2022年4月以降の値上げの影響がデジタル家電でも出始めたのか――。全国の主要家電量販店・ネットショップからデジタル家電などの実売データを収集・集計している「BCNランキング」でデジタル家電市場の四半期ごとの推移を追ったところ、新型コロナ前と比較して販売金額は微増であるのに対し、販売数量は徐々に減ってきていることが明らかになった。特にリアル店舗の販売数量の落ち込みが激しく、4月以降のリアル店舗の回復がカギを握る。
デジタル家電市場全体を俯瞰すると、22年4Q(10~12月)は販売数量が96.2となりコロナ前より下回っているのに対し、販売金額は106.9でコロナ前を上回っている。平均値のトレンドを見ても、販売数量が下がってるのに対し、販売金額は上がっている。つまり、市場全体でならしてみると平均単価は上がっており、値上げの影響が出始めているととらえることもできる。
家電業界で年間需要のピークとなる4Qで比較するとさらに顕著だ。20年4Qにおける販売数量の109.5という伸びは、コロナ禍によるテレワーク需要でノートPCや液晶ディスプレイ、周辺機器などが売れたためである。この20年4Qのピークを境に22年4Qと比較すると、数量は同109.5→同96.2(13.3ポイントのマイナス)と急落しているのに対し、金額は同116.0→同106.9(9.1ポイントのマイナス)となだらかなのがわかる。
原材料価格や物流コスト、海外での人件費の上昇、円安などの影響で、パナソニックが製品価格の値上げを実施したのは22年1月。当初は照明器具や配管などに限られたが、8月からは白物家電やデジタル家電など主力商品全般で約3~23%増となる値上げを実施した。
ソニーでも22年4月からオーディオやBDレコーダー、デジタル一眼カメラ、ヘッドホンなどで約3~31%増の値上げを実施。その後も9月に約8%増、23年2月に約14%増と各カテゴリーで段階的に値上げを実施した。各社で値上げが相次いだ。
BCNランキングでも販売金額より販売数量の落ち込みの方が激しいことから、22年2Q(4~6月)以降から値上げによる買い控えの影響が起き始めていると言えそうだ。実際、アイテムによっては値上げしたメーカーの販売数量が急減している事例も出てきている。
図2と図3の見方は、例えば19年1Qの数量100の内訳は、リアルが71.5(図2)、ネットが28.5(図3)とみる。同じように22年4Qの数量96.2の内訳は、リアルが59.1(図2)、ネットが37.1(図3)とみる。赤色の金額も同じ見方をする。
リアル店舗のグラフを見ると、数量の落ち込みの方が金額よりも急だ。20年4Qと22年4Qの比較で数量は72.2→59.1(13.1ポイントのマイナス)と急減しているのに対し、金額は78.0→68.8(9.2ポイントのマイナス)となっている。
一方でコロナ禍で一貫して好調だったのはネットの動き。数量と金額とともに右肩上がりだ。20年4Qと22年4Qの比較は微妙な差ではあるが、数量が37.3→37.1(0.2ポイントのマイナス)に対し、金額は38.0→38.1(0.1ポイントのプラス)となっている。コロナ禍で消費者の購買行動がネットに大きくシフトしたことを物語っている。
なお、リアルとネットの各四半期ごとの構成比の推移については、次の過去記事を参照してほしい。そこではデジタル家電市場におけるネット比率が、初めて4割を突破したことに触れた。
《過去記事》
コロナ禍で「ネット売上比率」が初の4割突破! 「マスク解除」でリアル店舗に客足戻るか
https://www.bcnretail.com/market/detail/20230215_316268.html
果たして値上げの影響は今後もさらに厳しくなるのだろうか。新型コロナの緩和策として、マスク解除や出入国制限の緩和、季節性インフルエンザ並みの5類への引き下げなどを政府が打ち出す中、リアル店舗がどれだけ回復するかに注目したい。
家電業界にとって理想のシナリオは、リアルとネットの両輪で数量も金額も右肩上がりを描くことだろう。逆に警戒しなければならないのは、メーカー各社の値上げによる消費者の買い控えで販売数量がさらに減り、販売金額も縮小し、好調なネットの動きまで鈍るという負のスパイラルである。新型コロナの緩和ムードが漂うこの春以降、リアル店舗の回復力に期待したい。(BCN・細田 立圭志)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。
テレワーク需要で沸いた2020年10~12月からダウントレンド
図1は、主要家電量販店やネットショップから、デジタル家電やソフトウエアなど31カテゴリ、146アイテムの販売数量と販売金額を集計した「BCNランキング」による四半期ごとの指数推移。新型コロナ前の2019年1Q(1~3月)を100とし、22年4Q(10~12月)までの推移を追った。デジタル家電市場全体を俯瞰すると、22年4Q(10~12月)は販売数量が96.2となりコロナ前より下回っているのに対し、販売金額は106.9でコロナ前を上回っている。平均値のトレンドを見ても、販売数量が下がってるのに対し、販売金額は上がっている。つまり、市場全体でならしてみると平均単価は上がっており、値上げの影響が出始めているととらえることもできる。
家電業界で年間需要のピークとなる4Qで比較するとさらに顕著だ。20年4Qにおける販売数量の109.5という伸びは、コロナ禍によるテレワーク需要でノートPCや液晶ディスプレイ、周辺機器などが売れたためである。この20年4Qのピークを境に22年4Qと比較すると、数量は同109.5→同96.2(13.3ポイントのマイナス)と急落しているのに対し、金額は同116.0→同106.9(9.1ポイントのマイナス)となだらかなのがわかる。
原材料価格や物流コスト、海外での人件費の上昇、円安などの影響で、パナソニックが製品価格の値上げを実施したのは22年1月。当初は照明器具や配管などに限られたが、8月からは白物家電やデジタル家電など主力商品全般で約3~23%増となる値上げを実施した。
ソニーでも22年4月からオーディオやBDレコーダー、デジタル一眼カメラ、ヘッドホンなどで約3~31%増の値上げを実施。その後も9月に約8%増、23年2月に約14%増と各カテゴリーで段階的に値上げを実施した。各社で値上げが相次いだ。
BCNランキングでも販売金額より販売数量の落ち込みの方が激しいことから、22年2Q(4~6月)以降から値上げによる買い控えの影響が起き始めていると言えそうだ。実際、アイテムによっては値上げしたメーカーの販売数量が急減している事例も出てきている。
市場全体のリアルとネットの内訳をみると…
もう少しデータの解像度を上げてみよう。先ほど見た新型コロナ前の19年1Q(1~3月)を100とした市場全体の指数推移(図1)を、リアル店舗(図2)とネット(図3)に分けて、それぞれの数量・金額推移をみるとどうなるか。図2と図3の見方は、例えば19年1Qの数量100の内訳は、リアルが71.5(図2)、ネットが28.5(図3)とみる。同じように22年4Qの数量96.2の内訳は、リアルが59.1(図2)、ネットが37.1(図3)とみる。赤色の金額も同じ見方をする。
リアル店舗のグラフを見ると、数量の落ち込みの方が金額よりも急だ。20年4Qと22年4Qの比較で数量は72.2→59.1(13.1ポイントのマイナス)と急減しているのに対し、金額は78.0→68.8(9.2ポイントのマイナス)となっている。
一方でコロナ禍で一貫して好調だったのはネットの動き。数量と金額とともに右肩上がりだ。20年4Qと22年4Qの比較は微妙な差ではあるが、数量が37.3→37.1(0.2ポイントのマイナス)に対し、金額は38.0→38.1(0.1ポイントのプラス)となっている。コロナ禍で消費者の購買行動がネットに大きくシフトしたことを物語っている。
なお、リアルとネットの各四半期ごとの構成比の推移については、次の過去記事を参照してほしい。そこではデジタル家電市場におけるネット比率が、初めて4割を突破したことに触れた。
《過去記事》
コロナ禍で「ネット売上比率」が初の4割突破! 「マスク解除」でリアル店舗に客足戻るか
https://www.bcnretail.com/market/detail/20230215_316268.html
果たして値上げの影響は今後もさらに厳しくなるのだろうか。新型コロナの緩和策として、マスク解除や出入国制限の緩和、季節性インフルエンザ並みの5類への引き下げなどを政府が打ち出す中、リアル店舗がどれだけ回復するかに注目したい。
家電業界にとって理想のシナリオは、リアルとネットの両輪で数量も金額も右肩上がりを描くことだろう。逆に警戒しなければならないのは、メーカー各社の値上げによる消費者の買い控えで販売数量がさらに減り、販売金額も縮小し、好調なネットの動きまで鈍るという負のスパイラルである。新型コロナの緩和ムードが漂うこの春以降、リアル店舗の回復力に期待したい。(BCN・細田 立圭志)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。