レンズ交換型カメラをマニアの手から解放し「普通の人」に普及させた一大ブランド、キヤノンの「EOS Kiss」が終わる。同社のエントリーモデルにはKissブランドを冠することが多かったが、新製品は2020年11月発売の「EOS Kiss M2」が最後。この3月に発売したエントリーモデル「EOS R50」からはKissの名前が消えた。販売状況を見てもKissが終息に向かっているのは明らかだ。キヤノンのレンズ交換型カメラのうち、Kissシリーズが販売台数に占める割合は、過去3年に限っても最高で75.8%に上った。しかし、この3月には39.7%と4割を下回った。販売金額でも最高の6割超から32.1%と半減した。キヤノンはドル箱ブランドKissから卒業しようとしている。全国2300店舗の実売データを集計するBCNランキングで明らかになった。
デジカメの時代に突入した2003年。Kissもデジタル化し「EOS Kiss Digital」として新登場した。08年には「EOS Kiss Digital X」の後継モデルとして「EOS Kiss X2」を発売。商品名からデジタルが消え、本格的なデジカメ時代の到来を宣言した。その後、レンズ交換型カメラのミラーレス化を受け、18年にKissブランド初のミラーレスモデル「EOS Kiss M」を発売。20年発売の現行モデル「EOS Kiss M2」が引き継いだ。一眼レフとしてのKiss最後の製品は同年発売の「EOS Kiss X10i」。この年以降、Kissの新製品は登場していない。Kissは、キヤノンのレンズ交換型カメラの過半を占める売れ筋。Kissが売れれば全体の売り上げも伸びる。まさに大黒柱的存在だった。
最期のKissになるかもしれない「EOS Kiss M2」(左)と
新エントリーモデル「EOS R50」
3月発売のエントリーモデル「EOS R50」は、今後の主流、RFマウント。つまり、RFマウントの製品には、エントリーモデルであってもKissブランドは使用しない、というわけだ。キヤノンはまだ、Kissの終息を宣言していない。関係者は「もうしばらくはお付き合いください」と話し、当面は販売継続するとしている。ミラーレスのEOS Kiss M2、EOS Kiss MはEF-Mマウント、一眼レフのEOS Kiss X10iなどはEFマウントだ。徐々にフェードアウトさせるレンズマウントのエントリーモデルについて、今後、新製品を登場させることはないだろう。結果、Kissは消えることになるわけだ。