売れるモバイルプロジェクター、Ankerがシェア2位常連に

 6月、プロジェクターの販売台数が、1年ぶりで前年並み水準まで戻ってきた。販売金額は2桁増で平均単価もジリ上げ。コロナ禍特需の反動減からようやく脱しつつある。上位メーカーの顔触れも一変。新ジャンルのモバイルプロジェクターが市場回復を後押ししている。全国2300店舗の家電量販店やネットショップの売り上げを集計するBCNランキングで明らかになった。


 プロジェクター市場はこの6月、販売台数は前年比で100.0%にとどまったものの、販売金額は115.6%と2桁増を記録した。この1年、単価の上昇とともに販売金額こそ2桁増を記録する月はあったが、販売台数が伸び悩んでいた。台数、金額とも100%台に戻したのは昨年7月以来1年ぶりだ。4K対応モデルの構成比が14%程度まで上昇していることもあって、平均単価(税抜き、以下同)も7万9800円と、8万円付近で推移している。
 

 メーカーシェアも2位以降で動きがあった。2020年6月時点では、トップは31.6%でエプソン。2位はBenQジャパンで17.1%、3位がLGエレクトロニクスで12.3%だった。この6月のシェアでは、トップは変わらずエプソンで46.2%。2位には20.3%でAnkerがつけた。他社にはないユニークな製品を武器に3年前のシェア4.4%で5位からの大躍進だ。3位以下のメーカーは、すべて5%未満のシェアに落ち込んでいる。3年の間にエプソンとAnkerの寡占が進んだ。
 
6月、最も売れたプロジェクターはエプソンの「EB-W06」。
2位はAnkerの「Nebula Capsule II」(右)だった

 トップシェア、エプソンの売れ筋は、6万円台前半でWXGAの「EB-W06」。ビジネスでも家庭でも利用しやすい。6月で最も売れたトップシェアモデルだ。その他、XGAで4万円前後の「EB-E01」も人気だ。ホームユース中心でスピーカー内蔵モデルもある「dreamio」シリーズは、10万円前後と比較的高価なため、売れ行きはおとなしい。

 一方、この3年でぐいぐいとシェアを伸ばしてきたAnker。最も売れているのが、バッテリー内蔵で持ち運びができるモバイルプロジェクター「Nebula Capsule II」だ。6万円弱と手ごろな価格ながら、フルHDの解像度で、Android TVを搭載。本体だけでストリーミングコンテンツが視聴できるだけでなく、別売のAndroid TV・ワイヤレス接続に対応したチューナーをつなげると、地上波テレビも楽しめる。

 画質以外の機能軸で、新たな付加価値を提供する製品が登場し始めているプロジェクター。新興勢力のさらなる売り上げ増が進めば、市場の再活性化も期待できそうだ。(BCN・道越一郎)