京菓子司『満月』の、「阿闍梨餅じゃない」名物の話

グルメ

2024/02/26 07:00

名物「阿闍梨餅」


「阿闍梨餅(あじゃりもち)」。安政3年創業の京菓子司『阿闍梨餅本舗 満月』の名物として、大変有名な和菓子である。モチモチとした生地と、丹波大納言小豆の粒感が程よく感じられるバランスがとにかく絶妙。手頃な価格で、素直に美味しい。もらったら嬉しい定番の手土産だ。

「阿闍梨餅」1個141円。
 

店名を冠した希少な「満月」

ただ、今回お伝えしたいのは、「阿闍梨餅」ではない。

『満月』には、「眞菓満月」というもうひとつの看板商品がある。こちらは、明治時代に旧九條侯爵家御用達のご下命を受けたという由緒ある菓子だ。まん丸の愛らしい姿。つるんとした生地には、国産白小豆を使ったこし餡が包まれていて、優しくまろやかに口の中でほどける。その色と形から、命名も九條家によるものなのだとか。
 
「眞菓満月」1個303円。

「昭和33年に僕が丁稚に入った頃は、満月が何千個と出ていて、阿闍梨餅は何百単位でした」と常務さん。店名を冠するほどの菓子が、なぜ主役を阿闍梨餅に譲ることになったのか。

それは昭和49年のこと。戦後の時代に原料の白小豆が高騰し続けたため、やむなく製造中止になってしまったのだ。以来30年近く生産が途絶え、その間にゆっくりと阿闍梨餅は売れ続けて看板商品へと成長していった。眞菓満月復刻の願いが叶ったのは、平成6年のこと。京都新聞に「謹告 真菓 満月 復刻調進」と告知したほどの一大事だったとか。

とはいえ、国産白小豆は今も変わらず希少なため、土・日曜、祝日のみ、本店と金閣寺店で限定販売している。ただし電話注文で全国発送もしてくれるので、京都になかなか行けないという方はこちらの利用が便利。

『阿闍梨餅本舗 満月 本店』
住所/京都府京都市左京区鞠小路通今出川上ル

※こちらの記事は、関西の食のwebマガジン「あまから手帖Online」がお届けしています。
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