ネットで売っている「Apple Watchそっくり製品」が激安な理由(1)~使ったら違法?安易に手を出すことの危険性~
ECサイトなどには“数千円”という破格の値段がついた“Apple Watchそっくり”のスマートウォッチが出品されています。いわゆる「模倣品」です。これらの模倣品はなぜ、これほど安い価格で販売することができるかということを想像をしてみたことがあるでしょうか?「Apple製品はブランド的価値で元々、価格設定が高いから」という考えもあるかもしれません。しかし模倣品がなぜ安く販売できるのか?ということを想像してみると、いかに「Apple Watchの模倣品」の闇が深いかが見えてきます。
だからといって安易に「Apple Watchの模倣品」に手を出すのはリスクがあります。その闇について紹介していきましょう。
ひとめみて「Apple Watchだ」と思うのに、Apple Watchではないということは、それ自体が「模倣」であると言えるでしょう。ECサイトなどで売っている、これらのスマートウォッチにはどこにも「Apple Watch」と記載されていません。しかし、記載されていないから模倣品ではないということにはなりません。
特許庁では“絶対買わんぞ!コピー商品”というコピー商品撲滅キャンペーンを展開しています。
絶対買わんぞ!コピー商品|特許庁
https://www.jpo.go.jp/news/kokusai/mohohin/campaign/kawanzo/
特許庁のホームページではコピー商品の危険性について判りやすく解説しています。いくつかの例を紹介しましょう。
Apple Watchそっくりのスマートウォッチは、偽ブランド品と同じ構造。だから安いのです。
ではなぜ、本家のApple Watchの1/10以下という破格の値段で販売することができるのでしょうか?いくつか代表的な例を挙げてみます。
特徴的なのがデジタルクラウン(ダイヤル式のコントローラー)にあたる部品です。安っぽいプラスチックで作られていて、高級感は全くありません。ECサイト上のイメージ写真はレタッチしているのか、それなりに見えますが、実物はかなり貧弱に感じるものでした。
さらにもう一つの商品を購入してみました。かなりApple Watchに似ている商品で、デジタルクラウンの位置やデザインまでそっくりです。
同じようにパッケージも本家のApple Watchの箱にはエンボス加工が施されて高級感がありますが、偽物はいかがわしいフォントで「スマートウォッチ」と記載されていて、なんともいえないチープさを感じます。
パッケージなどの見える部分より、内部はもっとコストがかかるはずですから、内部で使われている素材も粗悪な素材を使っている可能性があります。いずれにしても、安価な素材を使えばそれだけコストが抑えられるということです。
バンドの素材もそうですが、時計の裏面にどのような金属や薬品が使用されているかわかりません。本物のApple Watchでは、このようなリスクが起きないことを考えた上で設計、販売していますが、模倣品がどこまで検証やテストをして販売しているかは未知数です。
身体に影響や問題のない素材などをテストするにはコストがかかります。テストや検証をしなければ、その分、コストを抑えることができるということです。
これは、新しいデザインに対価を支払うという商流そのものの否定につながります。例えば、あなたが描いたオリジナルのイラストを誰かが自分のものとして販売して利益を得るというのと同じ構造です。
言うならば、デザインや設計・アイデアを「泥棒」して作っているから安価で販売することができるのです。
というよりも、実は多くの模倣品には「この商品はスポーツ用品です」とか「この商品は雑貨です」といったような“言い訳”を記載しているケースも少なくないのです。
つまり、最初から機能や性能を保証していない可能性が高いのです。これらについては、本記事の続編で解説・実証していこうと思います。
代表的な例をいくつか挙げると、
a)BluetoothやWi-Fiに接続するためには、総務省の技適(技術基準適合証明等)の証明を受けていなければいけません。
b)心拍数の測定には厚労省に「家庭用心電計プログラム」および「家庭用心拍数モニタプログラム」の適正使用の登録が必要です。また血中酸素の測定など、様々な健康値測定に関するもので厚労省への届け出が必要なものもあります。
c)バッテリが取り外せる仕様の場合、PSE(電気用品安全法)の届け出が必要です。現在、スマートウォッチのほとんどはバッテリが内蔵されていて取り外せないので、基本的にこれに該当しませんが、取り外せる仕様になっている場合、経産省への届け出が必要です。
以上のような申請にはコストがかかります。もちろん、申請にコストがかかるだけではなく、これらの申請に通るような安全性や技術を担保しなければなりません。つまり、それだけ多くのコストがかかるということです。
使っているリチウム電池などの品質がわからないため、爆発・発火などのリスクが考えられます。
1)正規品と比べてあきらかに価格が安すぎるものは注意
2)有名な商品に見た目がそっくりな商品に注意
3)プロの目利きで仕入れられた店舗・ECサイトなどで購入する――といったことを参考にしてみてください。
次回は、ECサイトで販売されている模倣品を購入してみた実機レポートをさらに詳細に紹介します。(ITジャーナリスト・レイ坂本)
■Profile
レイ坂本
ITジャーナリスト。晋遊舎MONOQLO『クチコミ信者の銭失い』、週刊アスキー『ウイルスなんて死んじゃえばいいのに』、ラジオライフ『技適トラベラー』などのコラムを連載。
デザインの模倣・コピー商品を助長する恐れ
今やスマートウォッチの代名詞とも言えるApple Watch。欲しいと思いつつも、一番安いラインアップのApple Watch SEでも3万4800円~。現在最新のSeries 9だと最低でも5万9800円と、ビジネスパーソンのお小遣いで買うにはなかなかの値段です。だからといって安易に「Apple Watchの模倣品」に手を出すのはリスクがあります。その闇について紹介していきましょう。
ひとめみて「Apple Watchだ」と思うのに、Apple Watchではないということは、それ自体が「模倣」であると言えるでしょう。ECサイトなどで売っている、これらのスマートウォッチにはどこにも「Apple Watch」と記載されていません。しかし、記載されていないから模倣品ではないということにはなりません。
特許庁では“絶対買わんぞ!コピー商品”というコピー商品撲滅キャンペーンを展開しています。
絶対買わんぞ!コピー商品|特許庁
https://www.jpo.go.jp/news/kokusai/mohohin/campaign/kawanzo/
特許庁のホームページではコピー商品の危険性について判りやすく解説しています。いくつかの例を紹介しましょう。
~知らずに売っても罪になる~
メルカリやヤフオクなどで販売することで、罪に問われることがあります。販売項目にApple Watchと書かないで出品したとしても、購入者から被害届けを出されて起訴される可能性があるからです。~犯罪組織が作って売っている。犯罪に加担することに~
コピー商品自体が違法なものですから、そもそもこれを販売している側にモラルが問われることは言うまでもありません。特許庁のホームページには「コピー商品を買うこと=犯罪者と関わり、販売を犯すことの手助けをすること、つまりあなたが犯罪に関わることになります。」と書かれています。~海外ECの場合、税関による没収も~
海外からの発送の場合、税関に没収される可能性もあります。もちろん支払った料金は返ってきません。Apple Watchそっくりのスマートウォッチは、偽ブランド品と同じ構造。だから安いのです。
ではなぜ、本家のApple Watchの1/10以下という破格の値段で販売することができるのでしょうか?いくつか代表的な例を挙げてみます。
1)粗悪な素材でコストダウン
今回テストのためにECサイトで実際にスマートウォッチを購入してみてチェックすると、まずは筐体そのものが、まるで昭和のオモチャのようなものもありました…特徴的なのがデジタルクラウン(ダイヤル式のコントローラー)にあたる部品です。安っぽいプラスチックで作られていて、高級感は全くありません。ECサイト上のイメージ写真はレタッチしているのか、それなりに見えますが、実物はかなり貧弱に感じるものでした。
さらにもう一つの商品を購入してみました。かなりApple Watchに似ている商品で、デジタルクラウンの位置やデザインまでそっくりです。
同じようにパッケージも本家のApple Watchの箱にはエンボス加工が施されて高級感がありますが、偽物はいかがわしいフォントで「スマートウォッチ」と記載されていて、なんともいえないチープさを感じます。
パッケージなどの見える部分より、内部はもっとコストがかかるはずですから、内部で使われている素材も粗悪な素材を使っている可能性があります。いずれにしても、安価な素材を使えばそれだけコストが抑えられるということです。
2)健康被害などの検証をコストカット
時計なので当然ながら腕に密着して使います。そのため肌に接触する素材が、なんらかの影響を及ぼす可能性があります。模倣品に付属のバンドには金属部があります。本体の裏にも金属部があります。これらは肌に安全と言えるのでしょうか?バンドの素材もそうですが、時計の裏面にどのような金属や薬品が使用されているかわかりません。本物のApple Watchでは、このようなリスクが起きないことを考えた上で設計、販売していますが、模倣品がどこまで検証やテストをして販売しているかは未知数です。
身体に影響や問題のない素材などをテストするにはコストがかかります。テストや検証をしなければ、その分、コストを抑えることができるということです。
3)デザイン・設計コスト・特許などを支払わなければ安くできる
Apple Watchには数多くの特許や知的財産が含まれています。一方でコピー品が正しく特許の手続きや使用料を支払っているかは疑問です。少なくとも、もともとあったデザインをコピーしているのですから、デザインに関するコストは安価に済ませることができるはずです。これは、新しいデザインに対価を支払うという商流そのものの否定につながります。例えば、あなたが描いたオリジナルのイラストを誰かが自分のものとして販売して利益を得るというのと同じ構造です。
言うならば、デザインや設計・アイデアを「泥棒」して作っているから安価で販売することができるのです。
4)性能が低い、性能が保証されていないから安い
性能が保証されていないことは、時計と書いてあるけれど時間がずれるのと同じです。スマートウォッチは様々な機能を搭載していますが、これらの機能がいい加減な可能性があります。というよりも、実は多くの模倣品には「この商品はスポーツ用品です」とか「この商品は雑貨です」といったような“言い訳”を記載しているケースも少なくないのです。
つまり、最初から機能や性能を保証していない可能性が高いのです。これらについては、本記事の続編で解説・実証していこうと思います。
5)法的な申請・認可を得ていないから安い
スマートウォッチを販売する上で法的な認可や申請を得なければいけないものがあります。代表的な例をいくつか挙げると、
a)BluetoothやWi-Fiに接続するためには、総務省の技適(技術基準適合証明等)の証明を受けていなければいけません。
b)心拍数の測定には厚労省に「家庭用心電計プログラム」および「家庭用心拍数モニタプログラム」の適正使用の登録が必要です。また血中酸素の測定など、様々な健康値測定に関するもので厚労省への届け出が必要なものもあります。
c)バッテリが取り外せる仕様の場合、PSE(電気用品安全法)の届け出が必要です。現在、スマートウォッチのほとんどはバッテリが内蔵されていて取り外せないので、基本的にこれに該当しませんが、取り外せる仕様になっている場合、経産省への届け出が必要です。
以上のような申請にはコストがかかります。もちろん、申請にコストがかかるだけではなく、これらの申請に通るような安全性や技術を担保しなければなりません。つまり、それだけ多くのコストがかかるということです。
価格が安い模倣品などが持つリスク
簡単にまとめると、Apple Watchの模倣品を購入・利用すると以下のようなリスクが考えられます。健康被害
肌に触れる面などの素材が皮膚などにどのような影響を及ぼすかわからない危険性があります。使っているリチウム電池などの品質がわからないため、爆発・発火などのリスクが考えられます。
違法な取引への関与
コピー品を製造・販売するというモラルレベルの取引に関与することになります。中古販売・転売などでのリスク
違法品の販売と見なされて罪に問われる可能性があります。法的な申請を得ていない製品の利用によるリスク
例えば、前述の技適に認可されていない製品を使った場合、「利用者」が罪に問われることになります。リスクの高いコピー品・模倣品かどうか?を見分ける方法
コピー品・違法性の高いものかどうか?を購入時に見分ける方法として、1)正規品と比べてあきらかに価格が安すぎるものは注意
2)有名な商品に見た目がそっくりな商品に注意
3)プロの目利きで仕入れられた店舗・ECサイトなどで購入する――といったことを参考にしてみてください。
次回は、ECサイトで販売されている模倣品を購入してみた実機レポートをさらに詳細に紹介します。(ITジャーナリスト・レイ坂本)
■Profile
レイ坂本
ITジャーナリスト。晋遊舎MONOQLO『クチコミ信者の銭失い』、週刊アスキー『ウイルスなんて死んじゃえばいいのに』、ラジオライフ『技適トラベラー』などのコラムを連載。