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サウンドバーが用途の広さから好調、前年割れに苦しむテレビをしり目に【道越一郎のカットエッジ】

 テレビの音をリッチにするサウンドバーの販売が好調だ。若干の浮き沈みはあるものの、特に春以降伸びている。平均単価の上昇もあり、販売金額の伸びが目立つ。一方テレビ市場は、コロナ禍で生じた巣ごもり特需の反動減に苦しんでいる。ようやく出口が見えてきた感があるものの、販売は依然として前年割れ。こうした環境下でもサウンドバーは売れている。全国2300店舗の家電量販店やオンラインショップの実売データを集計する、BCNランキングで明らかになった。


 サウンドバーの販売前年比は、この1年でかなり上下した。9月は、台数105.8%、金額102.2%とまずまずの結果だった。昨年秋までは大きく前年を割れる場面も目立ったが、11月以降、回復の足取りがしっかりしてきた。特に目立つのが販売金額の回復だ。前年比で平均単価が上昇していることを受け、台数の伸びが今一つでも、金額は大幅に伸びている。例えば、昨年11月は、販売台数前年比は101.3%とほぼ前年並みにとどまったが、販売金額は128.0%と大幅増。この傾向は12月も継続し、金額で132.2%と大幅な伸びを示した。今年に入ってやや勢いが鈍化したものの、4月の新生活需要で台数、金額ともに二桁増を記録。以降、台数や金額で僅かに前年を割れる場面もあったが、おおむね前年比増を維持している。

 メーカー別の販売台数シェアでは、安定的に強いのがソニーだ。昨年からはややシェアを落としているものの、25%前後で推移している。この9月の販売台数シェアは27.3%でトップだった。売れ筋は平均単価(税抜き、以下同)が1万円を切る9400円と破格のHT-S100Fだ。サウンドバー全体で9月の平均単価はちょうど3万円。いかに安いかが分かる。低価格ながら基本的機能は備えており人気化した。同社の製品では、ミドルクラスのHT-X8500も売れている。立体的な音響で臨場感ある音を楽しめる製品ながら、平均単価3万400円と全体の単価と同水準の製品だ。
 

 2005年に「YSP-1」を発売しサウンドバーという製品カテゴリーを作ったのがヤマハだ。現在もこのカテゴリーでソニーとトップシェアを争っている。9月の販売台数シェアは23.7%で2位だった。ソニーにかなり水をあけられる時期もあったが、再びシェア差が小さくなり追いついてきた。売れ筋は平均単価1万2800円で低価格モデルのSR-C20Aだ。さらに、この9月に発売したSR-B30Aも売れている。平均単価2万6800円と、安めの価格設定ながら立体音響も楽しめ、声を聞きやすくする機能も改善した。シェア16.7%で3位を走るのが、DENONブランドのディーアンドエムホールディングスだ。昨年発売したDHT-S217が売れ筋。9月のサウンドバー機種別ランキングで最も売れたモデルだ。平均単価は2万2500円でこちらも比較的安め。本体底面に2つのサブウーハーを内蔵するのが特徴で、低音の再生に力を入れている。以下、4位がJBLブランドのハーマンインターナショナルで12.7%、5位がBOSEで6.2%だった。

 テレビは、大画面化が進むと同時に薄型化し軽量化してきた。特に薄型化は目を見張るものがある。しかし、スピーカーは居場所を失ってしまった。物理的に空気を震わせる必要があるため、いい音を鳴らすには一定の体積が必要だからだ。そこに現れた救世主がサウンドバー。テレビだけでは出せない迫力ある音を出すことができる。また、テレビの外付けスピーカーとしてだけでなく、Blutoothスピーカーとしてスマートフォン(スマホ)や、携帯オーディオなどと接続して使うことも可能。昔、一家に一台はあったラジカセやステレオの代わりとしてサウンドバーが機能している、ともいえる。サウンドバーの好調は当面続きそうだ。(BCN・道越一郎)