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「素養」に基づく転職ではなく、「素質」に基づく転職をしよう

暮らし

2024/01/21 18:00

 【30歳からの後悔しない転職の思考法・2】前回の記事では、大転職時代が到来する中で大事になるのは今の時代にフィットした正しいキャリアの「思考法」になると紹介した。どうせ転職するなら自分の魂が喜ぶ転職の仕方と、さらにいえば人生の歩み方をした方がいいもの。そこで、今回は「素養」に基づく転職ではなく、「素質」に基づく転職というテーマでキャリアの最も大事な思考法を紹介したい。

先天的に持つ素の性質や力

 まずは、素質を理解するために「素養」と対比すると分かりやすい。素養とは、「努力して身に付けた能力」のことをいう。素養の素という漢字は「もとからの、普段の」という意味を持つ。そのため素養とは、普段から育て上げてきた知識や能力を意味する言葉になる。

 一方、素質とは「先天的に持つ素の性質や力」のことをいう。素質の質という漢字は「生まれつき」という意味を持つ。そのため素質とは、もとから生まれつき持っている性質を意味する言葉になる。
 

 これまでのビジネス社会では、若い時から積み上げられてきた経験や知識によって自身の「できる」部分が拡大されてキャリアアップされてきた。しかし、今の現代社会ではどうだろうか。経験や知識が高速で陳腐化される時代になった。

 そこで大事なのが、素質への着目だ。「勘」の積み上げで身についた自信による転職よりも、「その人が本来持ち合わせている魅力や力」による転職やキャリアアップを目指した方が最短だし、軽やかでもある。

 さらに、素質は研ぎ澄ませば研ぎ澄ますほど、ぐんぐん伸びるという性質を持つ。特にZ世代などの若い世代にこの傾向は顕著に思う。ビジネス界ではなく、アーティストやスポーツなど、幅広い世界でそのように感じる。

 しかし、ここで一つ問題点がある。それは、「自分がどのような素質を持っているか?」を理解できている人はほとんどいないということだ。そこで、素質の正しい見つけ方とその研ぎ澄まし方について紹介したい。

 素質の正しい見つけ方と研ぎ澄まし方を伝える大前提として、「二つの心」の区別を説明したい。人の心は、二つある。「揺らぐ心」と「揺るがない心」である。

 揺らぐ心は、外部環境(現実・体験・出来事・情報など)からの影響を受けることで、その「反応」として出来上がる心。これを「反応本音」と呼ぶことにする。

 揺るがない心とは、外部からのいかなる影響によっても変わることのない心。常に自分の中心にあり、それ自体、進化(深化)はするが、本質は変わらない。多くの場合、それは「揺るがぬ願い」であったり「揺るがぬテーマ」であったり、外部環境を選ばないため、その人の「人生の願い」「人生のテーマ」と表現することもできる。自分が自分である以上、一生、変わらない心。これを「真本音」と呼ぶことにする。

 反応本音と真本音。人は、この二つの心で構成され、明確に区別される。
 

 反応本音に基づいて、目標設定をしたり、決断したり、行動を起こしたりする人は、何らかの外部要因によって揺れやすい。例えば、3日坊主になったり、すぐに気が変わったり、後悔したり、いつも迷っていたり、悩んでいたりする。そのため、自分の望む結果は出づらく、望む現実も人生も創り出しにくくなる。当然ながら反応本音で転職活動をしてしまうと、「こんなはずではなかった」と環境のせいにし、仕事を転々としてしまう。

 それに対して真本音とは、その人の心の中で「揺るがぬ存在」であるため、どのような現実を目の前にしても、どのような状況に直面しても、外部環境からの影響は受けない。このように、外部環境からの影響を受けない、非常に安定した自分が、心の中心にあるのが人であるというもの。逆にいえば、そのように「揺るがぬ安定した自分」があるからこそ、「揺らぐ自分」も存在し得る。むしろ、それが人としての愛嬌となる。

 人は、自らの「真本音の願い」を人生のテーマ・課題として常に大切にすることで、内側から理屈を超えたエネルギーが湧き続ける。真本音とは、「心の中の全ての自分(全ての反応本音達)」が尊敬するリーダー的存在でもある。真本音というリーダーのいうことのみ、素直に受け入れる。だからこそ、真本音に基づいて生きることは、心の中のさまざまな葛藤を減らし、結果として「自己統合」が起こり、それが昨今注目もされている「キャリア自律」にも直結する。

 「素質を開花させる」ためには、この「真本音の度合い」を高め続ける必要がある。そして、これがその人の転職の成功を決定づける。

 真本音の度合いを高めるというのは、「自分の願い・想いを自分で理解」「自らの意志に基づいて行動」「自らの望む結果(成果・現実)を創出」といったサイクルを日常生活で行っていくこと。そこに「モチベーションアップ」は必要なく、「テーマ」に向かい、決めたことを一つずつ着実に行うのみだ。

 そして、何のために何をするかが明確で、今ここにおける次の一歩に淀みがない、迷うべきことは何かをしっかりつかみ、迷うべきことを迷う。静かに、問題の核心をつかみ、その核心の答えを見出していく。

 このような考え方は、周りから見れば「躍動してるなぁ」と思われるもの。当然、そのまま「転職」や「キャリアアップ」に生きるのだ。(ITSUDATSU・黒澤伶)