高機能モデルがけん引するヘッドホン・イヤホン市場

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2023/05/21 18:30

 ノイズキャンセリング機能付きの完全ワイヤレスイヤホンが好調だ。ヘッドホン・イヤホン市場全体では前年割れ基調で推移する中、新製品が数多く登場する高機能モデルが市場をけん引している。全国2300の家電量販店やネットショップの実売データを集計するBCNランキングで明らかになった。
 


 ヘッドホン・イヤホン市場全体が振るわない中でも、伸びているのが高機能モデル。ワイヤレス、ワイヤレス+左右分離、ワイヤレス+左右分離+ノイズキャンセルと高機能になるにつれ、伸びが大きくなる傾向がある。例えば、昨年4月の販売台数前年比は、全体で95.9%だったのに対し、ワイヤレスモデルは104.4%、ワイヤレス+左右分離モデルは116.8%、ワイヤレス+左右分離+ノイズキャンセルモデルは124.1%と高機能になるほど伸びている。今年の4月についても、全体が93.5%だったのに対し、ワイヤレスモデルは100.6%、ワイヤレス+左右分離モデルは101.4%、ワイヤレス+左右分離+ノイズキャンセルモデルは105.7%と同様の傾向を示した。

 ヘッドホン・イヤホンは、まず大きく、有線モデルと無線モデルに分かれる。4月現在で無線モデルの販売台数構成比は48.2%でほぼ半数。そのうち、左右が完全に独立した完全ワイヤレスモデルは60.7%と過半を占める。さらにそのうち49.4%がノイズキャンセリング機能を搭載する。ヘッドホン・イヤホン市場全体から見れば、ノイズキャンセリング機能付きの完全ワイヤレスイヤホンは、販売台数の14.5%を占めている。平均単価(税抜き、以下同)は2万600円。全体では7700円であるため、約2.7倍と高価だ。販売金額で見ると全体の38.5%と、ほぼ4割を占める重要な商材でもある。
 

 ノイズキャンセリング機能付きの完全ワイヤレスイヤホンのメーカー別シェアを見ると、安定的な強さでダントツのポジションを維持しているのがアップル。この4月で24.7%を占めた。最近では昨年7月、一時4割近いシェアを獲得する場面もあった。最も売れているのが「AirPods Pro(第2世代)」。これだけで23.1%のシェアを稼いでいる。旧モデルに比べノイズキャンセリング性能が向上したと評価が高い。追いかけるのはソニーだ。同社も昨年6月、25.3%とアップルに迫る高いシェアを得た。しかし、値上げの影響もあり、4月現在では14.9%とやや減速している。売れ筋は「WF-1000XM4」で5.3%。次モデル発売が近いのでは、との憶測も売り上げに影響しているようだ。3位はAnkerで8.5%。3月に3位だったハーマンインターナショナルをかわして浮上した。「Soundcore Liberty 4」が売れ筋。税抜き1万2000円台と、全体の平均を大幅に下回る価格の安さと機能の高さで、同社のシェアを押し上げた。

 ノイズキャンセリング機能付き完全ワイヤレスイヤホンは、音楽再生機器と無線で接続できるのはもちろん、左右のユニットも無線接続。従来のイヤホンにつきもののコードがなく、取り回しが楽で使い勝手がいい。さらに、周囲の雑音を内蔵マイクで検知し相殺するノイズキャンセリング機能もある。うるさい環境でも音楽などを楽しめるため人気が高い。参入メーカー数はおよそ80社を数えるレッドオーシャン。しかし、まだ機能を向上させる余地は残されている。新機軸製品登場への期待も高く、当面、一定の勢いは維持できそうだ。(BCN・道越一郎)