2023年も7月に入り折り返しを迎えた。家電量販店・ネットショップの実売データを集計する「BCNランキング」でも23年1~6月の上半期の集計が完了。中でも液晶テレビと有機ELテレビを合わせた薄型テレビ、とりわけ4K以上のテレビ市場において上半期は、シャープが2位に後退し、TVS REGZAがシェアトップを奪取する激戦の様相を呈した。
4Kテレビ(8K含む、以下4Kテレビ)市場は近年各メーカーの開発も進み普及期に入っていることから価格も下がり、薄型テレビ市場における販売台数構成比は1~6月で57.2%と過半数を超えている。4K以上のテレビが当たり前に売れている時代に突入している。
各メーカーもこの4Kテレビ市場でいかにシェアを獲得するかがカギとなる。従来、「テレビといえば亀山モデルのシャープ」と呼ばれるほどテレビ市場でシェアトップに君臨していたシャープが、23年上半期の4Kテレビ市場では2位に後退。代わってTVS REGZAがトップシェアを獲得した。
22年の年間シェア争いでも、既にTVS REGZAの勢いはあった。BCN AWARD 2023(22年1~12月集計値)における「薄型テレビ(4K以上)部門」で、シャープとTVS REGZAのシェアはどちらも23.2%。正確には小数点2位以下の数値の差でシャープが辛くも逃げ切って年間シェア1位を獲得したという状況だった。ところが、23年上半期はTVS REGZAに2.6%の差を開けられ、ついにシャープの手からシェア1位は離れてしまった。
3サイズ帯におけるメーカー別の販売シェアと平均単価では、40型台ではシャープが28.5%、TVS REGZAが25.4%。平均単価もシャープが8万5000円、TVS REGZAが8万3000円とほぼ差がない。ちなみに、18.8%で3位のパナソニックの平均単価は12万9000円とかなり健闘している。
問題は一番のボリュームゾーンで主戦場の50型台だ。シャープはシェア21.2%、単価が12万5000円に対して、TVS REGZAは27.9%、単価が10万2600円となり、シャープとTVS REGZAでは平均単価で2万2400円の大きな隔たりがある。
消費者の購入・製品選定意識にブランドの好みはあると思うが、単純な価格勝負となると同じインチ帯で2万2400円も安いTVS REGZA製品に注目してしまうのは自然の心理であろう。このボリュームゾーンにおける価格戦略において、攻めの販売戦略をとったTVS REGZAを相手に、シャープが後手に回ってしまったのが要因ではないだろうか。
もっとも、3位のソニーは同50型台でシェア18.6%、平均単価が16万3000円となっており、シャープより3万8000円も高い中、シェア差はシャープと2.6ポイントしか違わない。ソニーは以前から大型インチサイズに集中し、販売台数シェアより利益を確保する戦略を採りながらも、実際にはシェアを獲得していた点で、かなり50型台の市場に力を入れていたことがうかがえる。
ちなみに、60型台以上ではソニーのシェアも平均単価も高く、今後売れ筋のインチサイズ帯がさらに大型化するにつれ、ソニーの存在感も大きくなってくるだろう。
シャープが5月11日に発表した23年3月期連結決算は当期損益が2608億円の赤字だった。要因は円安と堺市パネル工場の減損損失とされている中、平均単価をTVS REGZA並み、もしくはそれ以上下げるのは難しいのではないか。
既にTVS REGZAは9月に開催されるラグビーワールドカップに向け、7月からキャンペーンを開始して臨戦態勢を取っている。23年はTVS REGZAの天下に終わるのか、またはシャープが下半期に巻き返して年間シェア1位の座をキープするのか。テレビ市場から目が離せない。(BCN・栃木亮範)
シェア争いは激しく
BCNランキングでは、薄型テレビ市場を集計する際、表示画素数が4K(3840×2160)以上とフルハイビジョン(1920×1080)以下で分けている。4Kテレビ(8K含む、以下4Kテレビ)市場は近年各メーカーの開発も進み普及期に入っていることから価格も下がり、薄型テレビ市場における販売台数構成比は1~6月で57.2%と過半数を超えている。4K以上のテレビが当たり前に売れている時代に突入している。
各メーカーもこの4Kテレビ市場でいかにシェアを獲得するかがカギとなる。従来、「テレビといえば亀山モデルのシャープ」と呼ばれるほどテレビ市場でシェアトップに君臨していたシャープが、23年上半期の4Kテレビ市場では2位に後退。代わってTVS REGZAがトップシェアを獲得した。
22年の年間シェア争いでも、既にTVS REGZAの勢いはあった。BCN AWARD 2023(22年1~12月集計値)における「薄型テレビ(4K以上)部門」で、シャープとTVS REGZAのシェアはどちらも23.2%。正確には小数点2位以下の数値の差でシャープが辛くも逃げ切って年間シェア1位を獲得したという状況だった。ところが、23年上半期はTVS REGZAに2.6%の差を開けられ、ついにシャープの手からシェア1位は離れてしまった。
シャープの明暗を分けた、ボリュームゾーンの50型台
薄型テレビ(4K以上)におけるインチサイズの構成比を見よう。23年1~6月では50型台が全体の44.6%と最も販売ボリュームが大きく、次いで40型台の33.7%、60型台の16.9%と続く。この3サイズ帯だけで市場の95.2%の構成比を占めている。3サイズ帯におけるメーカー別の販売シェアと平均単価では、40型台ではシャープが28.5%、TVS REGZAが25.4%。平均単価もシャープが8万5000円、TVS REGZAが8万3000円とほぼ差がない。ちなみに、18.8%で3位のパナソニックの平均単価は12万9000円とかなり健闘している。
問題は一番のボリュームゾーンで主戦場の50型台だ。シャープはシェア21.2%、単価が12万5000円に対して、TVS REGZAは27.9%、単価が10万2600円となり、シャープとTVS REGZAでは平均単価で2万2400円の大きな隔たりがある。
消費者の購入・製品選定意識にブランドの好みはあると思うが、単純な価格勝負となると同じインチ帯で2万2400円も安いTVS REGZA製品に注目してしまうのは自然の心理であろう。このボリュームゾーンにおける価格戦略において、攻めの販売戦略をとったTVS REGZAを相手に、シャープが後手に回ってしまったのが要因ではないだろうか。
もっとも、3位のソニーは同50型台でシェア18.6%、平均単価が16万3000円となっており、シャープより3万8000円も高い中、シェア差はシャープと2.6ポイントしか違わない。ソニーは以前から大型インチサイズに集中し、販売台数シェアより利益を確保する戦略を採りながらも、実際にはシェアを獲得していた点で、かなり50型台の市場に力を入れていたことがうかがえる。
ちなみに、60型台以上ではソニーのシェアも平均単価も高く、今後売れ筋のインチサイズ帯がさらに大型化するにつれ、ソニーの存在感も大きくなってくるだろう。
シャープが5月11日に発表した23年3月期連結決算は当期損益が2608億円の赤字だった。要因は円安と堺市パネル工場の減損損失とされている中、平均単価をTVS REGZA並み、もしくはそれ以上下げるのは難しいのではないか。
既にTVS REGZAは9月に開催されるラグビーワールドカップに向け、7月からキャンペーンを開始して臨戦態勢を取っている。23年はTVS REGZAの天下に終わるのか、またはシャープが下半期に巻き返して年間シェア1位の座をキープするのか。テレビ市場から目が離せない。(BCN・栃木亮範)