「Tecc LIFE SELECT 尼崎店」に感じた 生き残る家電量販店・スーパーの出店戦略
ヤマダホールディングス(ヤマダHD)は、ヤマダデンキの郊外型店舗では史上最大規模となる「Tecc LIFE SELECT 尼崎店」を3月17日にオープンした。住所をみると、「コストコ尼崎倉庫店」に隣接するショッピングモールへのテナント出店に見えるが、実際には、まるで独立店舗のような「半端ないスケール」の大型店舗だ。
家電や家具などを実際に試せるブースを充実させたほか、セミセルフレジ対応端末付きショッピングカート「スマートカート」、デジタル広告を配信するデジタルサイネージ、電子プライス、オンラインショップ「ヤマダウェブコム」で購入した商品を24時間受け取り可能な宅配ロッカーを導入。他社に先駆けて強化しているオンライン(EC)とオフライン(店頭)を連携した商品受け取りサービスでは、一部の飲食テイクアウトオーダーやネットスーパーも導入している、ECで購入した商品を店舗の駐車場でそのまま受け取れる「カーサイドピックアップ」にも対応する。
ヤマダHDの各店舗は、2022年9月26日からAEON Payに対応。家電量販店におけるAEON Payの導入はヤマダデンキが初だった。ちなみにイオングループ以外での初の導入企業は、ボウリング・アミューズメント・カラオケなどを中心とした屋内型複合レジャー施設を展開するラウンドワン。
AEON Payは、会員登録だけで誰でも使えるキャッシュレス決済サービスではなく、イオンのトータルアプリ「iAEON(アイイオン)」にイオンマークのついたクレジットカード・デビットカードを登録した場合のみ利用できるカード会員向けアプリ決済。正確には「イオンカードペイ」といえるサービス内容のため、これまではあまり話題にならなかったが、Tecc LIFE SELECT 尼崎店の開業によって、家電や家具をお得に買えるキャッシュレス決済サービスとして注目度は急上昇だ。
記者はふだんラジオ放送を聴かないので、上位にランクインしたスーパーの店内放送で初めてTBSラジオ「スーパー総選挙」の存在を知った。来店者に向けて大々的に投票を呼びかけており、上位に入るのも納得だと苦笑せざるを得ない投票結果だが、イオンスタイルやまいばすけっと、イトーヨーカドー系のスーパーがランク外だった背景には、「投票を呼びかけなかった」「投票がブランド名ごとに分散した」以外の理由もあるのではないかと推測する。
TBSラジオ「スーパー総選挙2022」で2位のヤオコーは今年2月、ヨドバシカメラも出店する商業施設「トナリエ宇都宮」に出店した。同施設としては久々のスーパー復活という。4位のロピアは21年11月に「京都ヨドバシ」、22年12月に甲府駅前「ヨドバシ甲府ビル」に出店、さらに23年6月上旬に九州1号店となる「ロピア博多ヨドバシ店(仮称)」をオープンする予定で、すでに求人募集を開始している。
以前からショッピングモールや百貨店内にスーパーと家電量販店が揃って出店する事例は多数あり、同一敷地内に別の建物を建築して駐車場を共用するケースも珍しくない。たまたま通りがかった、ケーズデンキとオーケーの組み合わせの店舗は互いの店舗(棟)の行き来がシームレスで、むしろ立体駐車場併設のショッピングモールよりも使い勝手が良さそうだと感じた。
しかし、今回オープンしたTecc LIFE SELECT 尼崎店の外観写真とチラシの内容、SNSで見かける訪問客の声をまとめると、小売業界再編の幕開けのように感じた。決済・ポイントと集客の結びつきはますます強くなり、「Tecc LIFE SELECT」店内フードコートのように、家電など高額商品の購入でためたポイントを安価な飲食で使ってもらおうとする試みも目立つ。さらに、4月28日開業のイオンモールの地域創生型商業施設(アウトレットモール)「ジ アウトレット湘南平塚」には、「地元企業」として家電量販店のノジマ、「地域創生」として精肉・鮮魚・青果・惣菜を一度に買い回りできる「ひらつかマルシェ生鮮市場」がオープンする。もはやアウトレットモールと通常のショッピングモールの違いも曖昧になり、全部まとめて「にぎわい創出施設」ということになりそうだ。
ここで触れた家電量販店とスーパーだけでなく、同様の取り組みを進めているスーパーの出店戦略に注目だ。(BCN・嵯峨野 芙美)
暮らしまるごと提案 最新型のDX店舗
Tecc LIFE SELECT 尼崎店は、“たのしい。くらしをシアワセにする、ぜんぶ。”をストアコンセプトとした暮らしまるごとを提案する体験型店舗。「LIFE SELECT」業態店舗では、従来の家電を中心に、家具・インテリア、リフォーム、日用品など、暮らしに関わるあらゆる商品とサービスを取り揃える。家電や家具などを実際に試せるブースを充実させたほか、セミセルフレジ対応端末付きショッピングカート「スマートカート」、デジタル広告を配信するデジタルサイネージ、電子プライス、オンラインショップ「ヤマダウェブコム」で購入した商品を24時間受け取り可能な宅配ロッカーを導入。他社に先駆けて強化しているオンライン(EC)とオフライン(店頭)を連携した商品受け取りサービスでは、一部の飲食テイクアウトオーダーやネットスーパーも導入している、ECで購入した商品を店舗の駐車場でそのまま受け取れる「カーサイドピックアップ」にも対応する。
イオン? ヤマダ?
尼崎店の建物は、もともとは日本市場から撤退した「カルフール尼崎」だった。今年3月17日のリニューアル以降、1階がヤマダデンキとイオンバイク、2階がイオンスタイル尼崎(3月17日に名称変更、旧イオン尼崎)、モーリーファンタジー(ゲームセンター)となり、外観や看板の配置を見る限り、ヤマダデンキが主のように思える。一方、イオンのスマートフォン決済サービス(コード決済)「AEON Pay」を使いヤマダデンキで買い物するとWAON PONTが基本の10倍になるオープン記念3日間限定キャンペーンが示すように、おなじみのイオンの商業施設のようにも思える。ヤマダHDの各店舗は、2022年9月26日からAEON Payに対応。家電量販店におけるAEON Payの導入はヤマダデンキが初だった。ちなみにイオングループ以外での初の導入企業は、ボウリング・アミューズメント・カラオケなどを中心とした屋内型複合レジャー施設を展開するラウンドワン。
AEON Payは、会員登録だけで誰でも使えるキャッシュレス決済サービスではなく、イオンのトータルアプリ「iAEON(アイイオン)」にイオンマークのついたクレジットカード・デビットカードを登録した場合のみ利用できるカード会員向けアプリ決済。正確には「イオンカードペイ」といえるサービス内容のため、これまではあまり話題にならなかったが、Tecc LIFE SELECT 尼崎店の開業によって、家電や家具をお得に買えるキャッシュレス決済サービスとして注目度は急上昇だ。
「スーパー総選挙2022」で見る関東の人気スーパーは……
ここからは、家電量販店とコラボレーションした2業態一体型店舗(ロヂャース毛呂山店+デンキチ 毛呂山店)も登場したスーパーについて考えてみたい。22年10月にTBSラジオの番組「ジェーン・スー 生活は踊る」が開催した「スーパー総選挙2022」によると、投票結果は1位オーケー、2位ヤオコー、3位ライフ、4位ロピア、5位ベイシア、6位サミットストア、7位オオゼキ、8位ベルク、9位ツルヤ、10位文化堂だった。TBSラジオの放送波での聴取可能エリアは関東なので、ツルヤ以外はいずれも南関東(東京・神奈川・埼玉・千葉)に出店するスーパーだ。記者はふだんラジオ放送を聴かないので、上位にランクインしたスーパーの店内放送で初めてTBSラジオ「スーパー総選挙」の存在を知った。来店者に向けて大々的に投票を呼びかけており、上位に入るのも納得だと苦笑せざるを得ない投票結果だが、イオンスタイルやまいばすけっと、イトーヨーカドー系のスーパーがランク外だった背景には、「投票を呼びかけなかった」「投票がブランド名ごとに分散した」以外の理由もあるのではないかと推測する。
TBSラジオ「スーパー総選挙2022」で2位のヤオコーは今年2月、ヨドバシカメラも出店する商業施設「トナリエ宇都宮」に出店した。同施設としては久々のスーパー復活という。4位のロピアは21年11月に「京都ヨドバシ」、22年12月に甲府駅前「ヨドバシ甲府ビル」に出店、さらに23年6月上旬に九州1号店となる「ロピア博多ヨドバシ店(仮称)」をオープンする予定で、すでに求人募集を開始している。
以前からショッピングモールや百貨店内にスーパーと家電量販店が揃って出店する事例は多数あり、同一敷地内に別の建物を建築して駐車場を共用するケースも珍しくない。たまたま通りがかった、ケーズデンキとオーケーの組み合わせの店舗は互いの店舗(棟)の行き来がシームレスで、むしろ立体駐車場併設のショッピングモールよりも使い勝手が良さそうだと感じた。
しかし、今回オープンしたTecc LIFE SELECT 尼崎店の外観写真とチラシの内容、SNSで見かける訪問客の声をまとめると、小売業界再編の幕開けのように感じた。決済・ポイントと集客の結びつきはますます強くなり、「Tecc LIFE SELECT」店内フードコートのように、家電など高額商品の購入でためたポイントを安価な飲食で使ってもらおうとする試みも目立つ。さらに、4月28日開業のイオンモールの地域創生型商業施設(アウトレットモール)「ジ アウトレット湘南平塚」には、「地元企業」として家電量販店のノジマ、「地域創生」として精肉・鮮魚・青果・惣菜を一度に買い回りできる「ひらつかマルシェ生鮮市場」がオープンする。もはやアウトレットモールと通常のショッピングモールの違いも曖昧になり、全部まとめて「にぎわい創出施設」ということになりそうだ。
ここで触れた家電量販店とスーパーだけでなく、同様の取り組みを進めているスーパーの出店戦略に注目だ。(BCN・嵯峨野 芙美)