滝が流れ、鯉が泳ぐ、和歌山の西洋喫茶『サンスイ』

グルメ

2024/04/12 17:00

和歌山県紀の川市、国道24号線沿いに喫茶『サンスイ』はある。外観は年季の入ったホテルのようにも見える。“豪華庭園”と書かれたド派手な看板がなければ、そこにあるのが喫茶店だとも気付かなかっただろう。

白亜の館へと近づき、扉を開ける。そこで世界観は一変する。

見上げるような高い天井、迎賓館のごとく重厚な調度、大きなシャンデリアまでぶら下がっている。それでいて、大窓の向こうは純日本式だ。そびえる巨石から滝が流れる山水の庭。池では立派な錦鯉が優雅に泳いでいる。和洋の景色の狭間でソファーに身を沈めれば、このカオスな空間に情報処理が追い付かない。

ここはいずこ?、と。

かつては1kmの間に4、5軒は喫茶店があったというこの界隈は、“喫茶銀座”と呼ばれていた。国道沿いにひしめく店が、互いに趣向を競っていたのだそう。このような喫茶店が他にも多数存在したのか。きっとここまで振り切っているのはこの『サンスイ』だけに違いない。

メニューは軽食に定食、和食、洋食、パフェまで100種類近くに及ぶ。今では世間的にも馴染みとなったレディースランチだが、当時はそのような発想はなかった。「うちが元祖かも」とオーナーが笑うので、頼んでみた。

手ごねハンバーグやエビフライ、オムライスの中身はケチャップライスかドライカレーかを選ぶことができる。手作り感溢れる一皿は、想像以上に美味しかった。書きながら今も、思い出している。

令和の今では「初デートにファミレスはありかなしか」なんてディベートがSNSでも度々繰り広げられているが、『サンスイ』なら確実に“あり”だろう。事実、和歌山では見合いの場となることもしばしば。今も縁結びの場として役目を果たしている。
 
手作り感溢れるレディースランチ1250円。
歴代シェフはみな女性。だからこその案か。

『カフェ&レスト サンスイ』
住所/和歌山県紀の川市藤崎341

※こちらの記事は、関西の食のwebマガジン「あまから手帖Online」がお届けしています。
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