iPodが21年にわたる長い歴史に幕を下ろしたこの5月、盛大な駆け込み需要が発生した。20%前後で推移していたアップルのシェアは、突如60.5%まで急上昇。長年のライバルであるソニーに、ほぼダブルスコアの差をつけ、有終の美を飾った。ビッグプレーヤー、アップル亡き後の携帯オーディオは、果たしてオワコンになってしまうのだろうか。
iPodは2019年を最後に新製品が登場しなくなり、いつかは終わりが来るだろうと予測されていた。スマートフォン(スマホ)があれば、完全に携帯オーディオの機能をカバーできることに加え、ストリーミング配信で音楽を聴くスタイルも広がってきた。音楽もスマホという流れが確定的になり、iPodの存在意義が失われてしまった。撤退したのはアップルだけではない。この3年で29社が市場から去った。販売台数の縮小は続いている。2019年の10月の販売台数を1とした指数では、この9月は0.4。市場は依然として、前年割れ、右肩下がりの状態だ。
一方、踏ん張っているのはソニー。カセットテープ全盛の時代、1979年に発売したウォークマン初号機から連綿と続く製品群は健在だ。音楽の格納媒体がフラッシュメモリに変化してもブランドは生きている。9月現在、携帯オーディオの販売台数で86.9%と、ほぼ9割のシェアを占める。アップル撤退で、シェアはさらに拡大した。製品別の販売台数シェアでは、上位19位までのうち15製品がソニー、残り4製品がグリーンハウスという強烈な寡占状態だ。
平均単価(税抜き、以下同)は2万2000円。売れ筋は、ほとんどが2万円前後の製品だ。ところが、15位に登場するソニーの「NW-WM1AM2」は平均単価が14万7000円。結構な高額製品がTOP20に入っている。18位の「NW-ZX507」は6万7000円で、これもそこそこ高い。20位には、FiiO Electronics Technologyの「M11S」が来るが、これも8万1000円。極めつけはソニー「NW-WM1ZM2」。21位とTOP20からは一つ外れるが、なんと34万8000円と、とびぬけて高価だ。高価な製品は他にもある。ドリームアス・カンパニーの「IRV-AK-SP2000T」(36万8000円)や、HiBy Music Information Technologyの「R8AL」(19万3000円)などだ。
価格帯別の販売台数構成比を見ると、大半は3万円未満。しかし、4万円以上のレンジは常に一定の構成比を維持しつつ、10万円を超える製品が徐々に増えている。昨年9月の時点では、10万円以上の製品は0.4%しかなかったが、この8月には3.1%と拡大。9月時点でも1.8%と一定の存在感を示すようになってきた。一方で3万円未満の製品が94.3%を占めており、手ごろな製品と超高級品の二極化が進展している。
これまでiPodが担ってきた「手軽に音楽を楽しみたい」というニーズは、一方ではスマホに吸収され、他方では、より低価格な専用機に流れている。しかし、スマホではかなえられないハイレベルなオーディオ分野にも、まだまだニーズがある。iPodが去った携帯オーディオは今後、さらに進む二極化の中で、ピュアオーディオ分野もじりじりと拡大させながらオワコン化を回避しつつ、生き残っていくことになるだろう。(BCN・道越一郎)
iPodは2019年を最後に新製品が登場しなくなり、いつかは終わりが来るだろうと予測されていた。スマートフォン(スマホ)があれば、完全に携帯オーディオの機能をカバーできることに加え、ストリーミング配信で音楽を聴くスタイルも広がってきた。音楽もスマホという流れが確定的になり、iPodの存在意義が失われてしまった。撤退したのはアップルだけではない。この3年で29社が市場から去った。販売台数の縮小は続いている。2019年の10月の販売台数を1とした指数では、この9月は0.4。市場は依然として、前年割れ、右肩下がりの状態だ。
一方、踏ん張っているのはソニー。カセットテープ全盛の時代、1979年に発売したウォークマン初号機から連綿と続く製品群は健在だ。音楽の格納媒体がフラッシュメモリに変化してもブランドは生きている。9月現在、携帯オーディオの販売台数で86.9%と、ほぼ9割のシェアを占める。アップル撤退で、シェアはさらに拡大した。製品別の販売台数シェアでは、上位19位までのうち15製品がソニー、残り4製品がグリーンハウスという強烈な寡占状態だ。
平均単価(税抜き、以下同)は2万2000円。売れ筋は、ほとんどが2万円前後の製品だ。ところが、15位に登場するソニーの「NW-WM1AM2」は平均単価が14万7000円。結構な高額製品がTOP20に入っている。18位の「NW-ZX507」は6万7000円で、これもそこそこ高い。20位には、FiiO Electronics Technologyの「M11S」が来るが、これも8万1000円。極めつけはソニー「NW-WM1ZM2」。21位とTOP20からは一つ外れるが、なんと34万8000円と、とびぬけて高価だ。高価な製品は他にもある。ドリームアス・カンパニーの「IRV-AK-SP2000T」(36万8000円)や、HiBy Music Information Technologyの「R8AL」(19万3000円)などだ。
価格帯別の販売台数構成比を見ると、大半は3万円未満。しかし、4万円以上のレンジは常に一定の構成比を維持しつつ、10万円を超える製品が徐々に増えている。昨年9月の時点では、10万円以上の製品は0.4%しかなかったが、この8月には3.1%と拡大。9月時点でも1.8%と一定の存在感を示すようになってきた。一方で3万円未満の製品が94.3%を占めており、手ごろな製品と超高級品の二極化が進展している。
これまでiPodが担ってきた「手軽に音楽を楽しみたい」というニーズは、一方ではスマホに吸収され、他方では、より低価格な専用機に流れている。しかし、スマホではかなえられないハイレベルなオーディオ分野にも、まだまだニーズがある。iPodが去った携帯オーディオは今後、さらに進む二極化の中で、ピュアオーディオ分野もじりじりと拡大させながらオワコン化を回避しつつ、生き残っていくことになるだろう。(BCN・道越一郎)