増え続ける訪日外国人にいざ対応しようと思うと言語が通じず苦慮している方も少なくないのでは。語学学習で地道に努力したり、手っ取り早くスマホアプリで対応するケースもあるが、この訪日外国人観光客数増加の時勢に市場を回復している製品群がある。「ポケトーク」に代表される音声翻訳機市場だ。
訪日外国人観光客数はデータ上でも増加が見て取れる。JNTO(日本政府観光局)の調査では23年1~5月までの訪日外国人観光客数は合計で約758万人。既に22年1~12月の合計人数(約248万人)の約3倍に増えている。為替レートが円安に動き続けているのも要因だろうが、23年4月29日を以て、コロナ対策で日本国内に入国する際に必要だったワクチン接種証明書、出国前検査証明書の提出が必要なくなったことで入国手続きが緩和されたことも影響しているのだろう。
全国の家電量販店やネットショップからデジタル家電などの実売データを収集・集計している「BCNランキング」を使って、20年8月の音声翻訳機の販売規模を基点とした指数推移をみると、21~22年はおおよそ0.4~0.6の指数で推移している。平たく言えば「20年8月の販売規模よりも、21~22年各月は4~6割も市場規模が減っている」ことを意味している。
20年8月もコロナ禍の緊急事態宣言第4回目(7月12日~9月30日)が出ている最中で、海外渡航はもとより、不要不急の外出を控えるように、との政府や地方自治体からの提言があったタイミングで、決して旺盛に音声翻訳機が売れる状況ではなかった。しかしそれ以上に21~22年は市場が悪化していたのだ。
市場が転換したのは23年4月。販売指数は1.2まで回復し、以後は20年8月の規模を上回る形で推移しており、ようやく20年8月当時の販売規模まで回復したと言える。
音声翻訳機市場を振り返ると、市場が活性化したのは17年12月。当時ソースネクストが発売し、お笑いBIG3の1人がイメージキャラクターとして話題になった「ポケトーク」を皮切りに、元FREETEL社長の増田氏が立ち上げたTAKUMI JAPAN、オフィス文具用品で有名なキングジムなど30社近くが参入して賑わっていた。
しかし前述のコロナ禍で訪日外国人観光客数・国外出国観光客数が激減した後は生産中止や販売終了に追い込まれるなどし、現在のメーカー数は10社に満たない。結果、音声翻訳機市場は寡占化が進み、23年1~7月ではポケトークが94.8%と圧倒的シェアを獲得している状況だ。
機種別ランキングでもポケトークの圧倒的な強さが見てとれる。8位と10位はキングジムの「ワールドスピーク」、他はすべてポケトークが占めている。
なお、ポケトークは海外での利用を想定しているため、2年間のグローバル通信付きの製品が多い。2年経過後は手続きを行い、内蔵SIMカードの延長手配を行うことで継続して利用が可能だが、Wi-Fiやテザリングで接続すれば利用可能とのことなので、久しぶりの海外旅行先で契約期間が切れていたとしても落ち着いて使用しよう。
音声翻訳機市場はポケトークにシェアが集中している状況だが、翻訳という手段においてはこの数年のAI技術の進歩により、スマートフォンの翻訳アプリも性能が進化している。専用機の市場がスマホに食い荒らされるケースは携帯オーディオ、デジカメ、ICレコーダーなど過去にも例がある。音声翻訳機市場も同じ道を辿るのか、独自の性能を進化させて生き残るのか、行く末を今後も見守っていきたい。(BCN・栃木 亮範)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。
訪日外国人観光客数に左右される音声翻訳機市場
2023年5月に新型コロナウイルス感染症の感染法上の分類が5類に引き下げられ、通勤や客先を訪問する機会も増えてきた。通勤時の乗り継ぎに使う東京の上野駅、帰宅途中にふらっと立ち寄る秋葉原駅、新幹線乗車時の東京駅・・・どの駅でも降りて思うのは外国人観光客の多さだ。各地で訪日外国人観光客を見かける度、彼らが数ある国の中から日本を選択して訪日したことを思うと、非常に喜ばしく、歓迎したいと思うこの頃である。訪日外国人観光客数はデータ上でも増加が見て取れる。JNTO(日本政府観光局)の調査では23年1~5月までの訪日外国人観光客数は合計で約758万人。既に22年1~12月の合計人数(約248万人)の約3倍に増えている。為替レートが円安に動き続けているのも要因だろうが、23年4月29日を以て、コロナ対策で日本国内に入国する際に必要だったワクチン接種証明書、出国前検査証明書の提出が必要なくなったことで入国手続きが緩和されたことも影響しているのだろう。
全国の家電量販店やネットショップからデジタル家電などの実売データを収集・集計している「BCNランキング」を使って、20年8月の音声翻訳機の販売規模を基点とした指数推移をみると、21~22年はおおよそ0.4~0.6の指数で推移している。平たく言えば「20年8月の販売規模よりも、21~22年各月は4~6割も市場規模が減っている」ことを意味している。
20年8月もコロナ禍の緊急事態宣言第4回目(7月12日~9月30日)が出ている最中で、海外渡航はもとより、不要不急の外出を控えるように、との政府や地方自治体からの提言があったタイミングで、決して旺盛に音声翻訳機が売れる状況ではなかった。しかしそれ以上に21~22年は市場が悪化していたのだ。
市場が転換したのは23年4月。販売指数は1.2まで回復し、以後は20年8月の規模を上回る形で推移しており、ようやく20年8月当時の販売規模まで回復したと言える。
30社が参入して賑わっていた市場も10社に満たない規模に
音声翻訳機市場を振り返ると、市場が活性化したのは17年12月。当時ソースネクストが発売し、お笑いBIG3の1人がイメージキャラクターとして話題になった「ポケトーク」を皮切りに、元FREETEL社長の増田氏が立ち上げたTAKUMI JAPAN、オフィス文具用品で有名なキングジムなど30社近くが参入して賑わっていた。
しかし前述のコロナ禍で訪日外国人観光客数・国外出国観光客数が激減した後は生産中止や販売終了に追い込まれるなどし、現在のメーカー数は10社に満たない。結果、音声翻訳機市場は寡占化が進み、23年1~7月ではポケトークが94.8%と圧倒的シェアを獲得している状況だ。
機種別ランキングでもポケトークの圧倒的な強さが見てとれる。8位と10位はキングジムの「ワールドスピーク」、他はすべてポケトークが占めている。
なお、ポケトークは海外での利用を想定しているため、2年間のグローバル通信付きの製品が多い。2年経過後は手続きを行い、内蔵SIMカードの延長手配を行うことで継続して利用が可能だが、Wi-Fiやテザリングで接続すれば利用可能とのことなので、久しぶりの海外旅行先で契約期間が切れていたとしても落ち着いて使用しよう。
音声翻訳機市場はポケトークにシェアが集中している状況だが、翻訳という手段においてはこの数年のAI技術の進歩により、スマートフォンの翻訳アプリも性能が進化している。専用機の市場がスマホに食い荒らされるケースは携帯オーディオ、デジカメ、ICレコーダーなど過去にも例がある。音声翻訳機市場も同じ道を辿るのか、独自の性能を進化させて生き残るのか、行く末を今後も見守っていきたい。(BCN・栃木 亮範)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。