スマホの販売台数は3カ月連続前年割れ、スマホ割引規制の改定で意見募集中
家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、2023年3月~5月のスマートフォン(スマホ)の販売台数は前年を下回り、3カ月連続で2ケタ減だった。こうしたスマホ全般の販売不振も響いたのか、5月後半は国内スマホメーカの撤退に関するニュースが相次いだ。急激な円安に伴い端末調達費用がかさむ一方で、端末と回線のセットで購入する場合は2万2000円を超える割引が認められない状況は、国内端末メーカーにとってかなり厳しかったようだ。
二つ目は、Androidスマホや「ガラホ」とも呼ばれるAndroidベースの携帯電話機を手がける京セラの個人向けスマホ事業の終了。2023年5月15日の決算説明会で言及され、25年3月に供給・販売を終了するという。ただし、法人向けにも引き合いの多い堅牢スマホ「TORQUE(トルク)」は、個人・法人の双方向けに今後も開発を続ける。
三つめは、京セラと同じくAndroidスマホの黎明期から端末開発を手がけた富士通の流れを組むFCNTの突然の事業終了。5月30日にREINOWAホールディングス、ジャパン・イーエム・ソリューションズ、FCNTの3社は東京地方裁判所へ民事再生法の適用を申請し、事業再生に向けたスポンサーが現れない限り、端末の製造・販売、修理・サポートは終了となる。スポンサーの申し出があったコミュニティ事業は継続予定。また、ドコモなど通信事業者(キャリア)は、自社のキャリアモデルに限り、販売・サポートを継続していく。
FCNTは、富士通から16年に分社化した富士通コネクテッドテクノロジーズが富士通モバイルコミュニケーションズと統合し、富士通コネクテッドテクノロジーズの略称だった「FCNT」を正式社名として21年に誕生した。とはいえ、FCNTの知名度は高いとは言い難く、一般的には旧社名の「富士通」または、全世代向けスマホのブランド名「arrows」、シニア向け携帯電話・スマホのブランド名「らくらくホン」「らくらくスマートフォン」のメーカーといったほうが分かりやすいだろう。
BCN AWARD 2023の「スマートフォン部門」はシェア64.5%でAppleが受賞し、「キャリアフリースマートフォン部門」もまた、シェア58.1%でAppleが1位を制した。
分かりにくいので「スマートフォン全体」として22年の年間メーカー別販売台数シェアを集計すると、1位はApple(58.9%)、2位はGoogle(9.5%)、3位はソニー(6.4%)。月ごとのシェアの推移をみると、2位グループと3位グループのそれぞれ数社で激しく争う状況だった。京セラはシェア3%未満の3位グループ、FCNTは2位グループに属し、23年5月の時点でも、FCNTはスマホ全体で6位、Androidに限ると5位という好位置につけていた。
民事再生法の適用申請から1カ月過ぎたが、FCNTに対し、端末事業の支援を名乗り出た企業があったという報道はない。あくまで記者個人の考えだが、FCNTの撤退の最大の要因は、価格以外に目立った特徴のない、プロダクトそのものにあったのではないだろうか。「らくらくスマートフォン」も、かつてヒットしたシニア向け携帯電話「らくらくホン」の強みを引き継いでいたとは言い難い。
総務省の有識者会議「電気通信市場検証会議 競争ルールの検証に関するWG」は、「1円スマホ」の規制など提言する「競争ルールの検証に関する報告書 2023(案)」を取りまとめ、6月23日から意見募集(パブリックコメント)を開始した。募集は7月24日まで。総務省の介入のたびにスマホが売れなくなってきたような印象をもつが、今回は逆に規制を緩和し、端末と回線をセットで購入する際の割引上限額を現行の税込2万2000円から4万4000円に引き上げるという。一方、回線契約の有無を問わないために可能だった「1円スマホ」など、極端な安売りは規制する。現状のスマホ市場に意見がある方は、ぜひ総務省に直接意見を伝えよう。(BCN・嵯峨野 芙美)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。
衝撃の事業終了・撤退のニュースが立て続けに
スマホ市場に関するニュース一つ目は、異業種から21年11月に新規参入したばかりのバルミューダの「BALMUDA Phone」の事業終了。立ち上げから約1年半、製品化されたのはたった1機種のみだった。二つ目は、Androidスマホや「ガラホ」とも呼ばれるAndroidベースの携帯電話機を手がける京セラの個人向けスマホ事業の終了。2023年5月15日の決算説明会で言及され、25年3月に供給・販売を終了するという。ただし、法人向けにも引き合いの多い堅牢スマホ「TORQUE(トルク)」は、個人・法人の双方向けに今後も開発を続ける。
三つめは、京セラと同じくAndroidスマホの黎明期から端末開発を手がけた富士通の流れを組むFCNTの突然の事業終了。5月30日にREINOWAホールディングス、ジャパン・イーエム・ソリューションズ、FCNTの3社は東京地方裁判所へ民事再生法の適用を申請し、事業再生に向けたスポンサーが現れない限り、端末の製造・販売、修理・サポートは終了となる。スポンサーの申し出があったコミュニティ事業は継続予定。また、ドコモなど通信事業者(キャリア)は、自社のキャリアモデルに限り、販売・サポートを継続していく。
FCNTは、富士通から16年に分社化した富士通コネクテッドテクノロジーズが富士通モバイルコミュニケーションズと統合し、富士通コネクテッドテクノロジーズの略称だった「FCNT」を正式社名として21年に誕生した。とはいえ、FCNTの知名度は高いとは言い難く、一般的には旧社名の「富士通」または、全世代向けスマホのブランド名「arrows」、シニア向け携帯電話・スマホのブランド名「らくらくホン」「らくらくスマートフォン」のメーカーといったほうが分かりやすいだろう。
2022年のシェアNo.1はApple
「BCNランキング」をもとにカテゴリ別に年間販売数量1位の企業を表彰する「BCN AWARD」は市場動向にあわせてカテゴリ分類を随時変更しており、直近の「BCN AWARD 2023(集計期間2022年1月~12月)」では「スマートフォン部門」と「キャリアフリースマートフォン部門」に分けてそれぞれ表彰している。キャリアフリースマートフォンとは、いわゆるオープンマーケット版モデル、メーカー直販モデルを指す。BCN AWARD 2023の「スマートフォン部門」はシェア64.5%でAppleが受賞し、「キャリアフリースマートフォン部門」もまた、シェア58.1%でAppleが1位を制した。
分かりにくいので「スマートフォン全体」として22年の年間メーカー別販売台数シェアを集計すると、1位はApple(58.9%)、2位はGoogle(9.5%)、3位はソニー(6.4%)。月ごとのシェアの推移をみると、2位グループと3位グループのそれぞれ数社で激しく争う状況だった。京セラはシェア3%未満の3位グループ、FCNTは2位グループに属し、23年5月の時点でも、FCNTはスマホ全体で6位、Androidに限ると5位という好位置につけていた。
民事再生法の適用申請から1カ月過ぎたが、FCNTに対し、端末事業の支援を名乗り出た企業があったという報道はない。あくまで記者個人の考えだが、FCNTの撤退の最大の要因は、価格以外に目立った特徴のない、プロダクトそのものにあったのではないだろうか。「らくらくスマートフォン」も、かつてヒットしたシニア向け携帯電話「らくらくホン」の強みを引き継いでいたとは言い難い。
総務省の有識者会議「電気通信市場検証会議 競争ルールの検証に関するWG」は、「1円スマホ」の規制など提言する「競争ルールの検証に関する報告書 2023(案)」を取りまとめ、6月23日から意見募集(パブリックコメント)を開始した。募集は7月24日まで。総務省の介入のたびにスマホが売れなくなってきたような印象をもつが、今回は逆に規制を緩和し、端末と回線をセットで購入する際の割引上限額を現行の税込2万2000円から4万4000円に引き上げるという。一方、回線契約の有無を問わないために可能だった「1円スマホ」など、極端な安売りは規制する。現状のスマホ市場に意見がある方は、ぜひ総務省に直接意見を伝えよう。(BCN・嵯峨野 芙美)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。