約10万件(電話相談およびFAQサイト訪問者数の合計)、年間修理数は約180万件に及ぶ。加えて、サービスの質を担保する高い技術力を誇る。パナソニック 執行役員の宮地 晋治氏は、「これまで家電に対する満足度は年を経るごとに右肩下がりであったが、IoTでお客様とつながり続け、製品の使いこなし、メンテナンスやサポートを通じて長く大切に使ってもらうことで、商品への愛着も高まる。節約・節電によって環境への貢献になることが、購入後の満足度アップにもなる。こうしたパナソニックならではの購入後の体験価値を提供していきたい」と力説する。
また、顧客の家電に対するスタンスが、所有から利用の消費スタイルに変化している中で、サブスクリプションを通じて新しい顧客との接点拡大につなげると共に、製品を市場で循環させることで資源の有効活用を促進していく。
パナソニックが20年に公式ショッピングサイト「Panasonic Store Plus」を通じてスタートした家電サブスクリプションサービスは、23年度に前年比210%の契約を獲得するなど、順調に利用が拡大している。
そして、これらのサブスクに利用された家電は、今回同時に発表したリファービッシュ製品としての販売対象にもなっている。
家電10カテゴリーで「リファービッシュ品」の事業を本格化
それでは、改めてパナソニックの「Panasonic Factory Refresh」ブランドによるリファービッシュ品(1年保証付き)について触れていこう。パナソニックは、すでに23年12月よりドラム式洗濯乾燥機と4K有機ELテレビを対象にリファービッシュ品の販売をスタートしており、リファービッシュ品のサブスクリプションサービスを、同年6月からヘアードライヤー ナノケアと、24年2月から卓上型食器洗い乾燥機で提供している。
今回は、ラインアップにポータブルテレビ、ブルーレイディスクレコーダー、ミラーレス一眼カメラ、冷蔵庫を加え、同年9月(予定)には電子レンジと炊飯器を追加して計10カテゴリーで、販売およびサブスクリプションサービスにより事業を展開する予定だ。
価格は年数や傷、修理、使用状況で変わるが、4月10日現在、冷蔵庫や洗濯機で約2割引きを想定する。
パナソニックの調査によると、家電を長く安心して使いたい人は76.7%で、その理由として節約や節電、環境負荷への配慮がある。パナソニックのリファービッシュ品の購入者に対するアンケートでは、総合満足度は89%で、「価格面やSDGsの側面からみても良い買い物ができた」「中古品と感じさせない仕上がり」といった評価を得ているという。
実際、リファービッシュ家電は、サブスクリプション型サービスの契約終了後商品や初期不良品、店頭展示の戻り品などで、傷の数や性能など品質に関する厳しい基準をクリアした商品のみが対象だ。再生作業の多くは宇都宮工場が、ドライヤーと炊飯器、電子レンジは奈良の拠点、冷蔵庫は愛知のパートナー拠点が担う。
宮地執行役員は、「Panasonic Factory Refresh」は、現状はそれほど大きな数にはならないとしながらも、「初期不良などの商品を廃棄するのではなく、再生して商品化する仕組みを整えることでサーキュラーエコノミーを実現したい。規模が拡大していけば販売網の協力が必須のため、どのような仕組みが必要かも検討したい」と語る。
現状は、再生コストよりも物流コストの方が高い状況のため、規模が拡大するとなれば、各地域で回していく必要がある。
「サーキュラーエコノミーを政府も推進する中にあって、リファービッシュ品も地産地消が求められる。当社単独でできることは限られるため、今後は、地域で循環する世界をどう創り上げていくかが重要になる。自治体とも連携してスキーム作りをしていきたい」と展望を語った。
循環型社会に日本企業として貢献
パナソニックが「リファービッシュ品」事業を本格化する背景には、新商品の開発サイクルも関係している。リファービッシュ品が普及すれば製品寿命も延び、新製品への買い替えサイクルが長期化していくと考えられるためだ。「これまでのように新商品を毎年販売することの負荷は少なくない。マイナーチェンジが減れば、技術者がより顧客満足度の高い製品開発が可能になる」と宮地執行役員。
例えば、新販売スキームの対象になっている卓上型食器洗い乾燥機は、毎年マイナーチェンジによる新商品発売をしなくても3~4年は同じモデルで問題なく販売できているという。結果、1人用食器洗い乾燥機「SOLOTA」のように、顧客に感動を与える新しい商品を開発するリソースを生み出すことにつながっているというわけだ。
宮地執行役員は「『Panasonic Factory Refresh』は、当社製品のファンを広げていくための施策にもなり得る」として、「パナソニックとして家電製品を通じて持続型社会に貢献していきたい。今回は、そのスキームを立ち上げるためのスタートであり、その意思表明をさせていただきたい」と力を込める。
サーキュラーエコノミーの実現に向けて本格始動したパナソニックの取り組みを、今後も注視していきたい。