【スマートホーム入門ガイド・番外編】3カ月ほど前の話になるが、2024年1月9日から12日までの4日間、米国ラスベガスで開催された世界最大の電子機器見本市「CES 2024」を視察してきた。世界中のテックカンパニーが最新の製品や技術を披露するイベントとあって、毎年多くの注目を集めている。そこで、同イベントの「スマートホーム」領域に注目し、最新のトレンドや注目企業、スマートホーム市場における今後の展望について考察したい。
増床の要因の一つとして、スマートホームにカテゴライズされる範囲が拡大されたことが考えられる。従来のスマートホームデバイスだけでなく、掃除機や調理器具などの家電、マッサージ機、蓄電池、庭のメンテナンスなど、住宅に関連するさまざまなモノがインターネットに接続されたことによってスマートホーム領域にカテゴライズされていた。結果として、スマートホームの展示領域が拡大されたと考えられる。
そのような背景から、企業の垣根を超えてオープンに連携していくため、22年10月に共通規格のMatterが発表され、Matterを拡大する動きが進められているのだ。
Matterに対応している機器同士であれば、メーカーが異なっていても相互に連携させたり、操作したりすることが可能になる。例えば、Matterに対応した機器を購入することで、Amazonのスマートスピーカーからでも、iPhoneのHomeアプリやその他のMatter対応アプリからでも簡単に操作できるようになる。これまでは、どのデバイスがどのアプリで操作できるのかを考えて機器を選ばなければならなかったのが、Matterによってメーカーの垣根がなくなり、もっと自由にスマートホーム機器を選べるようになることが期待されているのだ。
CES2024では、会場のいたるところでMatterのロゴがみられ、ほぼ全てのスマートホームサービスが「Matter」に対応していた。
当社も現在、Matterに対応したゲートウェイを開発中だが、日本では大手家電メーカーでも、Matter対応している企業やデバイスはまだまだ少ない。Matter対応デバイスが増えて家電量販店でもみかけるくらいになれば、スマートホームはますます普及していくだろう。
サムスンは、「SmartThings」という独自のIoTプラットフォームを持っている。サムスン製のテレビや照明、冷蔵庫などの家電を「SmartThings」に連携させており、自社製品だけでなく、他社の製品も「SmartThings」に連携することで、メーカーを問わず一括で操作することを可能にしている。
ブースでは、SmartThingsにつながる家電やデバイスを多く展示し、幅広い家電やスマートホームデバイスと連携していることをアピールしていた。
Oliver IQは、スマートホームのセットアップが非常に複雑で、個人で全てを行うのは無理があるという認識を持っている。同社が開催していたセミナーでは、スマートホームはデバイスやサービスの選定が難しくDIYも困難なため、実際に現地に駆け付けてのサポートや、オンラインでのサポートの充実が非常に重要であることを説明していた。
この考え方には共感する部分があり、筆者が所属する会社でも23年10月に設置やアフターサポートに特化した子会社「インスタテック」を設立した。スマートホームの普及には、設置やアフターサポートの充実が重要な鍵になるとわれわれも考えている。
まず、Matterに対応する企業はさらに増加していくだろう。現在、多くの日本企業は調整中もしくは様子見の段階だが、海外企業の動向に合わせて徐々にMatterに対応する開発が進められると考えている。
また、スマートホームは生活を便利にするホームコントロールという領域から、ホームセキュリティやエネルギー管理、ペットケア、高齢者見守りなど、具体的なソリューションを提供する段階にシフトしていくだろう。
実際、CESでもそのような展示がこれまでよりも具体的なソリューションを提供するブースが増えていた。スマートホーム技術のソリューション活用により、消費者の生活に密接に関わる課題を解決することで、スマートホームはより身近な存在になっていくだろう。人々の心地良い生活を実現できるよう、今後もスマートホームの可能性を追求していくことが重要ということだ。(アクセルラボ・青木継孝)
スマートホームの展示ゾーンは大きく拡大
CES 2024のメイン会場は三つに分かれており、これらのうち「Tech West」がスマートホーム関連のメイン会場となる。今回は「Tech West」の半分程度がスマートホーム関連の展示となっており、前回と比較して大幅な増床となっていた。増床の要因の一つとして、スマートホームにカテゴライズされる範囲が拡大されたことが考えられる。従来のスマートホームデバイスだけでなく、掃除機や調理器具などの家電、マッサージ機、蓄電池、庭のメンテナンスなど、住宅に関連するさまざまなモノがインターネットに接続されたことによってスマートホーム領域にカテゴライズされていた。結果として、スマートホームの展示領域が拡大されたと考えられる。
スマートホーム業界で注目の「Matter」
スマートホーム業界において、ここ1、2年注目されているのは、「Matter(マター)」という新しい通信規格だ。スマートホーム業界では、異なるメーカー間でデバイスの接続や操作ができないことが普及の足かせになっていた。スマート家電やスマートホームデバイスのメーカーごとにアプリがリリースされ、メーカーが違うとアプリもバラバラになってしまい、ユーザーにとって利便性が悪いものになっていた。それは国内だけでなく、世界共通の課題でもあった。そのような背景から、企業の垣根を超えてオープンに連携していくため、22年10月に共通規格のMatterが発表され、Matterを拡大する動きが進められているのだ。
Matterに対応している機器同士であれば、メーカーが異なっていても相互に連携させたり、操作したりすることが可能になる。例えば、Matterに対応した機器を購入することで、Amazonのスマートスピーカーからでも、iPhoneのHomeアプリやその他のMatter対応アプリからでも簡単に操作できるようになる。これまでは、どのデバイスがどのアプリで操作できるのかを考えて機器を選ばなければならなかったのが、Matterによってメーカーの垣根がなくなり、もっと自由にスマートホーム機器を選べるようになることが期待されているのだ。
CES2024では、会場のいたるところでMatterのロゴがみられ、ほぼ全てのスマートホームサービスが「Matter」に対応していた。
当社も現在、Matterに対応したゲートウェイを開発中だが、日本では大手家電メーカーでも、Matter対応している企業やデバイスはまだまだ少ない。Matter対応デバイスが増えて家電量販店でもみかけるくらいになれば、スマートホームはますます普及していくだろう。
注目企業は?
では、CES2024を通じて、スマートホーム領域で注目を集めるであろう企業を2社を紹介したい。サムスン
CES2024で存在感を放っていたのが、韓国の大手家電メーカー「サムスン」だ。サムスンは、「SmartThings」という独自のIoTプラットフォームを持っている。サムスン製のテレビや照明、冷蔵庫などの家電を「SmartThings」に連携させており、自社製品だけでなく、他社の製品も「SmartThings」に連携することで、メーカーを問わず一括で操作することを可能にしている。
ブースでは、SmartThingsにつながる家電やデバイスを多く展示し、幅広い家電やスマートホームデバイスと連携していることをアピールしていた。
Oliver IQ
「Oliver IQ」は米国のベンチャー企業で、デバイスやアプリの提供から、設置、サポートまでワンストップで提供するスマートホームプラットフォーマーだ。Oliver IQは、スマートホームのセットアップが非常に複雑で、個人で全てを行うのは無理があるという認識を持っている。同社が開催していたセミナーでは、スマートホームはデバイスやサービスの選定が難しくDIYも困難なため、実際に現地に駆け付けてのサポートや、オンラインでのサポートの充実が非常に重要であることを説明していた。
この考え方には共感する部分があり、筆者が所属する会社でも23年10月に設置やアフターサポートに特化した子会社「インスタテック」を設立した。スマートホームの普及には、設置やアフターサポートの充実が重要な鍵になるとわれわれも考えている。
今後のスマートホームはどうなる?
では、CES2024の視察を踏まえて、今後のスマートホーム業界はどうなっていくのかを解説したい。まず、Matterに対応する企業はさらに増加していくだろう。現在、多くの日本企業は調整中もしくは様子見の段階だが、海外企業の動向に合わせて徐々にMatterに対応する開発が進められると考えている。
また、スマートホームは生活を便利にするホームコントロールという領域から、ホームセキュリティやエネルギー管理、ペットケア、高齢者見守りなど、具体的なソリューションを提供する段階にシフトしていくだろう。
実際、CESでもそのような展示がこれまでよりも具体的なソリューションを提供するブースが増えていた。スマートホーム技術のソリューション活用により、消費者の生活に密接に関わる課題を解決することで、スマートホームはより身近な存在になっていくだろう。人々の心地良い生活を実現できるよう、今後もスマートホームの可能性を追求していくことが重要ということだ。(アクセルラボ・青木継孝)