製品を値上げする際、あらかじめ宣言するほうがいいのか、宣言せずジリジリ上げていくほうがいいのか……。ICレコーダー市場の価格戦略で、上位2社で明暗が分かれた。トップを走るOMデジタルソリューションズ(OMDS)は、この1年でジリジリと単価を上昇させつつトップシェアを維持。結果的に3割弱の単価上昇に成功した。一方、2位ソニーは2回の宣言とともに値上げを実行。しかし、値上げ後に単価の維持に失敗。値上げ直後に大きくシェアを失った上、1年後の単価上昇も1割強にとどまった。全国およそ2300店舗の家電量販店やカメラ量販店、オンラインショップなどの実売データを集計するBCNランキングで明らかになった。
このところ、ICレコーダー市場は伸び悩んでいる。7月の販売前年比は、金額が105.5%と前年を上回ったが、台数が90.8%と前年割れ。2月には台数と金額がそろって前年を上回り、一旦回復の兆しを見せた。しかし、3月以降は再び台数の前年割れが続いている。デジカメと同様、ICレコーダーもスマートフォン(スマホ)に市場を奪われている機器の一つ。ちょっとした録音はスマホで完結するため、専用機ならではのメリットを消費者にどう示すかで苦戦している。
過去13か月で販売台数が前年を上回ったのは、昨年8月と今年2月の2回だけ。いずれもソニーの値上げを前にした駆け込み購入の影響だった。足元の販売台数は、この5月の前年比82.0%を底に、徐々にマイナス幅を縮小。この7月は90.8%と1桁マイナスまでには戻している。一方、販売金額前年比は4月に109.4%を記録したほか、6月、7月もプラス。コンスタントに前年を上回るペースはつかめてきた。背景は、平均単価(税抜き、以下同)の上昇。昨年7月の8500円からこの7月には1万円に達している。
単価上昇のきっかけはソニーの値上げだ。昨年9月、ICレコーダー8機種を値上げ。さらにこの2月、前回の7機種を含む8機種を値上げした。しかし2回とも、値上げ実施後は平均単価が維持できず、ダラダラと下がる傾向が続いている。その結果、昨年7月とこの7月を比較した平均単価の上昇率は10.4%にとどまった。一方OMDS製品は、ジリジリと単価が上昇。昨年7月の6600円から、この7月には8500円と28.4%も上昇した。このため、市場全体の平均単価も1年で16.8%の上昇を果たした。
こうした単価変動は販売台数シェアにも大きく影響した。もともとトップシェアOMDSと2位ソニーは僅差でトップ争いを展開していた。特に昨年8月は、両者のシェアは2ポイント差まで接近するほどだった。しかし昨年9月の値上げをきっかけにソニーはシェアを失い、10月には23.5%まで下落。OMDSとの差が34.2ポイントまで開いた。しかし、その後徐々にシェアを戻し、OMDSと4.1ポイント差まで再接近してきた。一方OMDSは、昨年10月のピークに57.8%を記録。以降シェアは下降トレンドが続いているものの、この7月でも41.8%と、依然トップシェアを維持している。
大々的に値上げを宣言し一旦ガクッと単価を上げ、その後もとの水準に近づいていくパターンで値上げを行ったソニー。宣言で値上げ直前は駆け込み購入がみられるなどの一時的効果はあった。一方、徐々に価格を上昇させてきたOMDS。一時的な売り上げ増はなかったものの、ソニーの値上げを受けシェアを拡大。単価上昇率もソニーを大きく上回った。消費者からすれば、上げるなら上げるとはっきり言ってもらった方が分かりやすい。ジリジリと価格が上がっていくと買い時も難しい。しかし、マーケティング的観点からすれば、結果を出したのはOMDS。ICレコーダーのマーケティングでは、OMDSが一旦の勝利を収めたといっていいだろう。(BCN・道越一郎)
このところ、ICレコーダー市場は伸び悩んでいる。7月の販売前年比は、金額が105.5%と前年を上回ったが、台数が90.8%と前年割れ。2月には台数と金額がそろって前年を上回り、一旦回復の兆しを見せた。しかし、3月以降は再び台数の前年割れが続いている。デジカメと同様、ICレコーダーもスマートフォン(スマホ)に市場を奪われている機器の一つ。ちょっとした録音はスマホで完結するため、専用機ならではのメリットを消費者にどう示すかで苦戦している。
過去13か月で販売台数が前年を上回ったのは、昨年8月と今年2月の2回だけ。いずれもソニーの値上げを前にした駆け込み購入の影響だった。足元の販売台数は、この5月の前年比82.0%を底に、徐々にマイナス幅を縮小。この7月は90.8%と1桁マイナスまでには戻している。一方、販売金額前年比は4月に109.4%を記録したほか、6月、7月もプラス。コンスタントに前年を上回るペースはつかめてきた。背景は、平均単価(税抜き、以下同)の上昇。昨年7月の8500円からこの7月には1万円に達している。
単価上昇のきっかけはソニーの値上げだ。昨年9月、ICレコーダー8機種を値上げ。さらにこの2月、前回の7機種を含む8機種を値上げした。しかし2回とも、値上げ実施後は平均単価が維持できず、ダラダラと下がる傾向が続いている。その結果、昨年7月とこの7月を比較した平均単価の上昇率は10.4%にとどまった。一方OMDS製品は、ジリジリと単価が上昇。昨年7月の6600円から、この7月には8500円と28.4%も上昇した。このため、市場全体の平均単価も1年で16.8%の上昇を果たした。
こうした単価変動は販売台数シェアにも大きく影響した。もともとトップシェアOMDSと2位ソニーは僅差でトップ争いを展開していた。特に昨年8月は、両者のシェアは2ポイント差まで接近するほどだった。しかし昨年9月の値上げをきっかけにソニーはシェアを失い、10月には23.5%まで下落。OMDSとの差が34.2ポイントまで開いた。しかし、その後徐々にシェアを戻し、OMDSと4.1ポイント差まで再接近してきた。一方OMDSは、昨年10月のピークに57.8%を記録。以降シェアは下降トレンドが続いているものの、この7月でも41.8%と、依然トップシェアを維持している。
大々的に値上げを宣言し一旦ガクッと単価を上げ、その後もとの水準に近づいていくパターンで値上げを行ったソニー。宣言で値上げ直前は駆け込み購入がみられるなどの一時的効果はあった。一方、徐々に価格を上昇させてきたOMDS。一時的な売り上げ増はなかったものの、ソニーの値上げを受けシェアを拡大。単価上昇率もソニーを大きく上回った。消費者からすれば、上げるなら上げるとはっきり言ってもらった方が分かりやすい。ジリジリと価格が上がっていくと買い時も難しい。しかし、マーケティング的観点からすれば、結果を出したのはOMDS。ICレコーダーのマーケティングでは、OMDSが一旦の勝利を収めたといっていいだろう。(BCN・道越一郎)