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ケーズHD、「中期経営計画」を取り下げ 「コロナ特需」の反動減で計画を練り直し

経営戦略

2023/05/11 19:00

 ケーズホールディングス(ケーズHD)は5月10日、2021年5月に公表した「中期経営計画(22年3月期~24年3月期)」で掲げた数値目標の取り下げを発表した。「コロナ特需」などで過去最高益をたたき出した21年3月期決算をベースに策定した中期経営計画(中計)は、その後、反動減に見舞われ、最終年度の計画達成が困難と判断。同日開催の取締役会で決議した。新しい中計は時期を改めて公表する。

中期経営計画を取り下げたケーズHD

「コロナ特需」を受けての「上方修正」が足かせに

 中計の数値目標を取り下げた理由については、計画を策定した21年3月期は新型コロナウイルス感染症が拡大する中、政府による特別定額給付金の支給や巣ごもり需要、テレワークの普及などで過去最高益を記録。しかし、その後の22年3月期以降の反動減が想定以上に大きかったことを挙げる。

 また、ウクライナ情勢を背景としたエネルギー資源や原材料の高騰による電気代・物価上昇で、消費マインドは低下し、家電の買い替えサイクルが長期化していることも理由に挙げた。これらにより中計の最終年度にあたる24年3月期の計画達成は困難と判断したことから、数値目標の取り下げに至った。
 
19年5月と21年5月、現状の5カ年中期経営計画の比較(ケーズHDの発表資料より)

 ケーズHDの資料によると、19年5月に公表した5カ年の中計を、21年5月に上方修正している。過去最高益をたたき出した21年3月期の好決算を反映しての上方修正だったが、この目算が狂った。
 

郊外型店舗展開のケーズHDに追い風

 もっとも、21年3月期はケーズHDにいくつもの追い風が吹いたため、上方修正も自然の流れだったのだろう。緊急事態宣言などによる都市部店舗での営業自粛や時短営業、社会全体でのテレワーク、リモート授業の普及などが重なり、昼間の人口が首都圏や大都市から郊外にシフトした。

 テレワークやリモート授業の環境を整えるため、ノートPCやタブレット端末、PC周辺機器、巣ごもりによる大型テレビ、生活・調理家電の需要が郊外の家電量販店に集中した。さらに、20年5~7月に支給された特別定額給付金が、消費マインドを刺激した。こうしたライフスタイルの変化に伴ういくつもの需要が、郊外を中心に展開するケーズHDにはまったのだ。

 しかし、21年3月期以降は反動減に見舞われる。昼間の人口の一部が郊外から大都市に回帰する動きや、コロナ特需が一巡したこと、従業員の罹患者が増えたことによる接客力の低下、世界情勢の悪化を受けた水道光熱費や物価上昇による消費マインドの低下などが、今度は逆風となった。
 

直近5カ年でみれば売上高のギャップは0.5ポイント

 直近5カ年の経営数値実績(24年3月期は予想)と、19年に公表した5カ年の中計を比較すると、5カ年の累計期間売上高は99.5%、営業利益は97.8%、経常利益は96.7%、当期純利益は94.4%となっている。

 売上高のギャップは19年計画比で0.5ポイントしかないことから、5年間を通してみれば、当初の中計とそれほど大きな乖離はないとみることもできる。21年の上方修正が余計だった、あるいは見通しが甘かったということになるが、当時、上方修正なしで進む判断は、株式市場も受け入れなかったのではないか。

 21年3月期はケーズHDにとって「バブル」だったとし、新しく練り直している中計の中身が注目される。特に21年3月期以降、2期連続となっている減収を、24年3月期以降からどのように反転させていくのかという経営戦略が気になるところだ。(BCN・細田 立圭志)
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