VAIOは3月29日、東京・渋谷のイベントホールで16型ワイド「VAIO F16」と14型ワイド「VAIO F14」の新製品発表会を開催。VAIOのスタンダードモデルという位置付けで、ノートPCの「定番」として幅広いユーザーに訴求する。合わせて山野正樹代表取締役執行役員社長が経営戦略を発表。コンシューマ市場での販売シェア目標に関する記者の質問に「2年で5%を目指したい」と応えた。
グローバルのPC市場(出荷ベース)は、2022年4Qに前年同期比28%減と大幅に落ち込んだ。Windows 11需要も落ち着き、新型コロナのリモートワークによるPC特需の反動が大きい。世界的なインフレも逆風となり、国内市場も19年から3年連続で縮小している。
「21~22年にかけてBtoB市場が横ばい、BtoC市場はやや減少となっており、23年もこの状況が続いている」と山野社長は現状について語る。
VAIOも22年5月期は売上高224億円(同3%増)と微増だったが、営業損益は2億円の赤字だった。半導体などキーデバイスの不足や価格の高騰、中国のロックダウンによるサプライチェーンの混乱と新製品の販売遅延、ウクライナ侵攻による円安などが業績悪化につながった。
しかし、23年5月期の売上高は前年比1.6倍で過去最高を達成する見込みで、営業損益も黒字に転換するという。
「好調な法人向けPC市場の営業体制を強化し、これまでVAIOが選定に入っていなかった企業から数千台や1万台規模の受注があった」と、法人向けPC販売が好調だった。また、VAIOの製品品質へのこだわりがユーザーに認知されてきたという背景もあった。
その上で山野社長は「いくら製品がよくても、より多くの方に届けられなければその価値を体感してもらえない。ボリュームで販売できなければ製品コストも下がらない。いつまでもプレミアムニッチにとどまっていて生き残っていけるのか」と現状への危機意識もあらわにする。
今回のVAIO F14とVAIO F16(法人向けはPro MK、Pro BM)は、スタンダードモデルとして新規のすそ野市場を開拓していくための戦略モデルとなる。
山野社長は中期経営目標について、24年5月期に出荷台数で150%成長を目指すと発表。「定番」モデルのラインアップ強化と、グローバルへの本格進出などにより達成する。
そのときの売上高の4~5割を、今回の「定番モデル」で占めると予想。現状の売上高構成比の法人向け8割、個人向け2割は今後も変わらないだろうとした。
いずれにしても、ノートPCで「Windows PCの定番」を目指すというのであれば、NECパーソナルコンピュータ(NECPC)や富士通クライアントコンピューティング(FCCL)、DynabookをはじめASUS、レノボ・ジャパン、日本HP、デル、日本エイサー、パナソニックなど群雄割拠の市場でのライバルを無視することはできない。
コンシューマ市場における目標販売シェアを聞いたところ、山野社長は「VAIOシリーズ全体で2年後に5%を目指したい」と応えた。ただし、コンシューマ市場の回復を少し待つ必要があるという。
ちなみに、全国の主要家電量販店・ネットショップからデジタル家電などの実売データを収集している「BCNランキング」による年間販売台数シェア(2022年1月~12月)でトップ企業を表彰する「BCN AWARD 2023」(ノートPC部門)では、1位がNEC(19.6%)、2位が富士通(18.9%)、3位がASUS(15.3%)となっており、超えるべきハードルは高い。
既に法人向けでの勝算はあるようだ。これまでVAIOの予算に入っていなかった企業に提案できるのと、販売パートナーにとっても提案しやすいモデルになることの2点を挙げる。これまでは付加価値を納得してもらうために、VAIOのスタッフによる説明が必要だったが、VAIOのスタンダードモデルならパートナーが販売しやすい商品となる。新しい武器加わることで、単純に純増が期待できるというわけだ。
まずは法人向けから「定番」戦略を展開し、やがてプレミアムニッチからの脱却を本気で目指すというVAIOは、ライバルにとって面倒な存在になりそうだ。(BCN・細田 立圭志)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計しているPOSデータベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。
プレミアムニッチからの脱却
会見冒頭でVAIOの山野正樹社長は、「なぜVAIOが『Windows PCの定番』を目指すのか」と題する経営戦略を発表。これまで高付加価値ノートPCでクリエイターやプロフェッショナルなファンを対象に尖った製品を提供してきたVAIOが、いよいよコンシューマー市場でドライブをかけていく意思表明と受け取れた。「定番」という言葉に、それだけの熱量が込められていた。グローバルのPC市場(出荷ベース)は、2022年4Qに前年同期比28%減と大幅に落ち込んだ。Windows 11需要も落ち着き、新型コロナのリモートワークによるPC特需の反動が大きい。世界的なインフレも逆風となり、国内市場も19年から3年連続で縮小している。
「21~22年にかけてBtoB市場が横ばい、BtoC市場はやや減少となっており、23年もこの状況が続いている」と山野社長は現状について語る。
VAIOも22年5月期は売上高224億円(同3%増)と微増だったが、営業損益は2億円の赤字だった。半導体などキーデバイスの不足や価格の高騰、中国のロックダウンによるサプライチェーンの混乱と新製品の販売遅延、ウクライナ侵攻による円安などが業績悪化につながった。
しかし、23年5月期の売上高は前年比1.6倍で過去最高を達成する見込みで、営業損益も黒字に転換するという。
「好調な法人向けPC市場の営業体制を強化し、これまでVAIOが選定に入っていなかった企業から数千台や1万台規模の受注があった」と、法人向けPC販売が好調だった。また、VAIOの製品品質へのこだわりがユーザーに認知されてきたという背景もあった。
その上で山野社長は「いくら製品がよくても、より多くの方に届けられなければその価値を体感してもらえない。ボリュームで販売できなければ製品コストも下がらない。いつまでもプレミアムニッチにとどまっていて生き残っていけるのか」と現状への危機意識もあらわにする。
今回のVAIO F14とVAIO F16(法人向けはPro MK、Pro BM)は、スタンダードモデルとして新規のすそ野市場を開拓していくための戦略モデルとなる。
2年後に出荷台数150%成長を目指す
山野社長は中期経営目標について、24年5月期に出荷台数で150%成長を目指すと発表。「定番」モデルのラインアップ強化と、グローバルへの本格進出などにより達成する。
そのときの売上高の4~5割を、今回の「定番モデル」で占めると予想。現状の売上高構成比の法人向け8割、個人向け2割は今後も変わらないだろうとした。
いずれにしても、ノートPCで「Windows PCの定番」を目指すというのであれば、NECパーソナルコンピュータ(NECPC)や富士通クライアントコンピューティング(FCCL)、DynabookをはじめASUS、レノボ・ジャパン、日本HP、デル、日本エイサー、パナソニックなど群雄割拠の市場でのライバルを無視することはできない。
コンシューマ市場における目標販売シェアを聞いたところ、山野社長は「VAIOシリーズ全体で2年後に5%を目指したい」と応えた。ただし、コンシューマ市場の回復を少し待つ必要があるという。
ちなみに、全国の主要家電量販店・ネットショップからデジタル家電などの実売データを収集している「BCNランキング」による年間販売台数シェア(2022年1月~12月)でトップ企業を表彰する「BCN AWARD 2023」(ノートPC部門)では、1位がNEC(19.6%)、2位が富士通(18.9%)、3位がASUS(15.3%)となっており、超えるべきハードルは高い。
既に法人向けでの勝算はあるようだ。これまでVAIOの予算に入っていなかった企業に提案できるのと、販売パートナーにとっても提案しやすいモデルになることの2点を挙げる。これまでは付加価値を納得してもらうために、VAIOのスタッフによる説明が必要だったが、VAIOのスタンダードモデルならパートナーが販売しやすい商品となる。新しい武器加わることで、単純に純増が期待できるというわけだ。
まずは法人向けから「定番」戦略を展開し、やがてプレミアムニッチからの脱却を本気で目指すというVAIOは、ライバルにとって面倒な存在になりそうだ。(BCN・細田 立圭志)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計しているPOSデータベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。