パナソニックは10月2日、家電事業の開発・製造・販売など関連部門が集結する「パナソニック目黒ビル」をオープンし、報道陣に公開した。新社屋は、事業部制で陥りやすい縦割り組織の壁を越えたり、アフターコロナの新しい働き方を実現するための職場環境を整備したり、新卒や中途採用で優秀な人材を確保したりする目的で設立。若手プロジェクトメンバーが2023年2月から構想したアイデアを反映しているのも、同社として新しい取り組みだ。
家電事業の新拠点には、事業会社であるパナソニック くらしアプライアンス社、空質空調社、エレクトリックワークス社、パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション、パナソニック エナジーのほか、流通部門のコンシューマーマーケティングジャパン本部、販売会社のパナソニック マーケティング ジャパン、海外マーケティング本部、パナソニック補聴器が入る。まさに家電事業の製販が組織の壁を越えて交わりあう拠点となる。
パナソニックの松下理一 副社長執行役員 くらしアプライアンス社社長は「かつてない形で一堂に会したB to Cの家電事業の拠点となる。また、時代の大きな変化の中、社員の働き方のありようにパナソニックとして向き合ったのも大きな特徴になる」と語った。
コロナ前の働き方に戻るのではなく、新しい働き方を実現するために「社員が自然と行きたくなる職場」を具現化したという。
「コロナ前は縦割りで分断された職場環境に課題があり、コロナ禍はオンライン会議の活用で利便性が向上する一方で、社員間のコミュニケーション不足などの課題も顕在化した。そして、アフターコロナでは、リアルや対面の価値が再認識され、オンラインとリアルのハイブリッドに変わっている」。
実際、パナソニック目黒ビルでも2300人の全員が出社しているわけではなく、部門や業務内容にもよるが平均して3割の出社率、7割の在宅勤務などとリモートワークが浸透している。そうした中で今回は若手プロジェクトチームが中心となり、「自然と行きたくなる職場」の空間づくりでアイデアを出し合った。
課題を克服するためのテーマは三つ。「組織間の活発なコミュニケーションの場づくり」と「柔軟かつ効率的なしごと環境づくり」「パナソニックらしさがあふれる空間づくり」を掲げた。
「リフレッシュ テラス」も、カジュアルな気分で仕事の緊張を和らげるスペースとなる。チェアなどの台数が少ないのが気になるが、前述の出社率のためだろう、今のところ特に予約する必要などはなく、出社したら自由に使えるそうだ。
「Tsumugu-ba」とネーミングされた10階は、フランクなコミュニケーション空間として、雑談や気軽な相談など、さまざまなメンバーとコミュニケーションがとれる。あえて低い敷居やデスク、ソファをレイアウトすることで安心感を与える。
8階には社員食堂もあり、健康を意識したヘルシーメニューを提供。飲食するスペースとしてだけでなく、ミーティングなどもできるようにランチタイム以外の時間帯も開放している。
そしてエスカレーターで2階に上ると、創業者である松下幸之助氏にいつでも会える。1939年に幸之助氏が社員に語り掛けたという「愉快に働いておられるか」という言葉。塔之岡常務は「今でいうゾーンに入る、フローな状態になることが、会社の発展と社員の成長につながると解釈している」と語る。
「行きたくなる職場」の環境を提供することで社員一人ひとりのウェルビーイングを実現できれば、今後の優秀な人材の獲得にもつながる――。大阪・門真市に本社を構えるパナソニック ホールディングスだが、東京都内の拠点に家電事業の関連部門を集結させたのは、今後の人材獲得でもメリットが活かせると見込む。
従来になかった発想が散りばめられたパナソニック目黒ビル。家電事業の新拠点から生み出される新しいプロダクツやサービスに期待したい。(BCN・細田 立圭志)
家電事業の組織の壁を越える
パナソニック目黒ビルは、品川区西五反田3丁目に立地し、地上25階、地下2階建てに約2300人が働く。最大2700人のキャパシティがある。家電事業の新拠点には、事業会社であるパナソニック くらしアプライアンス社、空質空調社、エレクトリックワークス社、パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション、パナソニック エナジーのほか、流通部門のコンシューマーマーケティングジャパン本部、販売会社のパナソニック マーケティング ジャパン、海外マーケティング本部、パナソニック補聴器が入る。まさに家電事業の製販が組織の壁を越えて交わりあう拠点となる。
パナソニックの松下理一 副社長執行役員 くらしアプライアンス社社長は「かつてない形で一堂に会したB to Cの家電事業の拠点となる。また、時代の大きな変化の中、社員の働き方のありようにパナソニックとして向き合ったのも大きな特徴になる」と語った。
コロナ前の働き方に戻るのではなく、新しい働き方を実現するために「社員が自然と行きたくなる職場」を具現化したという。
出社「3割」、リモートワーク「7割」のハイブリッドに
総務・人事担当の塔之岡康夫 くらしアプライアンス社常務は、コロナ禍から現在までの働き方の課題や変容を次のように説明した。「コロナ前は縦割りで分断された職場環境に課題があり、コロナ禍はオンライン会議の活用で利便性が向上する一方で、社員間のコミュニケーション不足などの課題も顕在化した。そして、アフターコロナでは、リアルや対面の価値が再認識され、オンラインとリアルのハイブリッドに変わっている」。
実際、パナソニック目黒ビルでも2300人の全員が出社しているわけではなく、部門や業務内容にもよるが平均して3割の出社率、7割の在宅勤務などとリモートワークが浸透している。そうした中で今回は若手プロジェクトチームが中心となり、「自然と行きたくなる職場」の空間づくりでアイデアを出し合った。
課題を克服するためのテーマは三つ。「組織間の活発なコミュニケーションの場づくり」と「柔軟かつ効率的なしごと環境づくり」「パナソニックらしさがあふれる空間づくり」を掲げた。
人工芝やルームランナーで非日常感
例えば、7階の「しばWORK」は人工芝が敷き詰められたスペースで、個人・チームを問わずに気分転換したりリラックスしながら仕事に取り組める。大きな窓際にはルームランナーが設置してあり、体を動かしながら会議に参加するなど非日常を味わえるようにした。なお、ルームランナーと一体型のデスクはボタン一つで昇降するタイプを採用している。「リフレッシュ テラス」も、カジュアルな気分で仕事の緊張を和らげるスペースとなる。チェアなどの台数が少ないのが気になるが、前述の出社率のためだろう、今のところ特に予約する必要などはなく、出社したら自由に使えるそうだ。
生産性の向上につなげる
22階は社員数の多いパナソニックらしい出張者のためのフロア「Tsudou-ba」だ。ソロワークブースやリラックスできるソファ、眺望のいいスペースを用意。生産性の向上につながる環境を提供しつつも、仕事の緊張を和らげる工夫を凝らしている。「Tsumugu-ba」とネーミングされた10階は、フランクなコミュニケーション空間として、雑談や気軽な相談など、さまざまなメンバーとコミュニケーションがとれる。あえて低い敷居やデスク、ソファをレイアウトすることで安心感を与える。
8階には社員食堂もあり、健康を意識したヘルシーメニューを提供。飲食するスペースとしてだけでなく、ミーティングなどもできるようにランチタイム以外の時間帯も開放している。
組織の壁を越えるための「仕掛け」
4~7階は螺旋階段で自由に行き来できる吹き抜けになっている「FREE LOUNGE」となる。まさに組織の壁を越えたコミュニケーションを生むための仕掛けとなっている。ところどころにアートを取り入れているのも、遊び心あふれ、活気ある職場とするためだ。パナソニックの原点にいつでも返れる
最後の「パナソニックらしさあふれる空間」では、1階で社員自身が製品に触れられるように家電製品を展示。住居を再現した空間やIoTによる機器連携が体験できる部屋も設けている。そしてエスカレーターで2階に上ると、創業者である松下幸之助氏にいつでも会える。1939年に幸之助氏が社員に語り掛けたという「愉快に働いておられるか」という言葉。塔之岡常務は「今でいうゾーンに入る、フローな状態になることが、会社の発展と社員の成長につながると解釈している」と語る。
「行きたくなる職場」の環境を提供することで社員一人ひとりのウェルビーイングを実現できれば、今後の優秀な人材の獲得にもつながる――。大阪・門真市に本社を構えるパナソニック ホールディングスだが、東京都内の拠点に家電事業の関連部門を集結させたのは、今後の人材獲得でもメリットが活かせると見込む。
従来になかった発想が散りばめられたパナソニック目黒ビル。家電事業の新拠点から生み出される新しいプロダクツやサービスに期待したい。(BCN・細田 立圭志)