「人生、迷ったらしんどそうな道を選べ」とはよく言うが、私は「メニューで迷ったら面白そうなほうを選べ」の法則で生きている。食雑誌の編集者として正しいかどうかは分からないが。
関西の食雑誌「あまから手帖」2月号(珈琲特集)で喫茶店のランチを担当することになり、大阪・東天満の『カワン・ルマー』に伺った。この日は取材前の覆面調査なので、普通の客として。
しかしその中にひっそり記された「シノアーズ」が気になってしょうがないのだ。そもそもこれがライスなのかもパスタなのかも、はたまた別の何かなのかも分からない。シノアと言うぐらいだから中華風なのだろうが、何の中華風なのかも謎である。
優秀な編集者ならここで、ダントツ人気のドライオムを頼むだろう。店主に念のため尋ねた。「お薦めは何ですか?」「ドライオムですね~」。そこで私は言った、「じゃあシノアーズください」と。
ほな聞くなや、と思うだろう。「じゃあ」って何やねん、とイラつくだろう。私も同感。だが店主は笑顔で「シノアーズですねっ」と踵を返して厨房に戻った。
さらに卵に匙を入れてライスを食べると、恐らくこれはチャーハン。つまり「シノアーズ」とは中華風オムライス、中がチャーハンでソースが鶏ガラスープ味なのだ。ソースは鶏ガラベースに和風だしも加わり「まんま中華」ではない。
んー。味が濃いけどこれはこれで旨いものだなあ。ついでに、手作りというカレーのルウを追加し、ハンバーグまでトッピングしてみた。これらは、中華味とはあんまり合わなかった。
どうして私はニッチなところばかり攻めようとしてしまうのだろう。その日いた客が誰も「シノアーズ」を注文していなかったので、誌面では「ドライオム」を紹介するのがスジなのだろう。確かに「シノアーズ」も悪くないし、「ドライオム」に飽きた人のための趣向変えアイテムという立ち位置なのかも。いや「シノアーズ」だけを食べに来る人だっているかもしれない。でも結局取材する時は、「ドライオム」を撮影することになるのは目に見えている。
というわけで後日、再び訪れて「ドライオム」を食したのだった。人気メニューの名に違わぬ完成度の高い一品だった。あまから手帖2月号の誌面でも「ドライオム」が登場している。「シノアーズ」は私の心の中にしまっておいた。でも、たまに食べたくなる。
『カワン・ルマー』
住所/大阪府大阪市北区同心1-2-22
※こちらの記事は、関西の食のwebマガジン「あまから手帖Online」がお届けしています。
あまから手帖Online=https://www.amakaratecho.jp/
関西の食雑誌「あまから手帖」2月号(珈琲特集)で喫茶店のランチを担当することになり、大阪・東天満の『カワン・ルマー』に伺った。この日は取材前の覆面調査なので、普通の客として。
ダントツ人気は「ドライオム」だが
何が人気ですか? と聞くまでもなく、入ってきた客のほとんどが「ドライオム!」とメニューも見ずに注文している。確かに、オムライスやカレーやパスタが並ぶ品書きの2番目、オムライスのすぐ下に「ドライオムライス」とある。ドライカレーを包んだオムライスなのだろうな、と容易に想像がつく。しかしその中にひっそり記された「シノアーズ」が気になってしょうがないのだ。そもそもこれがライスなのかもパスタなのかも、はたまた別の何かなのかも分からない。シノアと言うぐらいだから中華風なのだろうが、何の中華風なのかも謎である。
優秀な編集者ならここで、ダントツ人気のドライオムを頼むだろう。店主に念のため尋ねた。「お薦めは何ですか?」「ドライオムですね~」。そこで私は言った、「じゃあシノアーズください」と。
ほな聞くなや、と思うだろう。「じゃあ」って何やねん、とイラつくだろう。私も同感。だが店主は笑顔で「シノアーズですねっ」と踵を返して厨房に戻った。
シノアーズの中身はアレでした
ジャジャジャッと何かを炒める音や、カカカカッとかき混ぜる音などの後に、目の前に「シノアーズ」なる一皿がお目見えした。なんだ、オムライスではないか。そしてソースを一口すすってみると、中華スープの味がする。さらに卵に匙を入れてライスを食べると、恐らくこれはチャーハン。つまり「シノアーズ」とは中華風オムライス、中がチャーハンでソースが鶏ガラスープ味なのだ。ソースは鶏ガラベースに和風だしも加わり「まんま中華」ではない。
んー。味が濃いけどこれはこれで旨いものだなあ。ついでに、手作りというカレーのルウを追加し、ハンバーグまでトッピングしてみた。これらは、中華味とはあんまり合わなかった。
どうして私はニッチなところばかり攻めようとしてしまうのだろう。その日いた客が誰も「シノアーズ」を注文していなかったので、誌面では「ドライオム」を紹介するのがスジなのだろう。確かに「シノアーズ」も悪くないし、「ドライオム」に飽きた人のための趣向変えアイテムという立ち位置なのかも。いや「シノアーズ」だけを食べに来る人だっているかもしれない。でも結局取材する時は、「ドライオム」を撮影することになるのは目に見えている。
というわけで後日、再び訪れて「ドライオム」を食したのだった。人気メニューの名に違わぬ完成度の高い一品だった。あまから手帖2月号の誌面でも「ドライオム」が登場している。「シノアーズ」は私の心の中にしまっておいた。でも、たまに食べたくなる。
『カワン・ルマー』
住所/大阪府大阪市北区同心1-2-22
※こちらの記事は、関西の食のwebマガジン「あまから手帖Online」がお届けしています。
あまから手帖Online=https://www.amakaratecho.jp/