【連載・住まい選びとマネー論・10】 ヤマダホールディングス(ヤマダHD)グループのヤマダホームズは10月27日、リンクジャパンが提供するスマートホーム統合アプリ「HomeLink」の戸建注文住宅での標準採用と、「ヤマダNEOBANK」の最長50年住宅ローン対応商品「YAMADAスマートハウス」を発表した。北海道、沖縄県を除く全国で販売する(離島や一部エリアを除く)。今回は、ヤマダHDグループ各社の連携で誕生した「YAMADAスマートハウス」がいかに画期的か、ヤマダデンキの「暮らしまるごと」戦略とあわせて説明しよう。
ヤマダHDが公表したCSR資料「2023年 統合報告書」によると、生活に欠かせない衣食住の「住」に的を絞った独自の「暮らしまるごと」戦略は、「2011年に住宅メーカーのエス・バイ・エル(現ヤマダホームズ)を子会社化して以来、本業の家電販売と並行しつつ地道に行ってきた基盤整備が、近年に至ってようやく整った実感があり、今後はその基盤を生かして成果に結びつける段階に入った」とし、そこで登場したのが、創エネ・蓄エネ・省エネを実現する戸建の住まい「YAMADAスマートハウス」だろう。
「YAMADAスマートハウス」は、家電、家具はもちろん、リフォーム、金融、EVに至るまで住空間全てのインフラをラインアップするヤマダHDグループのシナジーを最大化した次世代スタンダード住宅。スマートホーム統合アプリ「HomeLink」を標準装備し、条件に合わせた家電や住宅設備の自動制御、監視や見守り、遠隔コミュニケーションが可能なほか、HEMS、オンライン診療、ヘルスケアサービスなどが一つのアプリで利用できる。さらに、動く蓄電池(EV)、太陽光発電システム、V2H(Vehicle to Home)を標準装備することで、環境に配慮しつつ、万が一の災害発生時に、自家発電と蓄電池(EV)によって、支援が来るまでの期間、「自給自足」で生活できるようにする。
太陽光発電システムとの組み合わせに最適なオール電化(ガスを使わないエコキュートなどの給湯器+ガスを使わないIHクッキングヒーター)は賛否両論があるが、地震などの大規模災害対策としては有効だ。また、都市ガスに比べ、料金が割高なプロパンガスしか選べない地域では、オール電化にすることで電気代とガス代を合計した光熱費を削減できるメリットがある。蓄電池単体ではなく、「動く蓄電池」とみなしてEVをパッケージに取り入れた「YAMADAスマートハウス」は、2台目の自家用車としてEVの潜在的ニーズがあり、都市ガス未導入エリア向けの商品といえるだろう。
またヤマダデンキは、ヤマダデジタル会員を対象に、スマートフォンアプリの利用を前提としたとした銀行サービス「ヤマダNEOBANK」を提供している。NEOBANKは住信SBIネット銀行のBaaS(Banking as a Service)であり、預金や決済に加え、住宅ローンも取り扱っている。住信SBIネット銀行は23年8月4日から、住宅ローンの借入期間について、最長50年までの取り扱いを開始しており、今回発表した「YAMADAスマートハウス」の返済見本例は、この50年住宅ローンの利用を想定している。
50年住宅ローンもまた賛否両論が巻き起こっているが、両親や祖父母の資金援助を受けずに20代~30代前半で住宅を建てるには都合の良い商品である。なお、一般的に住宅ローンは住宅のみが対象となるが、「YAMADAスマートハウス」では、標準装備の各機器や家電などもすべて含めて設定できるという。現在、変動金利型の住宅ローン金利は史上最低水準となっており、条件付きで優遇適用時の金利を年0.2%前後まで引き下げる金融機関も出てきた。物価上昇・インフレも進みつつあり、こうした状況下では、住宅以外の費用の住宅ローン組み入れとは消費者にとって経済的メリットは大きい。
ヤマダホームズの「YAMADAスマートハウス」は、蓄電設備や工法、断熱性能などの違いで、松(プレミアム/オール電化)・竹(スタンダード)・梅(ベーシック)の3コースを取り揃え、税込3980万円(土地代・諸費用含まず)の松コースだと、ヤマダデンキで使えるヤマダポイント300万円分がもらえる。
成約特典として受け取ったヤマダポイントは、冷蔵庫、洗濯機といった暮らしに欠かせない家電はもちろん、近年、人気の高まっている2台目の冷蔵庫・冷凍庫、ロボット掃除機、電動アシスト自転車など、あると便利な家電の購入費用に充当できる。1ポイント1円として現金相当として使えるポイントを付与する成約特典は珍しくないが、「YAMADAスマートハウス」の場合、実質的に100~300万円分の値引きと見なせるだろう。
例えば、税込3980万円と土地代の合計を全額住宅ローンで支払う場合、年末の住宅ローン残高の0.7%を所得税から(一部、翌年の住民税)から最大13年間控除される。50年住宅ローンは、返済当初のローン残高の減りが遅いので、ポイントに加え、住宅ローンの借入者1人につき初年度最大控除額45万円(24年入居 長期優良住宅・低炭素住宅の場合)の住宅ローン控除を最大限受けられるというわけだ。また、ヤマダHD側にとって、ポイントの使用を目的としたヤマダデンキの来店者増加・売上増加が見込まれ、さまざまなニーズに応える大型店「LIFE SELECT」のさらなる出店を進めるきっかけともなる。
本連載の連載名「住まい選びとマネー論」は、住まいと金融(住宅ローン・決済・ポイント)を連携した「YAMADAスマートハウス」のようなサービス・商品を想定して名付けた。もちろん、記者はヤマダの「暮らしまるごと」戦略に賛成だ。ヤマダホームズ以外にも「スマートホーム」や「太陽光発電システム+オール電化+(EV)」に力を入れているハウスメーカーは少なくなく、ZEH(ゼッチ、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)については、国や自治体も普及を後押しする。ヤマダホームズによると、スマートハウス1000棟分のネットワークで小型の水発電所1基分を賄うことができ、新しいまちづくりと連携した「ヤマダスマートシティ」も想定しているという。
職住近接ニーズの高まりを受け、東京・湾岸エリアなど、都心の新興住宅地の人気が高まるなか、創エネ・蓄エネのスマートハウスやZEHの経済性や、IoTを活用した機器自動制御の実用性の向上によって戸建住宅の人気が高まると、新築・中古マンションの多いエリアが上位に入りがちな「住みたい街ランキング」の傾向も変わってくると大いに期待している。もちろん、新築マンションも創エネや省エネに考慮する物件が増えており、今後ますます、商品選びにあたって「省エネ」を意識せざるを得なくなるだろう。(BCN・嵯峨野 芙美)
4000坪超の大型店「LIFE SELECT」は今後スマートハウスも提案へ
ヤマダデンキは、“たのしい。くらしをシアワセにする、ぜんぶ。”をストアコンセプトに、家電や家具を実際に試せる体験・体感ブースを充実させた体験型店舗「LIFE SELECT」の出店を加速している。家電を中心に、家具・インテリア、リフォーム、日用品など、暮らしに関わる多種多様な商品とサービスを取り揃え、一部の大型店舗はホームセンター(ホームセンタームサシ・ビバホーム)やスーパー(イオンスタイル・ヤオコー他)と一体化し、買い回りも便利にできる店となっている。「LIFE SELECT」は2021年6月の熊本春日店を皮切りに全国33店舗(23年6月末時点)に拡大し、今後は4000坪超の大型店に絞って出店していく計画という。ヤマダHDが公表したCSR資料「2023年 統合報告書」によると、生活に欠かせない衣食住の「住」に的を絞った独自の「暮らしまるごと」戦略は、「2011年に住宅メーカーのエス・バイ・エル(現ヤマダホームズ)を子会社化して以来、本業の家電販売と並行しつつ地道に行ってきた基盤整備が、近年に至ってようやく整った実感があり、今後はその基盤を生かして成果に結びつける段階に入った」とし、そこで登場したのが、創エネ・蓄エネ・省エネを実現する戸建の住まい「YAMADAスマートハウス」だろう。
「YAMADAスマートハウス」は、家電、家具はもちろん、リフォーム、金融、EVに至るまで住空間全てのインフラをラインアップするヤマダHDグループのシナジーを最大化した次世代スタンダード住宅。スマートホーム統合アプリ「HomeLink」を標準装備し、条件に合わせた家電や住宅設備の自動制御、監視や見守り、遠隔コミュニケーションが可能なほか、HEMS、オンライン診療、ヘルスケアサービスなどが一つのアプリで利用できる。さらに、動く蓄電池(EV)、太陽光発電システム、V2H(Vehicle to Home)を標準装備することで、環境に配慮しつつ、万が一の災害発生時に、自家発電と蓄電池(EV)によって、支援が来るまでの期間、「自給自足」で生活できるようにする。
太陽光発電システムとの組み合わせに最適なオール電化(ガスを使わないエコキュートなどの給湯器+ガスを使わないIHクッキングヒーター)は賛否両論があるが、地震などの大規模災害対策としては有効だ。また、都市ガスに比べ、料金が割高なプロパンガスしか選べない地域では、オール電化にすることで電気代とガス代を合計した光熱費を削減できるメリットがある。蓄電池単体ではなく、「動く蓄電池」とみなしてEVをパッケージに取り入れた「YAMADAスマートハウス」は、2台目の自家用車としてEVの潜在的ニーズがあり、都市ガス未導入エリア向けの商品といえるだろう。
またヤマダデンキは、ヤマダデジタル会員を対象に、スマートフォンアプリの利用を前提としたとした銀行サービス「ヤマダNEOBANK」を提供している。NEOBANKは住信SBIネット銀行のBaaS(Banking as a Service)であり、預金や決済に加え、住宅ローンも取り扱っている。住信SBIネット銀行は23年8月4日から、住宅ローンの借入期間について、最長50年までの取り扱いを開始しており、今回発表した「YAMADAスマートハウス」の返済見本例は、この50年住宅ローンの利用を想定している。
50年住宅ローンもまた賛否両論が巻き起こっているが、両親や祖父母の資金援助を受けずに20代~30代前半で住宅を建てるには都合の良い商品である。なお、一般的に住宅ローンは住宅のみが対象となるが、「YAMADAスマートハウス」では、標準装備の各機器や家電などもすべて含めて設定できるという。現在、変動金利型の住宅ローン金利は史上最低水準となっており、条件付きで優遇適用時の金利を年0.2%前後まで引き下げる金融機関も出てきた。物価上昇・インフレも進みつつあり、こうした状況下では、住宅以外の費用の住宅ローン組み入れとは消費者にとって経済的メリットは大きい。
ヤマダホームズの「YAMADAスマートハウス」は、蓄電設備や工法、断熱性能などの違いで、松(プレミアム/オール電化)・竹(スタンダード)・梅(ベーシック)の3コースを取り揃え、税込3980万円(土地代・諸費用含まず)の松コースだと、ヤマダデンキで使えるヤマダポイント300万円分がもらえる。
成約特典として受け取ったヤマダポイントは、冷蔵庫、洗濯機といった暮らしに欠かせない家電はもちろん、近年、人気の高まっている2台目の冷蔵庫・冷凍庫、ロボット掃除機、電動アシスト自転車など、あると便利な家電の購入費用に充当できる。1ポイント1円として現金相当として使えるポイントを付与する成約特典は珍しくないが、「YAMADAスマートハウス」の場合、実質的に100~300万円分の値引きと見なせるだろう。
例えば、税込3980万円と土地代の合計を全額住宅ローンで支払う場合、年末の住宅ローン残高の0.7%を所得税から(一部、翌年の住民税)から最大13年間控除される。50年住宅ローンは、返済当初のローン残高の減りが遅いので、ポイントに加え、住宅ローンの借入者1人につき初年度最大控除額45万円(24年入居 長期優良住宅・低炭素住宅の場合)の住宅ローン控除を最大限受けられるというわけだ。また、ヤマダHD側にとって、ポイントの使用を目的としたヤマダデンキの来店者増加・売上増加が見込まれ、さまざまなニーズに応える大型店「LIFE SELECT」のさらなる出店を進めるきっかけともなる。
本連載の連載名「住まい選びとマネー論」は、住まいと金融(住宅ローン・決済・ポイント)を連携した「YAMADAスマートハウス」のようなサービス・商品を想定して名付けた。もちろん、記者はヤマダの「暮らしまるごと」戦略に賛成だ。ヤマダホームズ以外にも「スマートホーム」や「太陽光発電システム+オール電化+(EV)」に力を入れているハウスメーカーは少なくなく、ZEH(ゼッチ、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)については、国や自治体も普及を後押しする。ヤマダホームズによると、スマートハウス1000棟分のネットワークで小型の水発電所1基分を賄うことができ、新しいまちづくりと連携した「ヤマダスマートシティ」も想定しているという。
職住近接ニーズの高まりを受け、東京・湾岸エリアなど、都心の新興住宅地の人気が高まるなか、創エネ・蓄エネのスマートハウスやZEHの経済性や、IoTを活用した機器自動制御の実用性の向上によって戸建住宅の人気が高まると、新築・中古マンションの多いエリアが上位に入りがちな「住みたい街ランキング」の傾向も変わってくると大いに期待している。もちろん、新築マンションも創エネや省エネに考慮する物件が増えており、今後ますます、商品選びにあたって「省エネ」を意識せざるを得なくなるだろう。(BCN・嵯峨野 芙美)