カインズとの「DIY共創」に挑戦する「ハンズ新宿店」

店舗

2023/07/01 09:00

 ハンズは6月29日、「ハンズ新宿店」をリニューアルオープンした。新宿駅南口の「タカシマヤ タイムズスクエア」2~8階で展開し、8階では親会社カインズの都市型店舗初となる「カインズ新宿店」も同時にオープンした。

ハンズのフラッグシップ店舗
「ハンズ新宿店」

新生ハンズを象徴するフラッグシップ店舗

 2022年3月、カインズは東急不動産ホールディングスの子会社だった東急ハンズの発行済全株式を取得。同年10月から東急ハンズは社名から「東急」を外した新生ハンズとして、新たなコーポレートロゴとブランドメッセージの元に始動した。

 「海外を含むハンズ65店舗のうち17店舗を新しいロゴの看板に掛け替えている」とカインズの社長CEOでハンズの会長を兼務する高家正行氏が語るように、ハンズは順次、新しいロゴ看板の変更や改装を進めている。3月は渋谷店の看板を掛け替え、4月以降も、ららぽーと豊洲店、富士見店、湘南平塚店の改装を実施。そうした中でハンズ新宿店は、新生ハンズの本格的なスタートを象徴するフラッグシップ店舗となる。
 
カインズの社長CEOとハンズの
会長を兼務する高家正行氏

 カインズの高家社長CEOはオープン前日の記者会見で、改装のポイントについて商品とサービス、接客の観点から次のように語った。

 「商品では、品揃えやマーチャンダイジングを一から見直すとともに商品カテゴリ間の強弱や再編集を実施。フラッグシップ店らしい尖りや驚きを加えた。サービスでは、名入れや大切なもののメンテナンス、ギフトなどを備え、お客様の毎日の暮らしを一緒につくっていきたい。そして、ハンズ創業以来の強みである専門的で豊富な知識を持つスタッフが、商品カテゴリの強化に基づいて接客していく」

 さっそく、新生ハンズの2~7階の各フロアと、8階のカインズ新宿店を紹介していこう。

イベントスペースで「新しい文化の芽」を発信

 入り口となる2階ではイベントスペースが出迎える。ハンズが顧客に提供する七つの価値の一つである「新しい文化の芽」を発信していく重要なスペースだ。オープン時は「BOTTO(没頭)」をキーワードに、日常に溶け込んだ瞑想関連のアイテムを集め、本格的なメディテーションポッド体験もできる。マインドフルネスな世界観を演出している。
 
「BOTTO(没頭)」をテーマに本格的な
メディテーションポッド体験も

 もう一つ特徴的なのが、2階左側に展開するカードやラッピング、バルーンコーナー。「毎日が記念日」として、大切な人との記念日を充実させるためのアイテムを集めた。天井まで高く展示したグリーディングカードの取扱数は約2000種類に上る。バルーンも約250種類を用意し、記念日やギフト選びを彩る。さらにラッピングコーディネーターが、包み方などをアドバイスしてくれる。
 
2階のグリーディングカード
 
約250種のバルーンも販売

 もちろん、シーズンに合わせたレイングッズの展示のほか、バッグや財布の小物、生花・切り花なども扱う。
 
バッグも豊富に品揃え

「メンズコスメ」や「メンズケア」も充実の品揃え

 3階は、特に力を入れたというビューティフロア。テーマは「なりたい自分になる」だ。ハンズ初となるテスターバーを設置したり、ポップアップスペースで旬のアイテムを提案したりする。オープン初日からは、中国トップコスメブランド「PERFECT DIARY」のコスメを一堂に集めたコーナーを展開する。
 
ビューティフロアのテスターバー

 さらに、最近の若い男性の間で広がるメンズコスメやメンズケアの品揃えも充実。三つの棚を使って展示するほどの力の入れようで、ワックスを試した後に手を洗える設備まである。
 
メンズコスメも棚三つを使って展示
 
ワックスを試した後に手を洗える

 4階はハンズらしさが光る文具フロア。筆記具は約4500種類と圧巻の品揃えだ。面白いのが、筆記具と紙の相性が感じられるスペース。何種類もの「マルマン国産オリジナル筆記用紙」が用意されており、おすすめの筆記具をじっくり試し書きできる。
 
約4500種類の筆記具を集めた文具フロア
 
筆記具と紙の相性を試せる

 5階は「趣味をとことん楽しむ。」というテーマで、トラベルやモバイル、ホビークラフト、アウトドアのフロアとなっている。犬や猫のペットコーナーを充実させたのも、ハンズとしては珍しい取り組みだという。話題の電動バイクやエアテント、プロジェクターなどのアイテムも展示している。
 
ペットコーナーも充実
 
話題の電動バイク

ハンズとカインズ、一見すると「DIYかぶり」?

 6階は「素材の森」というだけあって、約1万種類の木材や素材、アクリル、ネジ、工具などのマテリアルを豊富に揃えた。「都心でここまで揃うのはハンズだけ」という自信を示すほどだ。
 
創造力が掻き立てられる6階の「素材の森」
 
電動工具や作業工具も展示

 ここで、フロアテーマの「私らしくDIY。」に注目してみたい。実は後述する8階の「カインズ新宿店」と合わせて、今回のリニューアルにおける重要な意味が、この「DIY」に隠されている。ハンズの6階は「私らしくDIY。」を掲げているのに対し、8階のカインズ新宿店は「くらしDIY」を謳う。

 一見すると「DIYかぶり」なのだが、カインズとハンズが一緒になった際、「新たなDIY文化の共創」に向けたパートナーとしての活動を宣言している。この点について高家社長CEOは、「DIYのエントリーがカインズで、尖っていてディープなのがハンズ」とわかりやすく説明する。

 カインズは、毎日の暮らしを改善するアイテムやサービスを提供し、ハンズは自分だけの特別なスペースや時間を充実させるためのアイテムやサービスを提供する。一人の人間は両方のニーズを併せ持ちながら暮らしの中で使い分けているので、DIY文化の共創は成り立つというわけだ。今回のリニューアルは、「その第一歩がスタートした」(高家社長CEO)ことを意味する。

「包丁研ぎ」は最短即日で渡す

 7階は「ひと手間かける毎日。」として愛用品が見つかるハウスウエアのフロアとなる。新設した包丁コーナーには、約300種類の包丁が並ぶ。包丁研ぎの技術を有する専任スタッフが、最短即日で対応する包丁研ぎサービス(有料)を提供する。
 
約300種類並ぶ包丁コーナー

 これまでも顧客から包丁を預かって、1カ月後に戻すなどのサービスは行っていたというが、即日対応にしたのは今回が初めて。しかもサービス価格は1400~2400円というから、それほど高くはないだろう。

 ほかにも一杯のコーヒーを丁寧につくるハンドドリップ関連のアイテムを充実させたり、ミルが試せるコーナーを設けたりするなど、ひと手間かけることで時間や暮らしが楽しくなることを提案する。
 
「コーヒー」もひと手間かけると
暮らしが楽しくなる

都市型初店舗の「カインズ新宿店」

 最後の8階の「カインズ新宿店」。通常、売場面積が約1万平方メートルで駐車場を兼ね備える郊外型のカインズに比べ、新宿店は950平方メートルしかない。必然的にアイテム数やテーマは絞り込まれる。

 具体的には、「生活者の普遍的なくらしのニーズ」にギュッと絞り込んだ。展開の仕方も工夫し、「ピカピカを極める」(掃除道具や汚さない工夫)、「スッキリ整える」(キッチンや調理、浴室の収納)、「スヤスヤを叶える」(寝具やリラックス用品)、「妄想ラボ」(シーズンやくらしテーマ)と、テーマ別に四つのエリアから構成。くらしのコト軸をテーマに、商品カテゴリを横断的に編集しなおして提案している。
 
8階のカインズ初となる都市型
「カインズ新宿店」
 
普遍的なくらしのニーズに絞り込み、
カテゴリを横断
 
カインズらしく、
DIYエントリー層にもわかりやすい展示

 郊外型のカインズを期待して新宿店に行ったら、あれもない、これもないと最初は戸惑うかもしれない。しかし、DIYエントリー層向けに再編集された分かりやすい売り場は、ハンズとはまた違ったカインズらしいDIYの在り方を感じとれるだろう。

 なお、ハンズ新宿店のオープンに合わせて、6月27日にカインズとハンズのポイント交換サービスがスタート。カインズとハンズのポイントが、それぞれ1Pで交換できるようになった。カインズと新生ハンズのシナジーにより、新たな便利なサービスが生まれた。「新しいDIYの共創」に向けて歩み出したハンズとカインズを、実際に体感してみるといいだろう。(BCN・細田 立圭志)
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