銃を撃つことで感じる、その潜在的な恐怖

オピニオン

2023/07/13 18:30

 銃は恐ろしい。6月に岐阜市にある陸上自衛隊の射撃場で起きた事件で、改めて思い知った。18歳の自衛官候補生が2人の自衛官を銃で殺害してしまった。銃を扱う、ということは、常にこうしたことが起こる可能性がある。海外の屋外や屋内の射撃場で拳銃からライフルまでさまざまな銃を試射したが、屋外のシューティングレンジで、特にその潜在的な恐怖を感じる。

 屋内のシューティングレンジでは、銃は鎖でガチガチに固めてあり、的以外を狙えないようになっている場合が多い。しかし、野外のシューティングレンジでは、銃を向ける方向に物理的な制約はないことがある。やろうと思えば、他人や自分に銃を向けることもできる。もちろん、銃は絶対に的以外に向けてはいけないという厳格なルールがある。破った途端に即退場だ。しかし、やってやれないことはない。人に銃を向けた上で引き金を引けば、命を奪ってしまうかもしれない。ナイフや包丁で切り付けても似たようなことが起こる。しかし銃の場合は、離れた場所からできてしまう。

 FPS(First Person Shooter=1人称視点のシューティングゲーム)やTPS(Third Person Shooter=3人称視点のシューティングゲーム)といった、銃を撃ちまくるゲームが花盛りだが、リアルな銃とは全く無縁の別世界だ。ゲームはゲームとして切り分けて考える必要がある。まず、本物の銃は、そう簡単には撃てない。引き金の硬さだ。ものすごく硬い。素人向けのシューティングレンジでは、事故を防ぐためにあえて最も硬いレベルに調整してある。渾身の力を込めて引き金を引かないと撃てないほど硬い。有名な45口径のコルトガバメントは言うに及ばず、9mmのグロック17やベレッタM9などでも、ゲームや映画のように何発も連続で素早く打つなんて、とてもできない。

 そして、音だ。射撃時には想像以上の爆音が響く。ゲームや映像では、パンパンと乾いた音がする程度。しかしそれは実際の音量とは比べ物にならない。射撃時の音の大きさはケタ違いだ。両手で構えて撃つ場合、耳から銃までの距離は数十cm程度。この至近距離で火薬が爆発して弾が飛び出す。耳を守る防音イヤーマフをつけていたとしても、多少軽減される程度にすぎない。音が大きすぎて、次の射撃が怖くなるくらいだ。イヤーマフなしに撃ち続ければ間違いなく耳を傷めるだろう。引き金の硬さは、強烈な存在感につながり、音の大きさは、まさに爆発的な威力を感じさせる。恐怖の源だ。
 
銃社会ではない日本だからこそ、
本物そっくりのエアソフトガンで遊べるのかもしれない
(東京マルイ グロック26)

 幸い日本は銃社会ではない。今後も、アメリカのようにウォルマートで銃が買えるような国にはならないだろう。だからこそ、何の不安もなくサバイバルゲームが楽しめ、形だけでなく重さまで本物そっくりのエアソフトガンが買えたりもする。一方、ウクライナで起きている惨劇やアメリカで頻繁に起こる銃乱射事件の報道を見聞きしても、リアリティを感じにくいという側面もある。海外に行った折、もし機会があれば、しかるべき場所で一度銃を撃ってみてほしい。リアルな銃が持つ潜在的な恐怖を、直接肌で感じ取ることができるだろう。(BCN・道越一郎)