ポイント経済圏の争い au・ソフトバンクの新料金プランで混沌化 ドコモはマネックス証券と連携へ
【連載・住まい選びとマネー論・6】 2024年1月から新「NISA」制度がスタートする。この新制度開始に合わせるように、NTTドコモは24年1月4日(予定)に、5大オンライン証券の一つに数えられる有力インターネット証券会社のマネックス証券を連結子会社化。dポイント・dカード・dアカウントなどと証券サービスを連携させ、証券取引や資産残高に応じたポイント還元や、スマートフォン(スマホ)決済サービス「d払い」を通じた入出金や積立、dカードによる投信積立といった新たな金融サービスの提供を検討していく。
競合とは、マネックス証券の場合、今秋、国内株式(現物・信用)手数料無料化を打ち出したSBI証券と楽天証券を指す。名称から分かる通り、楽天証券は楽天グループのフィンテック分野の中核企業だ。一方、ドコモの場合、通信と金融・決済をセットにしたKDDI(au)の「auマネ活プラン」、PayPayの認知度を高さ・ユーザーの多さを通信契約に結び付けようとするソフトバンクの新料金プラン「ペイトク」だろう。
SBI証券と楽天証券の国内株式手数料無料化に対し、マネックス証券とauカブコム証券(「auマネ活プラン」の連携証券会社)は追随しないことを発表した。ただし、マネックス証券は、NISA口座開設者を対象に、すべてのNISA口座における取引手数料の無料化と、アプラスとの提携クレジットカード「マネックスカード」を利用した投信積立のポイント還元率(取引代金に対するポイント還元率)を、期間限定で最大2.2%へ引き上げることを打ち出した。NISAに限ると、いずれも手数料は無料で横並びとなる。そこにきて、ドコモとの資本業務提携である。
マネックス証券は今回のドコモとの資本業務提携を機に、21年頃から手数料競争を仕掛けてきたSBI証券・楽天証券のシェア拡大に待ったをかけ、ドコモの顧客基盤を生かして証券会社の規模の指標である「口座数」と「預かり資産残高」で、26年度の当初目標の上乗せを計画。具体的には、「500万口座・15兆円以上」を目指すとしている。ドコモの会員基盤(約9600万人)を考えると、目標値は低いようにも感じるが、「貯蓄から投資へ」の浸透には時間がかかるとみられ、現実的で妥当な目標といえそうだ。
▽SBI証券が三井住友カード他と組み合わせて「クレカ積立」提供中
※SBI証券はSBI新生銀行/住信SBIネット銀行と連携
▽ドコモが「THEO+ docomo」(SMBC日興証券)で「dカード積立」提供中
▽NTTドコモと三菱UFJ銀行が「dスマートバンク」を提供中
▽マネックス証券がマネックスカードで投信積立サービス提供中
※マネックス証券とドコモの連携は24年1月以降
▽楽天証券が楽天カードで投信積立サービス提供中
※楽天モバイル契約による特典は「SPU」(楽天市場のポイント還元率)に反映
▽auカブコム証券がau PAY カードで投信積立サービス提供中
▽auがauじぶん銀行の円普通預金金利が業界最高水準にアップする「auマネ活プラン」を提供中(23年9月から)
※PayPay証券にはPayPayアプリから簡単に加入できるが、23年10月現在、投信積立サービスは提供していない(PayPayポイントを使った投信積立は可能)
一方、ソフトバンクと楽天モバイルは、以前から通信サービスと自社ECや決済との連携による特典(ポイント還元)を前面に打ち出しており、対象決済時に「ペイトク特典」としてPayPayポイントを付与するソフトバンクの「ペイトク」は、PayPayの利用促進、またはPayPayカードの新規入会促進を目的としたプランといった印象だ。スマホのキャリア(通信事業者)を乗り換える際は、こうしたポイント経済圏の争いの流れを加味した上で、利用スタイルに合うキャリアを選ぶことをおすすめしたい。(BCN・嵯峨野 芙美)
■Profile
FPライター・sfmi
神奈川県生まれ。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。本連載では、街・人・お金に関する情報を中心に取り上げていきます。
マネックス証券・ドコモがそれぞれ競合に対抗
23年10月4日に結んだ資本業務提携契約にあわせてマネックスグループが公表した説明資料によると、3社(NTTドコモ・マネックスグループ・マネックス証券)は、マネックス証券の経営独立性を保ち、その企業理念やブランドを守りながら、ドコモの事業基盤を最大限活用してマネックス証券の中長期的成長を目指すとしている。競合に対して弱みや遅れを抱えるマネックスとドコモが手を結ぶことで、それぞれが競合に対抗する目論見のようだ。競合とは、マネックス証券の場合、今秋、国内株式(現物・信用)手数料無料化を打ち出したSBI証券と楽天証券を指す。名称から分かる通り、楽天証券は楽天グループのフィンテック分野の中核企業だ。一方、ドコモの場合、通信と金融・決済をセットにしたKDDI(au)の「auマネ活プラン」、PayPayの認知度を高さ・ユーザーの多さを通信契約に結び付けようとするソフトバンクの新料金プラン「ペイトク」だろう。
SBI証券と楽天証券の国内株式手数料無料化に対し、マネックス証券とauカブコム証券(「auマネ活プラン」の連携証券会社)は追随しないことを発表した。ただし、マネックス証券は、NISA口座開設者を対象に、すべてのNISA口座における取引手数料の無料化と、アプラスとの提携クレジットカード「マネックスカード」を利用した投信積立のポイント還元率(取引代金に対するポイント還元率)を、期間限定で最大2.2%へ引き上げることを打ち出した。NISAに限ると、いずれも手数料は無料で横並びとなる。そこにきて、ドコモとの資本業務提携である。
マネックス証券は今回のドコモとの資本業務提携を機に、21年頃から手数料競争を仕掛けてきたSBI証券・楽天証券のシェア拡大に待ったをかけ、ドコモの顧客基盤を生かして証券会社の規模の指標である「口座数」と「預かり資産残高」で、26年度の当初目標の上乗せを計画。具体的には、「500万口座・15兆円以上」を目指すとしている。ドコモの会員基盤(約9600万人)を考えると、目標値は低いようにも感じるが、「貯蓄から投資へ」の浸透には時間がかかるとみられ、現実的で妥当な目標といえそうだ。
一律ではない通信事業者と決済・ポイントと金融(銀行・証券)の関係
以前から4大共通ポイントと呼ばれるTポイント・dポイント・楽天ポイント・Pontaポイントと、スマホ決済サービス「PayPay」の決済などでたまるPayPayポイントを加えた「5大共通ポイント」について、通信事業者(ドコモ・au・楽天モバイル・ソフトバンク)を基準にクレジットカード会社・証券会社・銀行の組み合わせをまとめると下記のようになる。PayPayポイント以外は、SBI証券が「クレカ積立」と呼ぶ、クレジットカード決済による投資信託の積立購入(投信積立サービス)に欠かせないクレジットカードがポイント経済圏の中心となる。Tポイント→Vポイント(24年春統合予定)
通信事業者なし-三井住友カード他-SBI証券-三井住友銀行▽SBI証券が三井住友カード他と組み合わせて「クレカ積立」提供中
※SBI証券はSBI新生銀行/住信SBIネット銀行と連携
dポイント
ドコモ-dカード-マネックス証券※/SMBC日興証券-銀行なし(三菱UFJ銀行)▽ドコモが「THEO+ docomo」(SMBC日興証券)で「dカード積立」提供中
▽NTTドコモと三菱UFJ銀行が「dスマートバンク」を提供中
▽マネックス証券がマネックスカードで投信積立サービス提供中
※マネックス証券とドコモの連携は24年1月以降
楽天ポイント
通信事業者なし(楽天モバイル)-楽天カード-楽天証券-楽天銀行▽楽天証券が楽天カードで投信積立サービス提供中
※楽天モバイル契約による特典は「SPU」(楽天市場のポイント還元率)に反映
Pontaポイント
au-au PAY カード-auカブコム証券-auじぶん銀行(三菱UFJ銀行)▽auカブコム証券がau PAY カードで投信積立サービス提供中
▽auがauじぶん銀行の円普通預金金利が業界最高水準にアップする「auマネ活プラン」を提供中(23年9月から)
PayPayポイント
ソフトバンク-PayPayカード-証券会社なし(PayPay証券)-PayPay銀行※PayPay証券にはPayPayアプリから簡単に加入できるが、23年10月現在、投信積立サービスは提供していない(PayPayポイントを使った投信積立は可能)
スマホのキャリア選びはポイント経済圏選びに
ドコモは自社グループ内に銀行がなく、マネックス証券との資本業務提携後も、「auマネ活プラン」に相当する通信と金融をセットにしたプランは提供しないとみられる。それだけ、9月に始まった「auマネ活プラン」はオリジナリティの高い料金プランだ。一方、ソフトバンクと楽天モバイルは、以前から通信サービスと自社ECや決済との連携による特典(ポイント還元)を前面に打ち出しており、対象決済時に「ペイトク特典」としてPayPayポイントを付与するソフトバンクの「ペイトク」は、PayPayの利用促進、またはPayPayカードの新規入会促進を目的としたプランといった印象だ。スマホのキャリア(通信事業者)を乗り換える際は、こうしたポイント経済圏の争いの流れを加味した上で、利用スタイルに合うキャリアを選ぶことをおすすめしたい。(BCN・嵯峨野 芙美)
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FPライター・sfmi
神奈川県生まれ。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。本連載では、街・人・お金に関する情報を中心に取り上げていきます。