月次売上高(速報ベース)を発表している家電量販企業の6月売上高が発表された。4、5月の売上高も前年と比較して良くはなかったが、5社中4社の6月売上高は前年同月比87~90%。4~6月が対象となる第1四半期(以下、1Q)としても厳しい販売状況だった。
ただし、ビックカメラの6月売上高は前年同月比108.4%と伸長した。都心型のターミナル立地店舗が多い同社はコロナ禍で集客に大きなダメージを受け、顧客の戻りにも時間がかかった。だが、月次売上速報を見ると、昨年の11月から売上高は8カ月連続で前年を上回っている。回復基調で推移しているのは間違いないといえるだろう。
3月決算企業にとって6月は、1Qの締めとなる月。4~6月の累計を見るとエディオンは前年同期比95.0%で、ケーズHDは90.3%、上新電機も92.9%と後退した。速報ベースだが、1Qは厳しい販売状況だったことが分かる。
出荷統計を見ると、家電商品全般の出荷単価は前年よりも上昇基調で推移している。出荷価格の上昇は売価にも転嫁されるため、仮に売上台数が前年と同レベルであれば売上高は前年よりアップしていてもおかしくない。
だが、各社の売上高は伸び悩む結果となった。この要因は、販売台数が前年レベルに達していないと考えられるのだ。ロシアのウクライナ侵攻に端を発したエネルギー価格の上昇や現在の物価上昇に加え、実質賃金は5月まで14カ月連続で減少。これらアゲインストの風が家電量販店の売上高に影響を与えている面もありそうだ。
ここ数年、消費者の視聴コンテンツは放送波から通信波へとシフトしている。動画配信サービスを視聴するデバイスはテレビに限らず、スマホもあればタブレットもある。つまり、大画面や高画質でのコンテンツ視聴というテレビの訴求力が低下しているとも考えられるのだ。
現在のテレビの販売状況は、単に巣ごもり需要の反動減で語れないのではないだろうか。家庭内におけるテレビの位置付けが変わっている。実は今、そんな転換期にあるのかもしれない。
エアコンの6月売上高は各社とも前年同月比70%台と非常に厳しい結果となった。22年6月は梅雨明けと猛暑が例年よりも早く、各社とも売上高が急伸したが、23年6月は前年比70%台にとどまった。天候要因に加え反動減という側面も指摘できそうだ。
エディオンの6月売上高は前年同月比74.5%で、1Qは85.3%。ケーズHDは71.8%で1Qは77.9%、上新電機は71.9%で1Qは74.4%となっている。
昨年7~8月は全国的に気温が低下し、この影響を受けてエアコンの売上高は伸び悩んだ。今年の夏は当初、暑いと目されており、家電量販店各社ともエアコンの訴求に注力している。エルニーニョ現象発生により、これから先の予測は難しくなったが、巻き返しを図りたいところだ。
冷凍食品の市場は拡大しており、冷蔵庫の需要自体が下がっているわけではないだろう。メーカーでは増加するシングル世帯や2台目需要を見据えたラインアップ展開を図るとともに、設置のハードルを下げた省スペースモデルなどを市場投入し、買い増しや買い替え促進を狙う。
だが、内閣府の消費動向調査によると、単身世帯でも2人以上世帯でも冷蔵庫を買い替える理由で最も多いのが故障だ。上位品目(より良いもの)を買い替え理由とするのは2人以上世帯で約11%、単身世帯では約6%しかない。顧客の買い替えを促すような販促施策を講じる必要があり、家電量販店各社の取り組みに期待したい。(BCN・風間 理男)
3月決算の1Qは前年同期比90~95%で着地か
各社の6月の売上高はエディオンが前年同月比90.6%で、ケーズホールディングス(以下、ケーズHD)は87.8%、上新電機が89.8%で、コジマは89.3%となった。企業によって多少の差はあるが、2桁減と販売状況はあまり芳しくない。ただし、ビックカメラの6月売上高は前年同月比108.4%と伸長した。都心型のターミナル立地店舗が多い同社はコロナ禍で集客に大きなダメージを受け、顧客の戻りにも時間がかかった。だが、月次売上速報を見ると、昨年の11月から売上高は8カ月連続で前年を上回っている。回復基調で推移しているのは間違いないといえるだろう。
3月決算企業にとって6月は、1Qの締めとなる月。4~6月の累計を見るとエディオンは前年同期比95.0%で、ケーズHDは90.3%、上新電機も92.9%と後退した。速報ベースだが、1Qは厳しい販売状況だったことが分かる。
出荷統計を見ると、家電商品全般の出荷単価は前年よりも上昇基調で推移している。出荷価格の上昇は売価にも転嫁されるため、仮に売上台数が前年と同レベルであれば売上高は前年よりアップしていてもおかしくない。
だが、各社の売上高は伸び悩む結果となった。この要因は、販売台数が前年レベルに達していないと考えられるのだ。ロシアのウクライナ侵攻に端を発したエネルギー価格の上昇や現在の物価上昇に加え、実質賃金は5月まで14カ月連続で減少。これらアゲインストの風が家電量販店の売上高に影響を与えている面もありそうだ。
テレビの販売不振は放送から配信へのシフトが影響か
主要商品の状況を見ていこう。低迷しているテレビの販売は6月も改善しなかった。エディオンは前年同月比88.7%で、1Qは90.2%。ケーズHDの6月は91.7%で1Qは87.0%。上新電機も6月は87.7%で1Qは87.2%。コジマも6月は86.0%だった。ここ数年、消費者の視聴コンテンツは放送波から通信波へとシフトしている。動画配信サービスを視聴するデバイスはテレビに限らず、スマホもあればタブレットもある。つまり、大画面や高画質でのコンテンツ視聴というテレビの訴求力が低下しているとも考えられるのだ。
現在のテレビの販売状況は、単に巣ごもり需要の反動減で語れないのではないだろうか。家庭内におけるテレビの位置付けが変わっている。実は今、そんな転換期にあるのかもしれない。
エアコンの6月売上高は各社とも前年同月比70%台と非常に厳しい結果となった。22年6月は梅雨明けと猛暑が例年よりも早く、各社とも売上高が急伸したが、23年6月は前年比70%台にとどまった。天候要因に加え反動減という側面も指摘できそうだ。
エディオンの6月売上高は前年同月比74.5%で、1Qは85.3%。ケーズHDは71.8%で1Qは77.9%、上新電機は71.9%で1Qは74.4%となっている。
昨年7~8月は全国的に気温が低下し、この影響を受けてエアコンの売上高は伸び悩んだ。今年の夏は当初、暑いと目されており、家電量販店各社ともエアコンの訴求に注力している。エルニーニョ現象発生により、これから先の予測は難しくなったが、巻き返しを図りたいところだ。
販売好調だった冷蔵庫だが23年度は苦戦
巣ごもり需要が収束した後も販売が順調だった冷蔵庫。エディオンの6月は前年同月比92.4%で、1Qは95.3%。ケーズHDの6月は85.1%で1Qは87.4%、上新電機も6月は84.6%で1Qは87.5%、と23年度に入ってからは販売にブレーキがかかっているようだ。冷凍食品の市場は拡大しており、冷蔵庫の需要自体が下がっているわけではないだろう。メーカーでは増加するシングル世帯や2台目需要を見据えたラインアップ展開を図るとともに、設置のハードルを下げた省スペースモデルなどを市場投入し、買い増しや買い替え促進を狙う。
だが、内閣府の消費動向調査によると、単身世帯でも2人以上世帯でも冷蔵庫を買い替える理由で最も多いのが故障だ。上位品目(より良いもの)を買い替え理由とするのは2人以上世帯で約11%、単身世帯では約6%しかない。顧客の買い替えを促すような販促施策を講じる必要があり、家電量販店各社の取り組みに期待したい。(BCN・風間 理男)