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FCCL、「人に寄り添う」を理念にコンピューティングにより様々な課題を解決し、サステナブルな社会の創造に貢献していく

 富士通クライアントコンピューティング(FCCL)は、持続的な社会の発展に貢献することが、企業としての成長の観点からも重要な経営課題であるととらえ、ESG(環境・社会・ガバナンス)の三つの観点で、様々な取り組みを推進している。サステナビリティ推進の担当役員である広末庸治・執行役員常務/CTO プロダクトマネジメント本部長と製品を担当するコンシューマ事業部の軽石毅・第一技術部部長に、取り組みの狙いとSDGs達成に向けた具体的な施策を聞いた。

FCCLの広末庸治・執行役員常務/
CTO プロダクトマネジメント本部長

経営理念「人に寄り添う」事業活動を通じて、持続可能な社会づくりに貢献

 「私たちは、年間300万台以上のPCを製造・出荷している。そうした活動をしている企業の責任として、ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みを、ステークホルダーの方々に向けてしっかり打ち出すべきという議論が2022年から社内で進んでいた。そして23年3月にサステナビリティサイトを公開することになった」と広末・執行役員常務は語る。なお、FCCLではステークホルダーを「お客様、従業員、お取引先、地球環境、地域社会」と位置付けている。

 FCCLは、1993年から富士通グループ独自の製品環境アセスメントにより、エネルギー効率、有害物質削減など対応した環境配慮型製品の開発を推進。設計段階から環境配慮に努め、製品のライフサイクル全体を通じたアセスメント「LCA=Life Cycle Assessment」を実施し、環境負荷低減と価値向上に努めてきた。

 そのFCCLの根幹を成すのが「人に寄り添うモノづくり」であり、これを開発テーマとして徹底的にユーザー視点に立った価値の提供にこだわっている。

 「社名に掲げる『クライアントコンピューティング』という言葉には、お客様の身のまわりでコンピューティング(情報処理や処理能力)環境が求められるところすべてに、私たちのテクノロジーを提供していきたいという思いを込めている」と広末常務。
 
FCCLの事業領域。
顧客のコンピューティング環境のすべてでテクノロジーを提供する

 具体的な製品で言えば、22年11月に発売した13.3型ワイド液晶モバイルノートPC「FMVCHシリーズ」は、カラーバリエーションを含めてもおしゃれで、デザイン性とモバイル性の両立を実現した若者を意識したモデルだ。

 「当社製品は、すでに1999年からボディの一部に再生プラスチックを採用してきた。このCHシリーズでは、海洋廃棄物から再生したプラスチックを製品の一部に採用。ほかにも、梱包時に用いるプラスチックの緩衝材を紙素材に切り替え、同梱の添付品袋にバイオマスプラスチック袋を使用しているほか、取扱説明書で使用する紙の量を前機種比で約75%削減している」と軽石部長は説明する。
 
FCCL コンシューマ事業本部 コンシューマ事業部の
軽石毅・第一技術部部長

 こうした施策はコスト高になるが、「企業の使命として取り組むべき必須課題であり、実際、Z世代と呼ばれる若者の多くは環境意識が非常に高く、評価もされている」という。
 
梱包時に用いる緩衝材。
プラスチックから紙素材に切り替えた

  また、電子ペーパー「クアデルノ」は、会議で人数分の資料を印刷・配布し、機密事項が書かれたものはすべて回収してシュレッダーにかけるといった紙資料とその手間を省くために生まれたビジネス向け製品だ。2018年の登場から進化を続け、学習にフォーカスした「暗記モード」などの搭載で、コンシューマにもユーザーを拡大。ユーザーの創造性も刺激し、様々なジャンルのスキルアップに貢献するツールとして注目されている。
 
ペーパレス化に貢献する電子ペーパー
「クアデルノ」

デジタルデバイドの解消に向けた製品・サービスの開発を推進

 FCCLでは、ダイバーシティ&インクルージョンをビジネス戦略の一部に位置付けている。

 「お客様が真に求める製品・サービスを提供するには、年齢、性別、国籍や言語など社員の多様性の確保が不可欠。当社は以前より男性比率が高く、外国人もわずかだったが、近年は社員の多様性の確保に注力し、働きやすい環境・体制を追求している。新規採用活動においては、女性4割程度、外国籍3割程度のバランスのとれた採用になってきている」と広末常務は語る。

 多様性を尊重し、広い視野から創造性を生み出すなど、社員の能力を最大限に引き出すことで、組織力を高め持続的な成長を目指している。そのため、性別や国籍に関係なく、それぞれが個性を活かし、存分に力を発揮できるフィールドを用意しているという。

 また、FCCLのノートPCを製造する島根富士通は21年に、労働倫理、安全衛生、環境、サプライチェーンについて評価する国際的なイニシアティブ「RBA(Responsible Business Alliance)」の監査で、最高レベルであるGold評価を受けた。

 「国内ではまだ認知度はそれほど高くないが、RBAの認定は、特に欧米を中心とするグローバル市場では、電子機器業界のサプライチェーン参加のためにはその順守が欠かせず、グローバルビジネスを展開する日系企業にとっても必須となっている」と軽石第一技術部部長はRBA認定の重要性について説明する。

 また、グリーン調達にも注力する。「安く仕入れて安く売る以上に大切なのは、お客様が安心して使える製品であること。それには、調達から環境に配慮した部品を選ぶことが重要で、サプライヤーの方々と協業し、どんな状況下で製造しているかまで、徹底した確認を行っている」(軽石第一技術部部長)。

 さらに、ガバナンスにおいては、コンプライアンスの徹底と企業価値の持続的向上に努めている。情報セキュリティ事故への迅速な対応を可能にする体制の確立、BCP、製品の安全保障輸出管理などの体制構築に取り組んでいる。

 FCCLの社会課題解決への取り組みは、PCのメインユーザーを対象としたものだけではない。PCを使っていない人も使っている人も、子どもから高齢者まで、どんな人にも寄り添い、デジタルの裾野を広げていくことを目指している。

 「人に寄り添うといっても、寄り添われる側の人によって関わり方は変わる。人を想うものづくりである必要がある」と広末常務。その一例がAIアシスト機能の「ふくまろ」で、柔らかいキャラクターを使い、PCを会話で操作できるようにした。PC内の音楽や写真の再生のほか、家電の操作、外出中の部屋の写真の送信などを可能にする。その「ふくまろ」がPC操作を支援する「ふくまろおしえて」は、「IAUD国際デザイン賞2022」で銀賞を受賞している。
 
「IAUD国際デザイン賞2022」で銀賞を受賞した
「ふくまろおしえて」

 「どんなにコンピューティングが進化しても、それが『人に寄り添う』テクノロジーでなければ意味がない。FCCLの強みを活かし、全ての人に寄り添う商品・サービスを提供し続けていくことでデジタル格差を解消し、社会が抱える課題の解決をはじめ、その持続性、発展に寄与していく。これこそが私たちの使命と考えている」と広末常務は力を込める。(BCN特約記者・木村春生)
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