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酷暑の夏、PCの「水冷クーラー」市場に異変! 「Deepcool」がシェア1位に躍進

販売戦略

2023/07/27 06:00

 夏を迎え、PCを自作する人に向けて販売しているPCパーツ市場で異変が起きている。全国約2300店舗の家電量販店やネットショップの実売データを集計する「BCNランキング」によると、ファン・クーラー市場の中における水冷メーカー別販売台数シェアで、中国のDeepcoolが2023年上半期(1~6月)に初めてトップに躍り出た。

PCのCPUを冷やすCPUクーラー(左)と、
ラジエーターを通して冷却水で冷やす水冷クーラー(右)

「ケースファン」や「CPUクーラー」より「水冷クーラー」が高いのは?

 PCパーツにおけるファン・クーラーとは、PCケース内の空気を換気したり、発熱したCPUやSSDなどの温度を下げるために取り付ける部品として、PCを自作・カスタマイズする人にとっては必須のパーツである。これがないとCPUやPCケース内の温度を下げられず、パフォーマンスが落ちることはもとより、CPUの熱暴走で回路が焼き切れ、動作不能に陥ることすらある。

 ファン・クーラーのタイプはさまざまある。PCケース内を扇風機型のファンから発生する風で冷却する空冷用のケースファンや、ファンをCPUに直接取り付けて、風によって冷やすCPUクーラー、CPUにラジエーターをセットして、冷却水を通してCPUを冷やす水冷クーラーなどが存在する。

 ファン・クーラー市場全体を俯瞰するために、BCNランキングからファン・クーラーのタイプ別販売数量構成比を算出したのが図1となる。
 
図1 ファン・クーラー市場におけるタイプ別販売台数構成比
(23年1~6月)

 23年1~6月の構成比では、ケースファンが最も高く50.4%の半数を占める。PCケースの大きさにも左右されるが、自作用PCケース内をいかに効率よく冷やすかが求められるため、1台のPCケースに複数のファンを取り付けるケースも多いためと思われる。平均単価は2300円と、比較的購入しやすいのも特徴だ。

 次いでCPUクーラーが26.2%、水冷クーラーが14.4%と続く。水冷クーラーの平均単価は4300円であるのに対し、水冷クーラーは1万8100円。他のファン・クーラーと比べてもずば抜けて高い。

 理由としては、冷却性能は通常の空冷CPUクーラーと比べて高い。例えるなら、熱い鉄板を水で冷やすか、息を吹きかけて冷やすかでは、どちらが確実で早いかは容易に想像できるだろう。加えて、通常のCPUクーラーよりも静音性が高い点も、水冷クーラーがそれなりに価格が高い理由と言えるだろう。

 ただ、壊れて冷却液が漏れだすとCPUなど他のパーツにも影響を及ぼすため、日々気を付けて使ったり、こまめなメンテナンスが必要など、扱うのに専門性を要する製品でもある。おまけに冷却水を通す配管の設置スペースを多く取ることも考慮する必要がある。
 

上位6社中、最下位だったDeepcoolがトップの座に

図2 2021年上半期(1~6月)~23年上半期(1~6月)の
メーカー別台数シェア推移

 次に、21~23年の水冷クーラーにおけるメーカー別シェア(図2)を見てみよう。21年上半期(1~6月)は台湾のCorsairが29.4%、米国のNZXTが21.5%、台湾Cooler Masterが16.6%と続いた。以下、MSIとAUSUの5.6%、中国のDeepcoolの4.5%と続いた。

 勢力図が一変したのは22年の下半期(7~12月)だ。それまで上位6社の中で最下位だった中国のDeepcoolのシェアが15ポイントも上昇したのだ。23年上半期(1~6月)は25.6%まで上昇し、ついにトップシェアを獲得した。

 21年上半期に1位だったCorsairは、その後シェアを下げ続け、23年上半期にはかつての半分以下の13.4%(シェア3位)まで下落。再びシェアを拡大するための打ち手があるのかどうかが気になる。21年上半期に2位だったNZXTもDeepcoolの波に押され、23年上半期は1位の座を明け渡すことになった。
 

シェアも平均単価も高い「Deepcool」

図3 23年1~6月における
水冷クーラー機種別ランキング

 現在売れている水冷クーラーの上位10機種を示したのが図3だ。上位10製品中、6製品をDeepcoolが占めて圧倒している状況がわかる。かろうじてCooler Masterが3位に1機種、Corsairが6位に1機種、NZXT製品が8位と10位に2機種入っている。

 しかも、他社に比べてDeepcoolの平均単価は1万4000円~1万8200円と高い。販売数量シェアも平均単価も高いということは、Deepcoolの付加価値がユーザーにも受け入れられていることがわかる。

 いずれにしても上位10機種で共通するのは、ARGBライティング機能(アドレサブルRGB=指定の色を複数接続デバイスに送る機能)を搭載し、ファンやラジエーター部分が七色に光ること。もはや自作PCでは、RGBライティングでド派手に光る製品が当たり前の様相になりつつある。
 
Deepcoolのシェア躍進をけん引する「LS720」

 水冷クーラーの構成比は14.4%とまだ低いものの、ここ最近の異常気象による酷暑を経験すれば、あらためてPCの冷却性能も見直されるのではないだろうか。あらためて、自作・カスタマイズPCユーザーの方は、PCの温度管理にも気を付けて最適なファン・クーラーで快適なデジタルライフを送ってほしい。(BCN・栃木 亮範)
 
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